フランツ・カフカ、前田敬作訳、新潮文庫。
最初は誰が本当のことを言ってるのかわからなくて大変混乱しました。主人公のKは、本当に城から招聘されたのか?たまたま村にたどりついただけのようにも思えるし、しかし、村長は確かに測量士を招くというやりとりが村と城の間であったと書類を示す。
Kはなんとか城の役人であるクラムに会おうと努力するも、城は決してその姿を見せることなくただ機械的にKをあしらいます。
Kはひたすらうろうろと城に近づくべく、バルナバスきょうだい、橋屋のおかみ、フリーダ、ペーピー、館のおかみの間を転々とします。時折、城からの使いや、手紙や、秘書による尋問などがありますが、それらは全て城に近づく手立てとはなりません。
主人公は村に到着し、自分の位置を確かにしようとやっきになるのですが、永遠の徒労に終わるでしょう。
という物語。
解説によると、「現代社会の立法は、人間が自己自身の本来性を保持することをゆるさない」。それはつまり、人間が職業的機能としてしか存在できないということであり、職業的機能でない主人公、Kは社会に属することができないということである。
世界に対してただ「ある」ことはできない。所属しないものは「ない」ものだとするカフカ文学は、政治的状況の存在論、そこにリアリティが成立する、リアリズムの文学である。
カフカは生まれながらにして「何処にも所属していない・所属できない」人間だった。
異境の立法の前に、到着はしても入場も所属も許されない、永遠にさまよい続けるしかない徒労の物語。
これに気づくと、Kの言うことが本当であろうがあるまいが、それはたいした問題ではなくなるのでした。
解説が素晴らしくわかりやすく、要点をまとめてくれていて感嘆しました。これを読めば本文内での一向に進展しない状況と、Kのよくわからない行動が深くうなずけるようになります。
仕事に対して、ある種の懐疑を持っている人に超おすすめ。特に、お役所仕事のたらいまわしを痛感したことがあるとか、仕事以外の日常がないとか、日常って仕事で送る毎日のことだよね?と思う人などがうってつけなのではないかと思います。
あるいは、現在仕事をしていなくて、それによって疎外感を味わい、自分が一人前でないような、存在してはいけないような嫌な気分を味わっている人も、Kの気持ちがよくわかってより鬱々となれるでしょう。
読み終わって解説を見てはじめて、この物語が未完であることを知りましたが、ここまできたなら何処で終わっていても未完であるし、また完成しているのではないかと思われます。
いやほんとこんな内容をがっちりつかんだ解説ははじめてみました。新潮文庫版を強力にプッシュ!
内容(「BOOK」データベースより)
測量師のKは深い雪の中に横たわる村に到着するが、仕事を依頼された城の伯爵家からは何の連絡もない。村での生活が始まると、村長に翻弄されたり、正体不明の助手をつけられたり、はては宿屋の酒場で働く女性と同棲する羽目に陥る。しかし、神秘的な“城”は外来者Kに対して永遠にその門を開こうとしない…。職業が人間の唯一の存在形式となった現代人の疎外された姿を抉り出す。
最初は誰が本当のことを言ってるのかわからなくて大変混乱しました。主人公のKは、本当に城から招聘されたのか?たまたま村にたどりついただけのようにも思えるし、しかし、村長は確かに測量士を招くというやりとりが村と城の間であったと書類を示す。
Kはなんとか城の役人であるクラムに会おうと努力するも、城は決してその姿を見せることなくただ機械的にKをあしらいます。
Kはひたすらうろうろと城に近づくべく、バルナバスきょうだい、橋屋のおかみ、フリーダ、ペーピー、館のおかみの間を転々とします。時折、城からの使いや、手紙や、秘書による尋問などがありますが、それらは全て城に近づく手立てとはなりません。
主人公は村に到着し、自分の位置を確かにしようとやっきになるのですが、永遠の徒労に終わるでしょう。
という物語。
解説によると、「現代社会の立法は、人間が自己自身の本来性を保持することをゆるさない」。それはつまり、人間が職業的機能としてしか存在できないということであり、職業的機能でない主人公、Kは社会に属することができないということである。
世界に対してただ「ある」ことはできない。所属しないものは「ない」ものだとするカフカ文学は、政治的状況の存在論、そこにリアリティが成立する、リアリズムの文学である。
カフカは生まれながらにして「何処にも所属していない・所属できない」人間だった。
異境の立法の前に、到着はしても入場も所属も許されない、永遠にさまよい続けるしかない徒労の物語。
これに気づくと、Kの言うことが本当であろうがあるまいが、それはたいした問題ではなくなるのでした。
解説が素晴らしくわかりやすく、要点をまとめてくれていて感嘆しました。これを読めば本文内での一向に進展しない状況と、Kのよくわからない行動が深くうなずけるようになります。
仕事に対して、ある種の懐疑を持っている人に超おすすめ。特に、お役所仕事のたらいまわしを痛感したことがあるとか、仕事以外の日常がないとか、日常って仕事で送る毎日のことだよね?と思う人などがうってつけなのではないかと思います。
あるいは、現在仕事をしていなくて、それによって疎外感を味わい、自分が一人前でないような、存在してはいけないような嫌な気分を味わっている人も、Kの気持ちがよくわかってより鬱々となれるでしょう。
読み終わって解説を見てはじめて、この物語が未完であることを知りましたが、ここまできたなら何処で終わっていても未完であるし、また完成しているのではないかと思われます。
いやほんとこんな内容をがっちりつかんだ解説ははじめてみました。新潮文庫版を強力にプッシュ!
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