『ラヴクラフト全集3』
2005年10月1日 未分類H・P・ラヴクラフト、大瀧啓裕訳、創元推理文庫。
「ダゴン」
「家の中の絵」
「無名都市」
「潜み棲む恐怖」
「アウトサイダー」
「戸口にあらわれたもの」
「闇をさまようもの」
「時間からの影」
全8編と書簡の一部を「履歴書」として収録。
ぐっときたのが「家の中の絵」「無名都市」「アウトサイダー」。大嵐と雷に追われて入った、古びてねじけた家の中には、食人の絵を眺めて暮らす老人、そして天井からしたたり落ちてくる赤い液体……。古びた家の、湿って歪み何か悪夢のような出来事を隠しているような気配と、メインとなる本の描写が素晴らしかった。夢に見るような金箔押しに皮の装丁。おぞましい食人の絵のある頁には捲り癖がついて、開いて置けば必ずその絵があらわれる。そしてなんか赤い液体が落ちてきたギャー!と世にもおぞましく美しい本の話なのです。
「無名都市」も同じく美しい。アラビアの砂漠の彼方に、崩れはて、うち黙して横たわる廃墟の都市。乾いた砂と風と石と月と。「うち黙す」「都邑」「かぐろき」など古めかしい言葉で語られるかつて栄えた呪われし都と、その最奥にあったもの。幻想の極致、耽美の憧れであります。で、その2本を蹴り倒してなお惜しみないのが「アウトサイダー」。深い森の奥、己のほか誰一人といない寂れ果てたの城の中で光もなく書物の知識だけで外界を知る「余」が、森を越えて外界へと至ることを諦めたのち、高くそびえたつ塔に上ることに。塔は崩れかけ満足に窓もないが、「余」は憧れに駆られてひたすら塔をのぼっていく。そしてついに塔を上りきり、何処かの教会の床にある蓋を押し開けて外界へ。何から何まで美しい。ロマンだ、ここには浪漫があるよ。
「戸口にあらわれたもの」は、昔に子供向けにわかりやすく書き改められたものを読んだことがあったので懐かしかった。意外と読んだことがある作品があって驚きです。
この巻は訳が微妙に直訳調ですね。元の文が大仰で古風な言い回しであることを差し引いてもやっぱりなんだか直訳調。いえ大好きですが直訳。
資料によると、ラヴクラフトはきわめて古風な十八世紀の文化と文体を好んでいたそうで、なるほどこの古典的な空気漂う美文はそこで培ったのね!と大いに納得しました。
「大いなる種族」の外見を想像すればするほど、ホラーからかけ離れたおかしさというか可愛らしさを感じてしまいます。っていうか誰なのよホラー分類したのは。ラヴクラフトの作品中では、一般にホラーと呼ばれる恐怖とは違った方向性の恐怖が追及されているように思えます。人類の及ばぬ存在に対する畏怖がほとんどで、直接危害の及ぶような怖さについてはあんまり言及されてないのではないでしょうか。どっちかというと、人知を超えた存在に遭遇した、想像力豊かな人が類推と妄想で怯え死んでいる感じ。
にゃる様は案外簡単に呼び出されるんだなーとか、愛称が「ラヴィ」から「教授」に昇格できてよかったね、とか細々しい感想は省略。
「ダゴン」
「家の中の絵」
「無名都市」
「潜み棲む恐怖」
「アウトサイダー」
「戸口にあらわれたもの」
「闇をさまようもの」
「時間からの影」
全8編と書簡の一部を「履歴書」として収録。
ぐっときたのが「家の中の絵」「無名都市」「アウトサイダー」。大嵐と雷に追われて入った、古びてねじけた家の中には、食人の絵を眺めて暮らす老人、そして天井からしたたり落ちてくる赤い液体……。古びた家の、湿って歪み何か悪夢のような出来事を隠しているような気配と、メインとなる本の描写が素晴らしかった。夢に見るような金箔押しに皮の装丁。おぞましい食人の絵のある頁には捲り癖がついて、開いて置けば必ずその絵があらわれる。そしてなんか赤い液体が落ちてきたギャー!と世にもおぞましく美しい本の話なのです。
「無名都市」も同じく美しい。アラビアの砂漠の彼方に、崩れはて、うち黙して横たわる廃墟の都市。乾いた砂と風と石と月と。「うち黙す」「都邑」「かぐろき」など古めかしい言葉で語られるかつて栄えた呪われし都と、その最奥にあったもの。幻想の極致、耽美の憧れであります。で、その2本を蹴り倒してなお惜しみないのが「アウトサイダー」。深い森の奥、己のほか誰一人といない寂れ果てたの城の中で光もなく書物の知識だけで外界を知る「余」が、森を越えて外界へと至ることを諦めたのち、高くそびえたつ塔に上ることに。塔は崩れかけ満足に窓もないが、「余」は憧れに駆られてひたすら塔をのぼっていく。そしてついに塔を上りきり、何処かの教会の床にある蓋を押し開けて外界へ。何から何まで美しい。ロマンだ、ここには浪漫があるよ。
「戸口にあらわれたもの」は、昔に子供向けにわかりやすく書き改められたものを読んだことがあったので懐かしかった。意外と読んだことがある作品があって驚きです。
この巻は訳が微妙に直訳調ですね。元の文が大仰で古風な言い回しであることを差し引いてもやっぱりなんだか直訳調。いえ大好きですが直訳。
資料によると、ラヴクラフトはきわめて古風な十八世紀の文化と文体を好んでいたそうで、なるほどこの古典的な空気漂う美文はそこで培ったのね!と大いに納得しました。
「大いなる種族」の外見を想像すればするほど、ホラーからかけ離れたおかしさというか可愛らしさを感じてしまいます。っていうか誰なのよホラー分類したのは。ラヴクラフトの作品中では、一般にホラーと呼ばれる恐怖とは違った方向性の恐怖が追及されているように思えます。人類の及ばぬ存在に対する畏怖がほとんどで、直接危害の及ぶような怖さについてはあんまり言及されてないのではないでしょうか。どっちかというと、人知を超えた存在に遭遇した、想像力豊かな人が類推と妄想で怯え死んでいる感じ。
にゃる様は案外簡単に呼び出されるんだなーとか、愛称が「ラヴィ」から「教授」に昇格できてよかったね、とか細々しい感想は省略。
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