アンデルセン、矢崎源九郎訳、新潮文庫。
普段「ハンス・クリスチャン・アンデルセン」という読みでもって呼び習わしていますが、出身地デンマーク流の読み方だと「アナスン」「アネルセン」が近いんですって。知らなかった。童話で名高いアンデルセンの作品。
貧しい絵描きの私に、月が語ってくれた三十三夜の物語。2〜3ページほどの長さの、ささやかなエピソードで構成されています。それは月が見た景色であったり、事件であったり、物語であったり、人生であったり。はるか昔から、世界のあらゆる場所を見てきた月の光は時間も国境も越え、あらゆるひとの上に降りそそぐのです。
カバー背中の表紙に「温かく優しい感情と明るいユーモア」と書いてありますが、広告に偽りあり。半分くらいはむごい話です。ぎょっとするような表現が頻出。しかし美文だ。こんなうつくしいものがたったの300円で手に入るなんて信じられない!
「死神が、わたしの胸の中にいるんです!」と死の病にとりつかれた女が言い、貧しい男の子がフランス国の玉座の上で死に、若者が額に薔薇の花を巻いて、美しいライスの姉妹と踊るのです。
小さな女の子が新しい服に胸を躍らせ、人形に「生き物を笑ったことがある?」と尋ね、かみさまに「パンをお与え下さい、ついでにバターもつけて下さい」とお祈りするのです。
巻末に注釈がついているのですが、この注釈なしで読むと意味がまったくわからないエピソードがちりばめられていて恐ろしいです。「わからない」というより「読み違える」というほうが正確かしら。「ライスの姉妹」なんて知らずに読んでから「あれ?なんで注釈ついてるのかしら」とぺろっと巻末見て仰天しました。なんというか展覧会で寓意をそこかしこにちりばめた絵を見ているのに、絵に込められた意味を読み取れず&解釈できず「祭りの絵だと思ってたら葬式の絵だったー!」という驚き。
これ、事物にこめられた意味を全部注釈で出してくれたらいいのに……というかそういう事典でもないかぎり、わたしに文脈を読むのは不可能だと思われます。うわああんほとんど読めなかったよー!
300円でうつくしいものを買い求めたときに、宝石箱を手に入れることができる幸福。
『鏡のなかの鏡』と『夢十夜』を連想した人は同志。
普段「ハンス・クリスチャン・アンデルセン」という読みでもって呼び習わしていますが、出身地デンマーク流の読み方だと「アナスン」「アネルセン」が近いんですって。知らなかった。童話で名高いアンデルセンの作品。
貧しい絵描きの私に、月が語ってくれた三十三夜の物語。2〜3ページほどの長さの、ささやかなエピソードで構成されています。それは月が見た景色であったり、事件であったり、物語であったり、人生であったり。はるか昔から、世界のあらゆる場所を見てきた月の光は時間も国境も越え、あらゆるひとの上に降りそそぐのです。
カバー背中の表紙に「温かく優しい感情と明るいユーモア」と書いてありますが、広告に偽りあり。半分くらいはむごい話です。ぎょっとするような表現が頻出。しかし美文だ。こんなうつくしいものがたったの300円で手に入るなんて信じられない!
「死神が、わたしの胸の中にいるんです!」と死の病にとりつかれた女が言い、貧しい男の子がフランス国の玉座の上で死に、若者が額に薔薇の花を巻いて、美しいライスの姉妹と踊るのです。
小さな女の子が新しい服に胸を躍らせ、人形に「生き物を笑ったことがある?」と尋ね、かみさまに「パンをお与え下さい、ついでにバターもつけて下さい」とお祈りするのです。
巻末に注釈がついているのですが、この注釈なしで読むと意味がまったくわからないエピソードがちりばめられていて恐ろしいです。「わからない」というより「読み違える」というほうが正確かしら。「ライスの姉妹」なんて知らずに読んでから「あれ?なんで注釈ついてるのかしら」とぺろっと巻末見て仰天しました。なんというか展覧会で寓意をそこかしこにちりばめた絵を見ているのに、絵に込められた意味を読み取れず&解釈できず「祭りの絵だと思ってたら葬式の絵だったー!」という驚き。
これ、事物にこめられた意味を全部注釈で出してくれたらいいのに……というかそういう事典でもないかぎり、わたしに文脈を読むのは不可能だと思われます。うわああんほとんど読めなかったよー!
300円でうつくしいものを買い求めたときに、宝石箱を手に入れることができる幸福。
『鏡のなかの鏡』と『夢十夜』を連想した人は同志。
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