稲垣足穂、新潮文庫。
本当は河出の『ヰタ・マキニカリス』が欲しかったのですが、これはこれでよし。収録数が多くてお得。そして表紙が非常に「らしく」て素敵。
「一千一秒物語」
「黄漠奇聞」
「チョコレット」
「天体嗜好症」
「星を売る店」
「弥勒」
「彼等」
「美のはかなさ」
「A感覚とV感覚」
の全九編を収録。
あらためて読むと、ものすごい美文でびっくりしました。特に「星を売る店」「天体嗜好症」街の空気など、あっというまに異国情緒漂う、古きよきモダンな街に連れて行かれたような錯覚をおこします。これを読み落としていた過去の自分を正座させて小一時間説教したい。
「一千一秒物語」は相変わらずキュートで、はじめて読んだときと印象変わらず。
「黄漠奇聞」は、街の精緻な美しさににやにやしてしまいました。白い街が赤く染まる黄昏時、王の悩乱、首を落とされる博士。ラヴクラフトの「無名都市」を連想してイメージの重なり具合に更ににやにやしていたら、ラストで「ダンセーニ大尉」が出てきて不意打ち食らいました。時期が同じ頃と聞いたけれど、どうなんだろう。調べてみよう。
「弥勒」を読むと、学校の教科書に載っていた、「日本人はごく少ない荷物で旅をして、清潔で旅先の目的地に着けばちゃんとした様子を整えることができる。しかし、我々ときたらシーツだの暖炉だのバタつきパンだの、そういう余計なものが沢山ありすぎる、そしてその余計なものがないとちっとも暮らしていけない」という内容の文章を思い出すのですが、これ誰の作品だろう。小泉八雲っぽいと思っているのですが、出典失念。
何もない暮らしってあこがれる。
「美のはかなさ」は難しすぎて挫折しました。哲学用語とびかいすぎ。専門家にわかりやすく読み解いて欲しい。むしろ足穂に個人授業をしてもらうくらいの勢いで。
「A感覚とV感覚」も同じく。半分くらいわかったようなわからないような……。井原西鶴はちゃんと読んでるんですよ、でもわかりません。しかしジュネが男娼になった理由を「客体化」で説明してるのにはあっと膝を打ちました。なるほどねー。
全部理解できるようになったら、わたしが「男装の麗人」に固執する理由、あのむやみな魅力が説明できるようになるかもしれない。
稲垣足穂をコンプしたいという欲望が再燃しました。
解説で、芥川が稲垣足穂に書き送った本のお礼が引用されていたのですが、それを見て芥川に対する愛をますます強める。
「大きな三日月に腰掛けているイナガキ君、本の御礼を云いたくてもゼンマイ仕掛けの蛾でもなけりゃ君の長椅子へは高くて行かれあしない」
素敵ー!なんて話のわかる作家芥川ー!
本当は河出の『ヰタ・マキニカリス』が欲しかったのですが、これはこれでよし。収録数が多くてお得。そして表紙が非常に「らしく」て素敵。
「一千一秒物語」
「黄漠奇聞」
「チョコレット」
「天体嗜好症」
「星を売る店」
「弥勒」
「彼等」
「美のはかなさ」
「A感覚とV感覚」
の全九編を収録。
あらためて読むと、ものすごい美文でびっくりしました。特に「星を売る店」「天体嗜好症」街の空気など、あっというまに異国情緒漂う、古きよきモダンな街に連れて行かれたような錯覚をおこします。これを読み落としていた過去の自分を正座させて小一時間説教したい。
「一千一秒物語」は相変わらずキュートで、はじめて読んだときと印象変わらず。
「黄漠奇聞」は、街の精緻な美しさににやにやしてしまいました。白い街が赤く染まる黄昏時、王の悩乱、首を落とされる博士。ラヴクラフトの「無名都市」を連想してイメージの重なり具合に更ににやにやしていたら、ラストで「ダンセーニ大尉」が出てきて不意打ち食らいました。時期が同じ頃と聞いたけれど、どうなんだろう。調べてみよう。
「弥勒」を読むと、学校の教科書に載っていた、「日本人はごく少ない荷物で旅をして、清潔で旅先の目的地に着けばちゃんとした様子を整えることができる。しかし、我々ときたらシーツだの暖炉だのバタつきパンだの、そういう余計なものが沢山ありすぎる、そしてその余計なものがないとちっとも暮らしていけない」という内容の文章を思い出すのですが、これ誰の作品だろう。小泉八雲っぽいと思っているのですが、出典失念。
何もない暮らしってあこがれる。
「美のはかなさ」は難しすぎて挫折しました。哲学用語とびかいすぎ。専門家にわかりやすく読み解いて欲しい。むしろ足穂に個人授業をしてもらうくらいの勢いで。
「A感覚とV感覚」も同じく。半分くらいわかったようなわからないような……。井原西鶴はちゃんと読んでるんですよ、でもわかりません。しかしジュネが男娼になった理由を「客体化」で説明してるのにはあっと膝を打ちました。なるほどねー。
全部理解できるようになったら、わたしが「男装の麗人」に固執する理由、あのむやみな魅力が説明できるようになるかもしれない。
稲垣足穂をコンプしたいという欲望が再燃しました。
解説で、芥川が稲垣足穂に書き送った本のお礼が引用されていたのですが、それを見て芥川に対する愛をますます強める。
「大きな三日月に腰掛けているイナガキ君、本の御礼を云いたくてもゼンマイ仕掛けの蛾でもなけりゃ君の長椅子へは高くて行かれあしない」
素敵ー!なんて話のわかる作家芥川ー!
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