最近気になること。
・精読
・集中力
・文章力
・日記の体裁
三月は年度末で、公共施設は普段と違うスケジュールであることをうっかり失念していた。失意前屈体。
あと、特定単語に限って検索を避ける方法なんてないんだろうなー、と「ゲーム 攻略」という文字を見るたびに申し訳ない気分になる。ないです。攻略ないです。プレイ日記とかもありません。

『鳥少年』皆川博子、徳間書店。
短編13本を収録。ミステリから幻想小説よりの作品群。
最初に解説を読んで、件の編集者に裁きの鉄槌を望んだひとの数→1。作者にも読者にも不幸な事実がそこにはあったのです。もし、一冊読んであわなかったら次は読まない、という読者があの本を最初に手に取っていたら。予算に余裕がなく、次回がない読者が最初に手に取っていたら。かくも貴重な書き手との出逢いがすれ違いに終わっていたのかと思うと、例の編集者の愚昧さは見識を疑うどころか殴っても足りないほどです。実力ある書き手に、どうでもいいものを書くように強要する編集者がこの世に存在するなんて、なんとも悲しい事情だったのですが、そこら辺はさておいて。
「密室遊戯」が特に面白かった。暗く湿った最低の下宿で寝起きする主人公は、昼間はデパート、夜はスナックで働いている。隣の部屋には似たような暮らしをする若い女が暮らしている。ある日、隣室との境目の板から光が漏れ出ていることに気付いたわたしは、こっそりと隣の女の部屋をのぞき見る。
相手が知らないうちに、こっそりと私生活をのぞきみるというのは基本路線なのだけれども、こっそりと行為を共有する、伝染させるというのは面白い試み。のぞいていたものが実はのぞかれていたというラストにしびれる。
不満があるとすれば、一人称の語りによるミステリ仕立ての話が、ほとんど同じ形式であること。同じ形式だけならまだしも、同じような欠点まで共通しているのはどうかと思う。8割が長編の幕開けを思わせる前振りについやされ、物語が展開する辺りで1割、落ちが残り1割という、急転直下どころか、おざなりにしりすぼみになる配分はなんなんだろう。途中でやる気を失って書きっぱなしで投げたようにも見える。「サイレント・ナイト」はあの短さで見事に惨劇を予感させて終わっている。……のだけれども、なにがどうなのか理論的に説明せよといわれるとさっぱりわからない。少女は何をしていたんだ?

『まひるの月を追いかけて』恩田陸、文芸春秋。
さくさく読めました。恩田陸にしては落ちがきちんとまとまってるな、という印象。女性が二人以上登場して、会話をしながら進めていくタイプの物語は安定して面白い。本来緊迫するべき状況でなぜかまったりしてしまう登場人物たち、を書くのが上手いんだな、と今更のように気付いた。驚く割にはその後で状況に動じないひとたちが多い。
最初は失踪した異母兄を、その恋人ともに探しに行く、はずだった。ところが序盤も序盤で「実は騙ってました」などと同行者が言い出し、その後も状況は二転三転、最終的には「奈良観光」だけが当初の予定通り、それ以外はすべて変更。まさしく一寸先は闇の展開、にも関わらず登場人物たちは観光を楽しんで酒飲んで焼肉食べて煙草吸って、と和みまくり。おかしい。全体の印象は地味、淡々、安定、薄暮れ。これだけ気が抜けない状況でまったりムードただよいまくり。
「まひるの月」はそこにあるもに見えないもの、よくよく意識を払わなければ気付かないもの、思考の外に外れているもの、この物語上では異母兄が愛した女性のことだろうと思われる。とすると、奈良までの旅は、そのまま「まひるの月を追いかけて」行ったことになる。
物語には終わりがあるけれど、人生には明確な終わりはなく、いつも物語が始まって続いていく。ラストが新しい物語の幕開けであるということ。

恩田陸の書く三十代女性はやけに若々しい。一人称が「あたし」だからだろうか。そういえば『スカイ・クロラ』で、森博嗣の描く女性が自然な喋り方をしていたのにだいぶ驚いた。

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