藤原伊織、講談社。

あ、後味悪ッ!
「冒険」という単語には「少年少女、常に大団円、活劇あるいはハリウッド」というイメージがある当方には衝撃の結末。主人公の頭に蚊トンボが飛び込んできた、というコミカルな導入部に対してわくわくしていた読者の期待を素晴らしく裏切ってくれたな藤原ー!(名字だけだと誰だかわからない辺り、外国の有名人みたい)。
主人公は世を拗ねてるのだか老成してるのだか単に偏屈なのかわからないけれど、最近では珍しいとても真っ当な青年。職業は配管工。水道周りの職人さん、の見習い。その彼の頭に突撃かました蚊トンボとの出会いから始まる奇妙奇天烈な物語。
頭の中に住みついた蚊トンボが、何故か言葉を操り筋肉を操る非日常。しかも蚊トンボ記憶力も目もいい、性格は極楽トンボ。隣の部屋の住人がヤクザに絡まれているのを助けたらあとはジェットコースターで二人の冒険が始まるのでした。
――という導入部に対してあのラストはなんだ?!コミカルな主人公達に対してやけにサイコな敵役や、隣人のデイトレーダーが繰り広げるインテリな演説と何かちぐはぐ。もっと方向性を絞り込んでくれ。そして理解できない薀蓄も削ってくれ。ああいう方向性で出発した作品内で女性に対する暴力はいかん。親方が感動的に独立の話をしてくれたじゃん!こういう場合は途中の伏線通り蚊トンボがお亡くなりになって、少年は辛い別れを乗り越えて一回り大きくなるんだよ!二人とも××××ておいて何が「冒険」か!
「冒険」と言う言葉から「予定調和でもいいから悪は滅びて正義は勝つハッピーエンドで明るい未来」という連想をする方にはまったくお勧めできない。お約束破りが大好きな方には全力でお勧め。ストーリの一貫した流れよりも、内容の勢いや細部の充実を重視する人もどうぞ。物語が妙にアンバランスで綱渡りなのは故意犯なのかしら。こういうアンバランス、綱渡り、ちぐはぐ、奇妙な感触を好む人にはたまらないかもしれない。
それにしても「巻き込まれ型主人公」って見てて歯がゆいですね。特に女性陣が押せ押せだった場合とか。

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