上甲宣之、宝島文庫。

おお、上甲って一発変換できるんだ。ちょっと意外。

女子大生二人組が、旅行で訪れたひなびた温泉地。ひなびるを通り越して外界と隔絶したようなその村は、ミステリ愛読者ならその場で迷わず引き返したくなるほど怪しい村だった。

のっけから「今すぐそこを脱出しろ、さもないと片手片足片目を奪われて、”生き神”として一生幽閉されるぞ」という謎の電話がヒロインにかかってきて、その電話の通りにヒロイン・しよりを捕らえようと村人たちが襲い来る。
とっさに連想したもの→インスマウス大脱出行。
しよりの連れであるもう一人のヒロイン・愛子は、たまたま温泉から宿に戻るのが遅れたおかげで、村人から襲われることは避けられるが、正体不明の殺人鬼とトイレで荒木飛呂彦ばりの戦いを繰り広げることになる。
とっさに連想したもの→ジョジョ第三部のポルナレフ(解説にいわく、作者は執筆時第四部を特に意識してやったそうです)。
民俗学ネタで閉鎖した村からの決死の脱出というばっちりなつかみにはじまり、トイレで殺人鬼と機転を頼りにひたすら戦うアクションの大盤振る舞い。一度動き始めると全てがノンストップ。
なのにミステリとしての仕掛けはむしろ硬派ですなー。「誰の言っていることが本当なのか?信じるべきは誰なのか?」
この選択を間違えると、即デッドエンドの命がけの疑心暗鬼と葛藤。もちろん悠長に考えている時間はなく、選べなければやはりデッドエンド。嘘はないか矛盾はないか、考えても考えても、答えが出そうになると携帯が切れる。あるいは新しい材料が飛び出してくる。

……あれ?ミステリ?

読み終えてタイトルを見ると、まったく完璧なタイトルですね。
ヒロイン二人の行動は最後まで交差するものの一致せず、携帯電話はこれでもかと物語を引っ張る。
解説が内容を的確に表現してる上に面白いので、買おうかどうか迷ったら解説をどうぞ。解説できゅぴーんときたら、間違いなし。
愛子の喋り方や、「?!」が頻繁に使われるなど、最初は砕けすぎた文体にちょっと引っかかりを覚えましたが、しよりが部屋から脱出する頃には気にならなくなってました。
内容が面白ければこのくらいささいなことですよ。

続編も買ってきてあるので、とても楽しみです。

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