『ラヴクラフト全集5』
2005年12月21日H・P・ラヴクラフト、大瀧啓裕訳、創元推理文庫。
「神殿」
「ナイアルラトホテップ」
「魔犬」
「魔宴」
「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」
「レッド・フックの恐怖」
「魔女の家の夢」
「ダニッチの怪」
以上8編に加えて、資料『ネクロノミコン』の歴史を収録。
いえっさー!隊長、ついに「ダンウィッチ」との再会であります!この訳では「ダニッチ」となっているけど気にしない。原文では「Dunwich」ですし。再会を喜びながら以下感想。
「神殿」
海底の神殿に一人たどり着いてしまったUボート艦長の手記が、瓶に詰められた状態でユカタン半島沿岸で発見される。
一人称の語り手が、遭遇した恐怖と怪異とを手記にして残すいつものあれ。イルカが素敵に不気味なほかは、この展開に慣れてしまったので特に感想なし。
「ナイアルラトホテップ」
作者ラヴクラフトが夢で見たできごとをほぼそのまま綴ったもの。夢ならではの不条理さとそれでいて辻褄の合った世界の美しさがとてもよい。夢なので中身についてどうこういうのは野暮っぽい。
「魔犬」
奇矯な趣味が極まって、ついには墓場荒らしまで始めた二人。墓地に納められた魔除けを持ち帰ったことから、得体の知れない恐怖におびやかされることになる。
ストーリーはありがちなんですけど、個人的にこの地味さが好み。アブドゥル・アルハザードもそうだけれど、見えない何者かに物理的に食い殺されるというエピソードに心ひかれる。
「魔宴」
地下に広大な空間があって、そこにはどろりとぬめる黒い川が流れ、得体の知れない炎が燃える。この世のものとは思えぬ生き物がいるそこで、邪教の崇拝者たちが儀式を繰り広げるというのはお約束らしいです。「レッドフック」も大体同じだったので、なんだかなーと思いました。冬の夜に丘を越えたところで一望できる雪化粧の古い街並みや、古風な一族の家とそこで出迎える老人など、前半の雰囲気は最高なんだけれど、惜しい。
「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」
ウェストが喋るたびに、頭が緑で白衣着てエレキギターをかき鳴らすやかましい科学者が思い出されてしまい、読むのに苦労しました。何度も「目はブルーで金髪、小柄で細いからだつき、いたって穏やか」という描写が繰り返されなかったら、最後まであの人で脳内上演がおこなわれていたこと間違いなし。
章ごとの冒頭であらすじが繰り返されるのは、発表が雑誌の連載で行われたからだということですが、これは連載じゃなくて一度に一本書き下ろして欲しかった。面白いけどそこがとっても惜しい。
「レッド・フックの恐怖」
省略。
「魔女の家の夢」
もう少しタイトにまとまっていれば……とは思いますが、傾斜した部屋の壁や、夢にあらわれる老婆と鼠と黒い男、現実とリンクする夢、屋根裏の白骨と心ときめく素敵ディテールが詰まっています。
夜具の下に何かいると思ったらすぐにはがそうよ友人。
「ダニッチの怪」
犬に嫌われるウィルバーが図書館侵入で犬にかみ殺され、死体は毛深いどころか触手が生えてたよー!
