『楽園 ラック・ヴィエン』
2005年5月16日 未分類岩井志麻子、角川ホラー文庫。
永遠に夏の続くベトナムを舞台にした、官能ホラー。
ホラーである必要を特に感じないんですが、それは「ホラーと名乗る資格なし」という意味ではなく、ホラーとしての落ちがなくても充分成立するだけのちからを持った物語、という意味で。あるいは、ホラーとしての落ちなどなくてもこの本は充分にホラーかもしれません。極彩色の甘美な地獄、索漠とした清潔な天国、というものが存在するなら。
凍える東京に男を残して、灼熱のベトナムに、未だ見ぬ「彼」を求めて旅立った私、は、私を待ち続けていた「彼」に出会う。
うっかり『チャイ・コイ』を同時進行で読んでしまう痛恨。おかげで頭の中で細部がごちゃ混ぜですよ。しかし先に『チャイ・コイ』読んでから出なくて良かった。途中で気付いて刊行順に立ち返ることができたのは不幸中の幸い。
やたらと対句表現が多いところや、きらきらしい硬質な語り口なんかは「若いな岩井志麻子」という感じ。ラスト付近でだらーっとなってしまうのも、今まで読んだ本と比べると、崩れてるとまでは行かないものの甘いな、という気がする。
しかし、上手い。半分くらいがこってりベッドシーンにも拘らず、読ませる読ませる。腐乱寸前の華麗さ、絢爛たる地獄を描かせれば、岩井志麻子の右に出るものはない。不幸の予感の甘美さに打ち震えるヒロイン、という造作からしてそこいらでお目にかかれる凡百の設定を凌いでます。耽美好きの心を動かす醜悪さ。日本の閉鎖的で陰湿な土地も、騒がしく混沌とした南の国も、同じほど魅力的に地獄と天国の両方を写す姿として描く筆力。
絶対、岩井志麻子は大化けするぞと思いながら買い集めていた甲斐がありました。感想書くために調べたら、ものすごい勢いで色々受賞してるんですね……。みっつくらいしか知らなかった。がくー。
「彼」のなにげない美形描写が面白いです。いや、ほんと臆面もないという感じで。
永遠に夏の続くベトナムを舞台にした、官能ホラー。
ホラーである必要を特に感じないんですが、それは「ホラーと名乗る資格なし」という意味ではなく、ホラーとしての落ちがなくても充分成立するだけのちからを持った物語、という意味で。あるいは、ホラーとしての落ちなどなくてもこの本は充分にホラーかもしれません。極彩色の甘美な地獄、索漠とした清潔な天国、というものが存在するなら。
凍える東京に男を残して、灼熱のベトナムに、未だ見ぬ「彼」を求めて旅立った私、は、私を待ち続けていた「彼」に出会う。
うっかり『チャイ・コイ』を同時進行で読んでしまう痛恨。おかげで頭の中で細部がごちゃ混ぜですよ。しかし先に『チャイ・コイ』読んでから出なくて良かった。途中で気付いて刊行順に立ち返ることができたのは不幸中の幸い。
やたらと対句表現が多いところや、きらきらしい硬質な語り口なんかは「若いな岩井志麻子」という感じ。ラスト付近でだらーっとなってしまうのも、今まで読んだ本と比べると、崩れてるとまでは行かないものの甘いな、という気がする。
しかし、上手い。半分くらいがこってりベッドシーンにも拘らず、読ませる読ませる。腐乱寸前の華麗さ、絢爛たる地獄を描かせれば、岩井志麻子の右に出るものはない。不幸の予感の甘美さに打ち震えるヒロイン、という造作からしてそこいらでお目にかかれる凡百の設定を凌いでます。耽美好きの心を動かす醜悪さ。日本の閉鎖的で陰湿な土地も、騒がしく混沌とした南の国も、同じほど魅力的に地獄と天国の両方を写す姿として描く筆力。
絶対、岩井志麻子は大化けするぞと思いながら買い集めていた甲斐がありました。感想書くために調べたら、ものすごい勢いで色々受賞してるんですね……。みっつくらいしか知らなかった。がくー。
「彼」のなにげない美形描写が面白いです。いや、ほんと臆面もないという感じで。
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