西澤保彦、文芸春秋。
吹奏楽部に所属する「僕」が中学時代に遭遇する楽器紛失事件。その4年後に、高校に進学した「僕」が所属する吹奏楽部で遭遇する二度目の楽器紛失事件。それは紛失ではなく盗難であることが明白だったのだが、犯人も動機もわからぬまま20年という時間が過ぎる。

主人公である「僕」が常に、自分は人生の舞台で人もうらやむ主役である、そうでなければそれは周囲のせいで自分の責ではないと欺瞞と逃避を重ね続ける姿をえんえんと描くので、盗難事件や冒頭での謎の死体よりも、「こいつは一体いつになったら現実に直面して痛い目を見るんだろうそして反省するんだろう」ということのほうが気になって仕方ない……。しかも「あの頃は」と言いながら、自覚すれども反省はせずを地で行っているので、痛々しい青春の勘違いと傲慢さにかけては青春小説と題されたものと比較しても全く遜色ない。

かたわらいたし。

そうして自覚と共に欺瞞を重ねすり替え逃避を続ける主人公は、ふとしたことから「あの頃」のみんなが逃げずに努力したなりの結果を得た姿を目の当たりにすることになり。

反省しろよこの野郎。

ミステリとしては普通の部類に入るような気がするけども、同時進行そして必須用件として描かれる主人公の逃避っぷりが、この本をただのミステリで終わらせない。西澤保彦を強力に推していたサイトさんの影響でもって手をつけたのだけれど、これは納得。いやあ、なんというか青春の醍醐味って振り返ってみればゴミだよね、とかゴミになりうるというか、寧ろ人がゴミのようだったよね、とか、

身につまされすぎ。

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