『伝奇集』

2006年2月15日 読書
J.L.ボルヘス作、鼓直訳、岩波文庫。短編集。

八岐の園
 トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス
 アル・ムターシムを求めて
 『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール
 円環の廃墟
 バビロニアのくじ
 ハーバート・クエインの作品の検討
 バベルの図書館
 八岐の園
工匠集
 記憶の人、フネス
 刀の形
 裏切り者と英雄のテーマ
 死とコンパス
 隠れた奇跡
 ユダについての三つの解釈
 結末
 フェニックス宗
 南部

物語と言うよりは、観念と記号と数学と世界の構造大解体再構築な印象の強い短編集。凝縮されすぎて説明するのがとっても大変な短編がこれでもかと詰め込まれています。実在しない書物に、実在しない書物の引用・注釈を散りばめ、実在しない誰かが実在しない世界を語る、だけでなく虚構と現実をあっさりまたぎこして実在も架空も区別なく平等に扱われていたりするので、一体どこからどこまでが本当で嘘なのかめくるめくメタフィクションへダイブしたい人にはとてもおすすめ。このメタ加減はエーコといい勝負です。というか「バベルの図書館」は間違いなく『薔薇の名前』を直撃していますよね。図書館の主の名前はホルヘだったし。

時間の並行と「ありとあらゆる可能性が同時に存在する」本/迷宮について語られる「八岐の園」を読んでいると、選択肢によって物語が分岐してゆくPCゲームソフトを思い出します。ノベル形式でループものだったりすると倍率ドン。ありとあらゆる可能性を繰り返し、並列させ、選び取り、やり直す。あるいは現在の選択によってさかのぼって過去がつくられる。「時間」と物語の関係を愛する人間には、他の「時間」ヴァリエーション短編は心臓直撃のときめきです。誰か「アル・ムターシム」と「ハーバート・クエイン」に登場する本の内容をコンセプトに物語を書いてはくれないものかしら。
「バビロニアのくじ」の数学大増殖な雰囲気はどこかで見たことがあります。が思い出せない。「バベルの図書館」はやっと出会えたねひゃっほー!とわたし大喜び。「記憶の人」「刀」はふつうにストーリーがあってとっつきやすいのでどうぞ。「死とコンパス」はなにこの殺し愛、とうっかり萌えました。

時間を扱ったノベル形式な18禁PCゲームソフト(複数)については、タイトルをあげると検索で無駄足を踏む人が大量発生してしまいそうなのでご想像におまかせします。ていうかメジャーすぎて名前挙げるのが恥ずかしいようわーん。

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