『天球儀文庫』

2005年11月11日 未分類
長野まゆみ、河出文庫。「天球儀文庫」というシリーズ名で刊行された初期作品4冊をまとめたもの。秋の新学期から翌年の夏期休暇まで、アビと宵里二人の少年が過ごした日々を描く。
「月の輪船」
「夜のプロキオン」
「銀星ロケット」
「ドロップ水塔」
4編を収録。

初期作品ですから、それはもうどこの国ともつかない洋風の街を舞台に、気の利いた文房具や季節ごとのお菓子、ちょっとした冒険や不思議なできごととの遭遇が楽しげに乱れ飛んでいます。

色や植物をあらわすのに選ばれた名詞は、もはや現実の事物からはほとんど乖離して、言葉から連想されたイメージが先に立つようです。長野まゆみが描く少年は、単に年齢が十代の人間・男ではなく「少年」という別様の生き物であるわけですが、作中に現れるさまざまな名詞もわたしにとってはカギでくくった物語中の存在、現実のそれとはもはや結びつかない想像上の存在なのです。

あとがきで「昔洋風、今和風で〜」と作風の変化について作者自らその理由を述べています。わたしは和風でも洋風でもあの美しさが損なわれない限りは一向に平気なのですが、問題はそこじゃない気がするのです……。うん、絶対そこではない。
そしていつも思うのですが、後書きでの作者はおそろしいほど大上段なものいいをしますね。確かに、毎回必ずわたしの知らないうつくしいものについて言及していて、そこはいつもひれ伏して尊敬しますけど、最近ちょっとげんなりさせられることが多いような。

そしてものすごくびっくりしたのがこれ、本当に河出文庫なのですか!どこからどう見ても講談社文庫です。慌てて手元にある講談社文庫を引っ張り出してきて比較してしまいました。以前の白地に紺色、マットな質感の紙を使用したデザインが独特で好きだったんですが……時代は変わる。

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