夢枕獏、文春文庫。

「二百六十二匹の黄金虫」
「鬼小槌」
「棗坊主」
「東国より上る人、鬼にあうこと」
「覚」
「針摩童子」

 「ゆこう」
 「ゆこう」
  そういうことになった。

 「また呪の話か」

でお馴染みの「いつ、誰がどこからこの物語を読み始めても、常に必ずあの縁側に晴明と博雅が座って(あとがきより)」いる冒頭から、都にあらわれる怪異と遭遇する例のシリーズ。

今「針摩童子」と打ち込んで、最初の変換が「播磨」であることにびっくり。巧いわー、なるほどと手を打ちました。
「二百六十二匹〜」は、二百六十二という時点でネタが割れてしまって少しさびしかった……。
「棗坊主」が今回最大のヒット。老人二人が囲碁を打つのを眺めている間に時間が経過して、気がついたらもたれていた鍬の柄がぼろぼろに朽ちていた、っという有名エピソードが、夢枕獏の手にかかるとこうなるのですね。思わずにやにやしてしまいます。

晴明と博雅が呪について話す場面は、簡単な言葉だけで世界やものごとの成り立ち、ありようを捉えて毎回見事なものですよね。
なんでもない日常の景色から、世界の理を導き出す。でもとっても短くてわかりやすい。専門用語なし。うっかり下手な人が書いたら10倍くらいになりそう。難しいことを簡単な言葉で説明するのが頭のいい人だ、っていう結構有名な言葉を思い出します。

「さとり」は遭遇したのが鈍感な人だったら、なんの形も取れず、なんの影響も及ぼすことができなくて立ち往生しそう……と思うと間抜けなんだか愛らしいんだか。
相変わらず道満先生が素敵だ。
あとがきの「完結までは10年は楽にかかる」っていう一文に、倒れ伏したファンは多いと思います。
頼むから死ぬ前に完結させてくれと、切実に思わされる作家は少なくないけど、十年単位で完結しませんと公言するツワモノは少ない気がします。

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