『薔薇の名前』(上)
2005年6月7日 未分類ウンベルト・エーコ著、河島英昭訳、東京創元社。
中世イタリアの修道院で起こる、連続殺人事件。それを解決するべく修道士と弟子コンビが大活躍(の予定)。
うははは、なんて面白いんでしょう。笑いが止まりません。当時世界最高峰を誇ったとまで言われる文書館を持つ、山腹の僧院。世俗から隔離された筈のそこで、立ち入りを禁じられた文書館の塔から一人の僧が転落死したことから謎の連続死がはじまる。ロジャー・ベーコンを信奉するウィリアム修道士は、院長から依頼されて事件の謎を解くべく、弟子のアドソ(のちにこの物語の語り手となる)を連れて、事件の根幹にかかわる謎が眠る文書館へと足を踏み入れるが、そこはなんと迷宮でした!(じゃじゃーん!)。手がかりは、最初の僧が持っていた本一冊、しかしその本も何者かに持ち去られ、文書館の謎の鍵を持つ人間が片っ端から死んでるっぽい展開、三人目の死体が発見されたところで下巻に続く。
ウンベルト・エーコと、ミシェル・フーコーを混同していたことが大変申し訳なくも情けなくなる次第です。「むやみに分厚い本を書いた学者」くらいの認識しかなかったことがもろバレですね!『文体練習』欲しい、といいながら『フーコーの振り子』が念頭になかったこともついでに暴露しておきます。中世イタリア、トマス・アクィナスを大学で専攻し、記号学者として世界的に有名なウンベルト・エーコが、その頭脳の精髄を見せ付けてくれます。うあー面白いー。エンターテイメントの極みでありながら、同時にアホほど知性に満ち溢れた、他の追随を許さない一冊。
記号論にからんだ帰納・演繹法による推理を「得意げに」披露する師匠。師匠を尊敬し「流石です師匠!」とあとをちょこちょこくっついてくる弟子。宝石の美しさは天上の美と善を教えてくれる、と主張する俗物根性丸出し院長。閉じられた僧院で怪しい情熱の虜となり、職権濫用甚だしい文書館長補佐。何処のものとも知れぬ、また何処のものでもありうる奇妙な言葉を喋る正体不明の男。昼の顔と夜の顔を持つ荘重華麗な僧院。そして限られた者以外の立ち入りを拒む、迷宮を備えた文書館。ラテン語で会話していた知識階級を描くなんて、と戦いていたのも束の間、登場人物はいかにも人間らしい姿で、おのおの勝手な欲望に正直に突っ走る姿がとても可愛らしい。最初のうちこそ、慣れない片仮名名前、それもラテン語読みで「誰これ?誰これ?」という状態になってましたが、それぞれ行動を起こす段になると人間がはっきりしてきて登場人物紹介も必要ありませんでした。各巻に挟まってた地図と登場人物紹介カードにはびっくりしました。素敵な配慮を有難う創元社。
冒頭に、メルクのアドソの手記を入手し、発表に至るまでのいきさつが置いてあります。この「私」こそが作者のウンベルト・エーコその人であることに気付かず、間抜けな読みをしてしまいました。「手記だ、当然のことながら」という一文をどーんと載せておいて、これこれこういういきさつで入手した手記が「薔薇の名前」の元ですよ、ということらしいのですが、そのメタっぷりにもときめく。手記と手記に付された原注のどこまでが本当でどこまでが嘘なんだ!関連書籍を読まないといけないのかしら……。
上巻終了時点では、書物を追跡するというより、文書館と「アフリカノ果テ」にたどり着くのが目的のようです。下巻が楽しみでしかたありません。早く眼鏡直らないかな。
積んどいた期間最高記録かも。
中世イタリアの修道院で起こる、連続殺人事件。それを解決するべく修道士と弟子コンビが大活躍(の予定)。
うははは、なんて面白いんでしょう。笑いが止まりません。当時世界最高峰を誇ったとまで言われる文書館を持つ、山腹の僧院。世俗から隔離された筈のそこで、立ち入りを禁じられた文書館の塔から一人の僧が転落死したことから謎の連続死がはじまる。ロジャー・ベーコンを信奉するウィリアム修道士は、院長から依頼されて事件の謎を解くべく、弟子のアドソ(のちにこの物語の語り手となる)を連れて、事件の根幹にかかわる謎が眠る文書館へと足を踏み入れるが、そこはなんと迷宮でした!(じゃじゃーん!)。手がかりは、最初の僧が持っていた本一冊、しかしその本も何者かに持ち去られ、文書館の謎の鍵を持つ人間が片っ端から死んでるっぽい展開、三人目の死体が発見されたところで下巻に続く。
ウンベルト・エーコと、ミシェル・フーコーを混同していたことが大変申し訳なくも情けなくなる次第です。「むやみに分厚い本を書いた学者」くらいの認識しかなかったことがもろバレですね!『文体練習』欲しい、といいながら『フーコーの振り子』が念頭になかったこともついでに暴露しておきます。中世イタリア、トマス・アクィナスを大学で専攻し、記号学者として世界的に有名なウンベルト・エーコが、その頭脳の精髄を見せ付けてくれます。うあー面白いー。エンターテイメントの極みでありながら、同時にアホほど知性に満ち溢れた、他の追随を許さない一冊。
記号論にからんだ帰納・演繹法による推理を「得意げに」披露する師匠。師匠を尊敬し「流石です師匠!」とあとをちょこちょこくっついてくる弟子。宝石の美しさは天上の美と善を教えてくれる、と主張する俗物根性丸出し院長。閉じられた僧院で怪しい情熱の虜となり、職権濫用甚だしい文書館長補佐。何処のものとも知れぬ、また何処のものでもありうる奇妙な言葉を喋る正体不明の男。昼の顔と夜の顔を持つ荘重華麗な僧院。そして限られた者以外の立ち入りを拒む、迷宮を備えた文書館。ラテン語で会話していた知識階級を描くなんて、と戦いていたのも束の間、登場人物はいかにも人間らしい姿で、おのおの勝手な欲望に正直に突っ走る姿がとても可愛らしい。最初のうちこそ、慣れない片仮名名前、それもラテン語読みで「誰これ?誰これ?」という状態になってましたが、それぞれ行動を起こす段になると人間がはっきりしてきて登場人物紹介も必要ありませんでした。各巻に挟まってた地図と登場人物紹介カードにはびっくりしました。素敵な配慮を有難う創元社。
冒頭に、メルクのアドソの手記を入手し、発表に至るまでのいきさつが置いてあります。この「私」こそが作者のウンベルト・エーコその人であることに気付かず、間抜けな読みをしてしまいました。「手記だ、当然のことながら」という一文をどーんと載せておいて、これこれこういういきさつで入手した手記が「薔薇の名前」の元ですよ、ということらしいのですが、そのメタっぷりにもときめく。手記と手記に付された原注のどこまでが本当でどこまでが嘘なんだ!関連書籍を読まないといけないのかしら……。
上巻終了時点では、書物を追跡するというより、文書館と「アフリカノ果テ」にたどり着くのが目的のようです。下巻が楽しみでしかたありません。早く眼鏡直らないかな。
積んどいた期間最高記録かも。
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