『どしゃぶりのひに』『ふぶきのあした』
2005年4月12日 未分類作:木村裕一、絵:あべ弘士、講談社。
『どしゃぶりのひに』
「エサとともだちになったら飢え死にするだろ?」
「だからあいつだけでいいんです」
どちらも真理だ。1か0かの断絶以外は、境界線などただの連続でしかないという数学の話を思い出しました。漸近線とか連続体とか、そんな感じのこと。はっきりどちらかと定まっていないから、許されるか許されないかの境界に立ってしまうような状況に陥るのですね。
愛の逃避行!矢切の渡し!……よ、よろこべない。これがいわゆる恋愛小説で、人間の主人公二人が手に手を取って展開なら大喜びするんですが、部外者の口出しに始まり、野次馬の根性の汚さや、保身・欲望のために二匹を利用しようとするオオカミとヤギの群れにげんなり。そこまで徹底してリアリスティックでいいのか童話。シビアでいいのか童話。
しかしそれがいい。
「ひみつのともだち」であったことが仲間に知られてしまったメイとガブ。周囲は「お前利用されてんだよ」と二匹を責め立て、裏切り者じゃないことを証明したいなら、相手を騙して情報を聞き出して来いと迫る。
そして二匹はどしゃぶりの川岸で、もう戻らないことを覚悟する。
もう一度生きて会う約束をして、豪雨のさなかに河へ飛び込んだ。
続く。
(なんておそろしいところで「つづく」のか!)
『ふぶきのあした』
完結。
なんの本なのか途中でわからなくなりました。
ヤギとオオカミが倫理を踏み越える童話って何。
今までの土地を捨てて、新しい場所を探して山越えを決意する二匹の道中。相変わらず周囲にはひそひそと噂話をする動物達に加え、ガブは裏切り者としてオオカミの群れに追われることになりました。ヤギと四六時中一緒にいるオオカミは、ヤギに知られないようにこっそりとエサを取りにでかけます。ヤギは、そうしなければオオカミが生きていけないのを承知で、それでもこっそりと出かけていくオオカミが帰ってきたときに血の匂いをさせているの気に入らない。
根本的な問題がそこにあるのに、和解してしまった二匹は、おそらくお互い以外のなにもかもを切り捨ててしまったのではないかと思うんですよ。特にヤギ。触手が生えた人間並みに幸せになれなさそう……。
自分だけを助けようと嘘をついたガブに向かって「こんなことだろうと思った」「どうして嘘をつくんですか」「なんでも話し合えるのが友達だと思ったのに」と怒るメイのキレっぷりに心がときめく。穏やかで聡明で優しくて頑固かつ潔癖な(これってほんとにヤギについてる形容詞ですか)メイの性格が6冊目でものすごい輝きぶり。
どちらが生き残っても、どう生き残っても、二人でいられなければ同じこと。どちらかが失われても、二人が友達であったことは失われないというところまでたどりついてしまった二匹。命を懸けてもいいと思えることに出会えたら、それでもう充分に幸せだなんて欲がなさ過ぎると思います。
強欲になればハッピーエンドが待っているなら、いくらでも強欲になるべしなるべし!
過酷なラスト。
番外編があるらしいので、サイズをそろえることを考えつつ検討。
『どしゃぶりのひに』
「エサとともだちになったら飢え死にするだろ?」
「だからあいつだけでいいんです」
どちらも真理だ。1か0かの断絶以外は、境界線などただの連続でしかないという数学の話を思い出しました。漸近線とか連続体とか、そんな感じのこと。はっきりどちらかと定まっていないから、許されるか許されないかの境界に立ってしまうような状況に陥るのですね。
愛の逃避行!矢切の渡し!……よ、よろこべない。これがいわゆる恋愛小説で、人間の主人公二人が手に手を取って展開なら大喜びするんですが、部外者の口出しに始まり、野次馬の根性の汚さや、保身・欲望のために二匹を利用しようとするオオカミとヤギの群れにげんなり。そこまで徹底してリアリスティックでいいのか童話。シビアでいいのか童話。
しかしそれがいい。
「ひみつのともだち」であったことが仲間に知られてしまったメイとガブ。周囲は「お前利用されてんだよ」と二匹を責め立て、裏切り者じゃないことを証明したいなら、相手を騙して情報を聞き出して来いと迫る。
そして二匹はどしゃぶりの川岸で、もう戻らないことを覚悟する。
もう一度生きて会う約束をして、豪雨のさなかに河へ飛び込んだ。
続く。
(なんておそろしいところで「つづく」のか!)
『ふぶきのあした』
完結。
なんの本なのか途中でわからなくなりました。
ヤギとオオカミが倫理を踏み越える童話って何。
今までの土地を捨てて、新しい場所を探して山越えを決意する二匹の道中。相変わらず周囲にはひそひそと噂話をする動物達に加え、ガブは裏切り者としてオオカミの群れに追われることになりました。ヤギと四六時中一緒にいるオオカミは、ヤギに知られないようにこっそりとエサを取りにでかけます。ヤギは、そうしなければオオカミが生きていけないのを承知で、それでもこっそりと出かけていくオオカミが帰ってきたときに血の匂いをさせているの気に入らない。
根本的な問題がそこにあるのに、和解してしまった二匹は、おそらくお互い以外のなにもかもを切り捨ててしまったのではないかと思うんですよ。特にヤギ。触手が生えた人間並みに幸せになれなさそう……。
自分だけを助けようと嘘をついたガブに向かって「こんなことだろうと思った」「どうして嘘をつくんですか」「なんでも話し合えるのが友達だと思ったのに」と怒るメイのキレっぷりに心がときめく。穏やかで聡明で優しくて頑固かつ潔癖な(これってほんとにヤギについてる形容詞ですか)メイの性格が6冊目でものすごい輝きぶり。
どちらが生き残っても、どう生き残っても、二人でいられなければ同じこと。どちらかが失われても、二人が友達であったことは失われないというところまでたどりついてしまった二匹。命を懸けてもいいと思えることに出会えたら、それでもう充分に幸せだなんて欲がなさ過ぎると思います。
強欲になればハッピーエンドが待っているなら、いくらでも強欲になるべしなるべし!
過酷なラスト。
番外編があるらしいので、サイズをそろえることを考えつつ検討。
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