という前半までは記憶にあるのですが、何故か教授たちが見えない怪物を退治する後半がまったく記憶にありません。おぼろげな記憶によると、どうも後半は別の巻に収録され、ひとつの物語が2冊にまたがっていたようです。後半を読まなかった理由は、とても怖いと脅されたか、見つけられなかったかのいずれかのはず。点描でラヴィニアの顔がアップになる挿絵がついていたのですが、一体何で読んだのかまだ不明。
十数年を経ての再会に満足して終わり。
感想がやる気のなさに溢れているのは、ここにきて更なる訳のまずさに辟易したからです。ほとんど逐語訳じゃないのかと疑いたくなる日本語に、古式床しい大仰な単語をセンスなく散りばめられたら、よほど気合の入った読書家でもない限りげんなりするのは当たり前だと思うのですがー……。残り2冊が想像しただけでもだるい。
「神殿」
「ナイアルラトホテップ」
「魔犬」
「魔宴」
「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」
「レッド・フックの恐怖」
「魔女の家の夢」
「ダニッチの怪」
以上8編に加えて、資料『ネクロノミコン』の歴史を収録。
いえっさー!隊長、ついに「ダンウィッチ」との再会であります!この訳では「ダニッチ」となっているけど気にしない。原文では「Dunwich」ですし。再会を喜びながら以下感想。
「神殿」
海底の神殿に一人たどり着いてしまったUボート艦長の手記が、瓶に詰められた状態でユカタン半島沿岸で発見される。
一人称の語り手が、遭遇した恐怖と怪異とを手記にして残すいつものあれ。イルカが素敵に不気味なほかは、この展開に慣れてしまったので特に感想なし。
「ナイアルラトホテップ」
作者ラヴクラフトが夢で見たできごとをほぼそのまま綴ったもの。夢ならではの不条理さとそれでいて辻褄の合った世界の美しさがとてもよい。夢なので中身についてどうこういうのは野暮っぽい。
「魔犬」
奇矯な趣味が極まって、ついには墓場荒らしまで始めた二人。墓地に納められた魔除けを持ち帰ったことから、得体の知れない恐怖におびやかされることになる。
ストーリーはありがちなんですけど、個人的にこの地味さが好み。アブドゥル・アルハザードもそうだけれど、見えない何者かに物理的に食い殺されるというエピソードに心ひかれる。
「魔宴」
地下に広大な空間があって、そこにはどろりとぬめる黒い川が流れ、得体の知れない炎が燃える。この世のものとは思えぬ生き物がいるそこで、邪教の崇拝者たちが儀式を繰り広げるというのはお約束らしいです。「レッドフック」も大体同じだったので、なんだかなーと思いました。冬の夜に丘を越えたところで一望できる雪化粧の古い街並みや、古風な一族の家とそこで出迎える老人など、前半の雰囲気は最高なんだけれど、惜しい。
「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」
ウェストが喋るたびに、頭が緑で白衣着てエレキギターをかき鳴らすやかましい科学者が思い出されてしまい、読むのに苦労しました。何度も「目はブルーで金髪、小柄で細いからだつき、いたって穏やか」という描写が繰り返されなかったら、最後まであの人で脳内上演がおこなわれていたこと間違いなし。
章ごとの冒頭であらすじが繰り返されるのは、発表が雑誌の連載で行われたからだということですが、これは連載じゃなくて一度に一本書き下ろして欲しかった。面白いけどそこがとっても惜しい。
「レッド・フックの恐怖」
省略。
「魔女の家の夢」
もう少しタイトにまとまっていれば……とは思いますが、傾斜した部屋の壁や、夢にあらわれる老婆と鼠と黒い男、現実とリンクする夢、屋根裏の白骨と心ときめく素敵ディテールが詰まっています。
夜具の下に何かいると思ったらすぐにはがそうよ友人。
「ダニッチの怪」
犬に嫌われるウィルバーが図書館侵入で犬にかみ殺され、死体は毛深いどころか触手が生えてたよー!
という前半までは記憶にあるのですが、何故か教授たちが見えない怪物を退治する後半がまったく記憶にありません。おぼろげな記憶によると、どうも後半は別の巻に収録され、ひとつの物語が2冊にまたがっていたようです。後半を読まなかった理由は、とても怖いと脅されたか、見つけられなかったかのいずれかのはず。点描でラヴィニアの顔がアップになる挿絵がついていたのですが、一体何で読んだのかまだ不明。
十数年を経ての再会に満足して終わり。
感想がやる気のなさに溢れているのは、ここにきて更なる訳のまずさに辟易したからです。ほとんど逐語訳じゃないのかと疑いたくなる日本語に、古式床しい大仰な単語をセンスなく散りばめられたら、よほど気合の入った読書家でもない限りげんなりするのは当たり前だと思うのですがー……。残り2冊が想像しただけでもだるい。
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