『ブラッドジャケット』
2005年4月5日 未分類古橋秀之、メディアワークス電撃文庫。
<ケイオス・ヘキサ>を舞台にする物語三部作、『ブラックロッド』『ブラッドジャケット』『ブライトライツ・ホーリーランド』。その二冊目。受賞後第一作。前作では語られなかった吸血鬼ロング・ファングと吸血鬼殲滅部隊”ブラッドジャケット”のエピソード。
のはず、多分。
今回の見どころは、大論理器械ライマン脳とヘルシング、アーヴィング&ミラ、ヴァージニア3と4、かなしい<ロング・ファング>の性癖、元殺人鬼の直結最強神父。あと、前作の「仏っ締めろ」に続く「バチ食らいやがれ」。電波教徒の皆さんも捨て難い。
粗筋の紹介がほとんど不可能に近いので、素敵エピソードの断片を繋ぎ繋いでご紹介。
最愛の娘を<ロング・ファング>に噛まれた吸血鬼学者ヘルシングは、ハックルボーン神父と呪装戦術隊とを率いて吸血鬼を追っていた。一方熾烈な追撃を凌ぐ<ロング・ファング>に価値ありと判断した降魔局が、V4を使って<ロング・ファング>に意味ありげなちょっかいをかける。その頃主人公のアーヴィーは『ウェスト屍体蘇生センター』で事故死体の一次蘇生保全処置をして働き、寝たきりの母親を養っている。
ある日、仕事中に処理死体の衣服からEマグが拾い出される、ふとした拍子にその引き金を引くアーヴィー。
ヘルシングが<ロング・ファング>を見失った後、吸血鬼化の進行を食い止めるために仮死停滞状態にあったミラ・ヘルシングが何故か目を覚ます。
ここからが怒涛。
殺人鬼の愛の逃避行は直球ど真ん中、魂のからっぽなさびしい吸血鬼は計測不能な剛速球。執念に燃える老吸血鬼学者は娘にすら銃口を向け、殺人鬼の銃弾を浴びた神父は高次元の存在と直結、「奇蹟」を起こす。血飛沫と肉片と銃弾と神の愛が景気良くぶちまけられる、問答無用の殺戮劇が開幕。何もかもがヤバイ。ヤバさの量も濃度も前作を上回って、疾走感は変わらず速度は維持。閉幕も全く巧妙に、「フック兄弟」の結末は泣かす。
ところが不満な点も前作と似たり寄ったり。アーヴィーの現実味のない視点が物語に占める比率がやや高めなため、茫洋とした印象が少しばかり過剰で、前半は散漫な印象が拭えない。アーヴィーの現実味の乏しい地に足がついていないキャラクターの造形はそれはそれで美味しいのだけれども、ミラに会うまでどうもぱっとせず、ぱっとしないという効果を狙っているのはわかるんだけれども長すぎて逆に退屈。薄味もよいけれど味のない料理ばかり大量に出ても飽きるわよ、と。ヘルシング教授(博士?)も、周囲の面子が濃すぎるせいか、ひとり正統派を貫いた結果、地味〜なことになってます。関係ないですがV3というとライダーキック。
V4と<ロング・ファング>の最初の遭遇シーン、
「外観とはうらはらに、不安定に揺れている。
揺れる魂を感じると、彼は切なくなる。
おのが魂の空虚を感じ、切ないほどに、腹がへる。」
にしびれた。この吸血鬼、いとしいほどに相手を喰らいたくなり、そうして喰らった結果としてさびしくなって「神様は嫌いだ」とか言い出すので、読んでいて脳内の怪しい液体が沸騰するかと思いました。あー、もう!なんだおまえなんだおまえ、「羊の群れの中に住む、さびしがりやのオオカミ」なんてばっちり見抜かれてる場合じゃないよかわいいなー!!このようにわたし大興奮。
ミラとアーヴィーが二人でいる間は一言一句全てに満足。ミラかわいいよミラ。伊達にヘルシングじゃないところも、シリアルキラーっぽい性格もみんな大好きだ。君と東に行きたい。
あとがきのラスト一行を「俺が。」なんてわざわざ改行してしめちゃってる古橋秀之もかわいい。
で、感想書こうと思って読み返したら、直結野郎の凄まじさに腹筋よじれるほど笑いました。緊迫緊張、切迫した現状がひしひしと伝わってくるのに、同時に「これ笑うところだろ絶対に」という確信というか爆笑も一緒にこみ上げてくるから不思議です。なんだろう、この本。
今回一番心臓直撃したのがライマン脳の台詞。「言え、ヘンリー・マクファーソン。ただひと言、「イエス」と」。痺れるというより最早総毛立つ感触を味わいました。あひゃー。
