横溝正史、角川文庫。
内容とはまったく関係ないのですが、今度角川映画三十周年記念で映像化される『犬神家の一族』のスチルが、帯と挟み込みチラシにどーんと載っていました。
実におかしい。
作中の異様な空気を一身に担うあのマスクが、腹抱えて笑ってしまうほどおかしいものになってしまってました。
字面で見ると、それだけで異様な状況であることがわかって、薄ら寒い感じのする素晴らしい道具立てなのに、絵で見るとどうしてこうも間抜けなのか。読者のときはあった当事者である感覚が、観客になるとなくなるからだろうか。
いやもう笑った笑った。
「スケキヨ」(脚二本がにょきーんのアレ)も爆笑絵面になっちゃうのかしら……。
ここまで前振り。
表題作「殺人鬼」以外の収録作品は以下の通り。
「黒蘭姫」
「香水心中」
「百日紅の下にて」
全編、金田一さん出番です。
「黒蘭姫」は、黒蘭姫というネーミングがすごい。横溝正史はときどき、ものすごいネーミングをしてくるけれど、横溝正史なのでこれが「ありえない」ネーミングなのか「あり」なのかわからなくてとても気になります。百貨店にくる謎の女性客のあだ名に黒蘭姫。他の作家なら「それはない。絶対無い」と突っ込めるのに。恐るべし横溝正史。
ちなみにラノベなら「あーそうですよねそういうものですよね」と素直に納得します。
内容?黒いコートに黒いベールで顔を隠した、訳ありの万引き客と殺人事件という素敵な取り合わせでした。
「香水心中」
また軽井沢。信越線っていう単語を見ると郷愁をかき立てられます。入り組んだ血縁はいつものことながら、今回は登場人物が「道具立て」という以上に、何か際立っていてよかった。特に松樹と松彦の関係と人間が。
「百日紅の下にて」
これは……!「集まった人間たちで宴会をおこなう。その最中に毒で一人が死ぬ。さて毒を盛ったのは誰か?」という好きな人間にはたまらないシチュエーション。しかも、事件はその場で起こったのではなく、既にある解決をつけられた古い事件を「探偵が、事件に居合わせた人間から丹念に話を聞いた結果解決」というこれまた好きな人には垂涎ものの展開。
じゅるり。
あ、よだれ出た。
「グラスに毒を盛る」あるいは「毒を盛ったグラスをいかに標的に渡すか」に工夫を凝らすのがこのシチュエーションの粋ですが、これでもかこれでもかと色々な方法が出てきて、それを聞いた話だけで丹念に追っていくという展開がたまりません。
有栖川有栖の短編でもこんなのありましたね。古畑任三郎のグラスを渡すテクニックが理解できなくて酢を飲まされまくった懐かしい記憶。
で、表題作「殺人鬼」。
元夫という義足の男に付きまとわれる美しい女性と、たまたま知り合いになる推理小説家。顔の見えない犯人は、当然(思われていた人間と)別人というのはもはやお約束なのでネタバレにはならないと思います。真犯人が意外な人であるのはこれまた当然ですが、真犯人の別の顔が本当に意外でよかった。しかもその後更に逆転ありで事件だけでない全体のひっくり返しが仕掛けてあるのが好みのツボにどんぴしゃ。そしてそれを更にひっくり返す探偵素晴らしい。
こういう、事件だけでなくもっと上の段階でひっくり返してくれるサプライズ大好きだ。
あらためて冒頭から見返すと、計算された緻密な構成でため息が出ます。
「殺人鬼」の巧さと、「百日紅」の好みど真ん中さが特にヒットでした。
内容とはまったく関係ないのですが、今度角川映画三十周年記念で映像化される『犬神家の一族』のスチルが、帯と挟み込みチラシにどーんと載っていました。
実におかしい。
作中の異様な空気を一身に担うあのマスクが、腹抱えて笑ってしまうほどおかしいものになってしまってました。
字面で見ると、それだけで異様な状況であることがわかって、薄ら寒い感じのする素晴らしい道具立てなのに、絵で見るとどうしてこうも間抜けなのか。読者のときはあった当事者である感覚が、観客になるとなくなるからだろうか。
いやもう笑った笑った。
「スケキヨ」(脚二本がにょきーんのアレ)も爆笑絵面になっちゃうのかしら……。
ここまで前振り。
表題作「殺人鬼」以外の収録作品は以下の通り。
「黒蘭姫」
「香水心中」
「百日紅の下にて」
全編、金田一さん出番です。
「黒蘭姫」は、黒蘭姫というネーミングがすごい。横溝正史はときどき、ものすごいネーミングをしてくるけれど、横溝正史なのでこれが「ありえない」ネーミングなのか「あり」なのかわからなくてとても気になります。百貨店にくる謎の女性客のあだ名に黒蘭姫。他の作家なら「それはない。絶対無い」と突っ込めるのに。恐るべし横溝正史。
ちなみにラノベなら「あーそうですよねそういうものですよね」と素直に納得します。
内容?黒いコートに黒いベールで顔を隠した、訳ありの万引き客と殺人事件という素敵な取り合わせでした。
「香水心中」
また軽井沢。信越線っていう単語を見ると郷愁をかき立てられます。入り組んだ血縁はいつものことながら、今回は登場人物が「道具立て」という以上に、何か際立っていてよかった。特に松樹と松彦の関係と人間が。
「百日紅の下にて」
これは……!「集まった人間たちで宴会をおこなう。その最中に毒で一人が死ぬ。さて毒を盛ったのは誰か?」という好きな人間にはたまらないシチュエーション。しかも、事件はその場で起こったのではなく、既にある解決をつけられた古い事件を「探偵が、事件に居合わせた人間から丹念に話を聞いた結果解決」というこれまた好きな人には垂涎ものの展開。
じゅるり。
あ、よだれ出た。
「グラスに毒を盛る」あるいは「毒を盛ったグラスをいかに標的に渡すか」に工夫を凝らすのがこのシチュエーションの粋ですが、これでもかこれでもかと色々な方法が出てきて、それを聞いた話だけで丹念に追っていくという展開がたまりません。
有栖川有栖の短編でもこんなのありましたね。古畑任三郎のグラスを渡すテクニックが理解できなくて酢を飲まされまくった懐かしい記憶。
で、表題作「殺人鬼」。
元夫という義足の男に付きまとわれる美しい女性と、たまたま知り合いになる推理小説家。顔の見えない犯人は、当然(思われていた人間と)別人というのはもはやお約束なのでネタバレにはならないと思います。真犯人が意外な人であるのはこれまた当然ですが、真犯人の別の顔が本当に意外でよかった。しかもその後更に逆転ありで事件だけでない全体のひっくり返しが仕掛けてあるのが好みのツボにどんぴしゃ。そしてそれを更にひっくり返す探偵素晴らしい。
こういう、事件だけでなくもっと上の段階でひっくり返してくれるサプライズ大好きだ。
あらためて冒頭から見返すと、計算された緻密な構成でため息が出ます。
「殺人鬼」の巧さと、「百日紅」の好みど真ん中さが特にヒットでした。
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