『発情装置』

2005年5月9日 未分類
上野千鶴子、筑摩書房。「エロスのシナリオ」。
あったので読む。そして実は二回目。ちなみにわたしの本ではありません。
98年の本なので安心して読めました。古くてわかりやすい。「成文化」ということの偉大さに改めて感じ入りました。
しかしまあなんと統一感のない本よ。上野千鶴子がフェミニズムに関連して書いたものなら、論文でもエッセイでもまとめて収録、という感じ。文章が論文調なので、うっかり論文だと信じて読んでいた章が、実は非常に主観的な主張で、単に論文調の文章し書かけないがために論文に見えていただけ、と気付いたときには苦笑いしました。迂闊な自分と書き分けの出来ない上野千鶴子に。よくよく考えてみれば、この人の専門はあくまで論文なのだよなあ。ちょっと要求しすぎたかも。
援助交際など、過去のものとなり、解体・定着したものについて論じているくだりを読むのはとてもわかりやすくて楽しい。激動真っ只中にいる人間には見えないことやわからないことを、後から見て呑気に「あれはああだったのさ」と語る無責任な楽しみ。間違っていること正しい(と思われる)ことなど、それらのことを知っている「今のわたし」の視点で読み、したり顔で同調したり反論したりする楽しさ。意地が悪い読み方ですが、読者特権というのはつまりこういうことなのではないかしらん。
それはさておき。作品世界における実験、「ジェンダーレス・ワールドの<愛>の実験」の章が今回一番楽しめました。少女漫画で少年愛が描かれる理由について、フェミニズム的な視点で解釈したくだりなんですが、長野まゆみで散々分離されたセクシュアリティとジェンダーを見て、初回より理解が進んだおかげかと。しかしひるがえせばこの「過去の死んだ主張」を理解できる時点で、わたしは現在の生きた現象に対する理解からは置いてけぼりを食らってるわけで、甘んじて受けよう超保守派の称号を。昨今巷に氾濫する商業BLには食指が動かなくってよ!(触手も動きません)。というかあの恥ずかしい表紙とタイトルを何とかしてくださ……い……。
とりあえず、「宮台君」「(ハートマーク)」はやめなさいと。あと、ヒステリックな物言いと言われるのも無理なかろう他者への評価形容詞、などなど、が見ものでした。発情装置、というある種テクニカルタームを解説無しにタイトルに使っちゃうセンスもどうなのかなあ、サブタイトルっぽい位置に「エロスのシナリオ」なんて書いてあるし。勘違いして購入した人は、なんじゃあこりゃあ!ってなること間違いないと思います。それはそれで面白い光景だろうけども。
最近名前を聞かないけど、今なにしてるのかなー。

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