<ケイオス・ヘキサ>を舞台にする物語三部作、『ブラックロッド』『ブラッドジャケット』『ブライトライツ・ホーリーランド』。その二冊目。受賞後第一作。前作では語られなかった吸血鬼ロング・ファングと吸血鬼殲滅部隊”ブラッドジャケット”のエピソード。
のはず、多分。
今回の見どころは、大論理器械ライマン脳とヘルシング、アーヴィング&ミラ、ヴァージニア3と4、かなしい<ロング・ファング>の性癖、元殺人鬼の直結最強神父。あと、前作の「仏っ締めろ」に続く「バチ食らいやがれ」。電波教徒の皆さんも捨て難い。
粗筋の紹介がほとんど不可能に近いので、素敵エピソードの断片を繋ぎ繋いでご紹介。
最愛の娘を<ロング・ファング>に噛まれた吸血鬼学者ヘルシングは、ハックルボーン神父と呪装戦術隊とを率いて吸血鬼を追っていた。一方熾烈な追撃を凌ぐ<ロング・ファング>に価値ありと判断した降魔局が、V4を使って<ロング・ファング>に意味ありげなちょっかいをかける。その頃主人公のアーヴィーは『ウェスト屍体蘇生センター』で事故死体の一次蘇生保全処置をして働き、寝たきりの母親を養っている。
ある日、仕事中に処理死体の衣服からEマグが拾い出される、ふとした拍子にその引き金を引くアーヴィー。
ヘルシングが<ロング・ファング>を見失った後、吸血鬼化の進行を食い止めるために仮死停滞状態にあったミラ・ヘルシングが何故か目を覚ます。
ここからが怒涛。
殺人鬼の愛の逃避行は直球ど真ん中、魂のからっぽなさびしい吸血鬼は計測不能な剛速球。執念に燃える老吸血鬼学者は娘にすら銃口を向け、殺人鬼の銃弾を浴びた神父は高次元の存在と直結、「奇蹟」を起こす。血飛沫と肉片と銃弾と神の愛が景気良くぶちまけられる、問答無用の殺戮劇が開幕。何もかもがヤバイ。ヤバさの量も濃度も前作を上回って、疾走感は変わらず速度は維持。閉幕も全く巧妙に、「フック兄弟」の結末は泣かす。
ところが不満な点も前作と似たり寄ったり。アーヴィーの現実味のない視点が物語に占める比率がやや高めなため、茫洋とした印象が少しばかり過剰で、前半は散漫な印象が拭えない。アーヴィーの現実味の乏しい地に足がついていないキャラクターの造形はそれはそれで美味しいのだけれども、ミラに会うまでどうもぱっとせず、ぱっとしないという効果を狙っているのはわかるんだけれども長すぎて逆に退屈。薄味もよいけれど味のない料理ばかり大量に出ても飽きるわよ、と。ヘルシング教授(博士?)も、周囲の面子が濃すぎるせいか、ひとり正統派を貫いた結果、地味〜なことになってます。関係ないですがV3というとライダーキック。
V4と<ロング・ファング>の最初の遭遇シーン、
「外観とはうらはらに、不安定に揺れている。
揺れる魂を感じると、彼は切なくなる。
おのが魂の空虚を感じ、切ないほどに、腹がへる。」
にしびれた。この吸血鬼、いとしいほどに相手を喰らいたくなり、そうして喰らった結果としてさびしくなって「神様は嫌いだ」とか言い出すので、読んでいて脳内の怪しい液体が沸騰するかと思いました。あー、もう!なんだおまえなんだおまえ、「羊の群れの中に住む、さびしがりやのオオカミ」なんてばっちり見抜かれてる場合じゃないよかわいいなー!!このようにわたし大興奮。
ミラとアーヴィーが二人でいる間は一言一句全てに満足。ミラかわいいよミラ。伊達にヘルシングじゃないところも、シリアルキラーっぽい性格もみんな大好きだ。君と東に行きたい。
あとがきのラスト一行を「俺が。」なんてわざわざ改行してしめちゃってる古橋秀之もかわいい。
で、感想書こうと思って読み返したら、直結野郎の凄まじさに腹筋よじれるほど笑いました。緊迫緊張、切迫した現状がひしひしと伝わってくるのに、同時に「これ笑うところだろ絶対に」という確信というか爆笑も一緒にこみ上げてくるから不思議です。なんだろう、この本。
今回一番心臓直撃したのがライマン脳の台詞。「言え、ヘンリー・マクファーソン。ただひと言、「イエス」と」。痺れるというより最早総毛立つ感触を味わいました。あひゃー。
コメント