ドストエフスキー、原卓也訳、新潮文庫。
一家でルーレット(賭博場)のある温泉地にやってきたロシアの将軍。その家で家庭教師をしている青年が、賭博にのめり込んで人生の一切を博打につぎ込む話。
薄いのでさっくり読めました。昔ならポリーナと主人公の関係に喜びときめいたところですが、今はぼんやりと「恋に狂うってこういうことなのだなあ」と思ったのみです。残念。
「おばあさま」が財産をルーレットでそっくりはたくくだりや、主人公がルーレットで思い切った賭け方をしてそれが突然おそろしくなってしまうくだりなんかは、まったくリアルでした。博打は掛け金をかけてから結果が出るまでの間に、突然いいようもなく怖くなって逃げ出したくなるのに、いい結果が出るとその最中のおそれも怯えも一切消えてしまい、また次の勝負に出たくなる。負ければ負けたで悔しく、他人にそれを悟られるのも嫌で、儲けが消えただけでも身銭を切っていてもやはり負けた悔しさでやせ我慢をしながら次の勝負に出る。そのうちに見栄を張ることも忘れて熱狂してしまう。
世の中には勝っても負けてもテンションがあがる一方の人がいるようで、こういう人は博打にのめりこんだら生半可なことではやめられないのだろうなあと思います。そして負けても大丈夫なように、できるだけ儲けが残るようにと安全な勝負をしたがる人間はギャンブルでは勝てないのでした。
ちょっと身に沁みている。
ポリーナが主人公の部屋へやってきたとき、それがどいういうことなのか、ポリーナの決意がどれほどのものであるのか気付かずに、「一時間だけ待っていてください」って置き去りにした挙句、お金の話をはじめてしまった主人公。それはポリーナ怒るよ、怒るに決まってるよ。ここでルーレットに勝ってしまった、それも大勝ちしてしまったせいで人生を棒に振ることになり、そのまま博打の虜になってしまったその後の主人公を見ると、まさしく「博打に勝って人生に負けた」という感じ。
マドモアゼル・ブランシュの、最初はひたすらお金を持っている男目当ての態度は鼻につくばかりだったのですが、主人公がルーレットで大勝ちしてポリーナに捨てられてからが素晴らしく素敵でした。昨日まで視界の端に入れようとすらしなかった主人公に向かって、突然「一緒にパリに連れて行ってあげる」と言い出し、ストッキングをはかせろとベッドの中から脚を、美しい脚を突き出す。主人公が博打で勝った金を、二ヶ月と持たずに使い果たし、そして主人公をあっさりと捨てる。お金に汲々として振り回される登場人物が多い中で、ものの見事にお金を使い捨てにして惜しまない態度が潔い。主人公にお金が入った途端に豹変するところも、豹変して受け入れられるのが当然と思っているところも、前半のただ「将軍夫人」になりたいだけにしか見えないときよりはるかに魅力的でした。
一家でルーレット(賭博場)のある温泉地にやってきたロシアの将軍。その家で家庭教師をしている青年が、賭博にのめり込んで人生の一切を博打につぎ込む話。
薄いのでさっくり読めました。昔ならポリーナと主人公の関係に喜びときめいたところですが、今はぼんやりと「恋に狂うってこういうことなのだなあ」と思ったのみです。残念。
「おばあさま」が財産をルーレットでそっくりはたくくだりや、主人公がルーレットで思い切った賭け方をしてそれが突然おそろしくなってしまうくだりなんかは、まったくリアルでした。博打は掛け金をかけてから結果が出るまでの間に、突然いいようもなく怖くなって逃げ出したくなるのに、いい結果が出るとその最中のおそれも怯えも一切消えてしまい、また次の勝負に出たくなる。負ければ負けたで悔しく、他人にそれを悟られるのも嫌で、儲けが消えただけでも身銭を切っていてもやはり負けた悔しさでやせ我慢をしながら次の勝負に出る。そのうちに見栄を張ることも忘れて熱狂してしまう。
世の中には勝っても負けてもテンションがあがる一方の人がいるようで、こういう人は博打にのめりこんだら生半可なことではやめられないのだろうなあと思います。そして負けても大丈夫なように、できるだけ儲けが残るようにと安全な勝負をしたがる人間はギャンブルでは勝てないのでした。
ちょっと身に沁みている。
ポリーナが主人公の部屋へやってきたとき、それがどいういうことなのか、ポリーナの決意がどれほどのものであるのか気付かずに、「一時間だけ待っていてください」って置き去りにした挙句、お金の話をはじめてしまった主人公。それはポリーナ怒るよ、怒るに決まってるよ。ここでルーレットに勝ってしまった、それも大勝ちしてしまったせいで人生を棒に振ることになり、そのまま博打の虜になってしまったその後の主人公を見ると、まさしく「博打に勝って人生に負けた」という感じ。
マドモアゼル・ブランシュの、最初はひたすらお金を持っている男目当ての態度は鼻につくばかりだったのですが、主人公がルーレットで大勝ちしてポリーナに捨てられてからが素晴らしく素敵でした。昨日まで視界の端に入れようとすらしなかった主人公に向かって、突然「一緒にパリに連れて行ってあげる」と言い出し、ストッキングをはかせろとベッドの中から脚を、美しい脚を突き出す。主人公が博打で勝った金を、二ヶ月と持たずに使い果たし、そして主人公をあっさりと捨てる。お金に汲々として振り回される登場人物が多い中で、ものの見事にお金を使い捨てにして惜しまない態度が潔い。主人公にお金が入った途端に豹変するところも、豹変して受け入れられるのが当然と思っているところも、前半のただ「将軍夫人」になりたいだけにしか見えないときよりはるかに魅力的でした。
コメント