『屍の王』

2007年4月1日 読書
牧野修、角川ホラー文庫

解説を東雅夫が書いているのですが、わたしどうもこの人と趣味が合わないようです。『怪談の学校』のときからそうじゃないかと薄々思ってはいたんですが、残念なことに勘違いじゃなかった……。
娘を惨殺され、失意の底に沈むエッセイスト草薙のもとに、かつての担当編集者から連絡が入る。小説を書かないか――。娘の供養にと書き始めた小説『屍の王』。しかし、かつて同名の作品が存在し、その著者が娘と妻を殺害し自殺していた事実が明らかになる。自らの過去を探す道程で明かされる恐怖とは……。
幻想ホラー最高峰、著者渾身の一作、待望の文庫化!

最高峰……。
著者渾身の一作……。
ぶっちゃけ『MOUSE』を読んだあとだとてきめんに「はずれ」に入る本だと思います。牧野修は当たり外れの大きい作家だなあ。
解説でほめちぎられている、イザナギ・イザナミの黄泉返りを下敷きにしたモチーフの数々ですが、ひねりなさすぎて浮いてます。
牧野修はこんな安直な引用で満足するような作家じゃないはずだ!『楽園の歴史』のクトゥルフ演歌(のような凝り具合)をもう一度カムアゲインー!と思わず解説に食って掛かる始末です。

「黄泉返り」それ自体よりも、「黄泉」にあたる場所でのひとびとの生活、ヨモツヘグイの「焼きオニギリの定食」が思いもかけない視点で新鮮でしたわー。ヨモツヘグイがオニギリ。赤提灯でビールの死人。あと幽霊船ビルの丸い扉は悪趣味のハート直撃。
真莉緒さんはホラー好きならではの反応がメタっぽくてよかったのに、出番が作中一箇所に集中しているので、使い捨てのごとき出番ばかりに見えましたよ。逆に泉さんと美沙さんは見事でした。

えげつない不幸とグロい恐怖の描写はちょっと右に出るものが思いつかない巧さなのに、むしろホラーは向いていないんじゃないかしら。ホラーよりも幻想・SFのほうが個人的に当たり本が多いと感じるのは、嗜好の問題かなあ。
一応文庫で出てる分は全部買うつもりですが、あらすじを聞いただけではずれの予感がするあれとかあれとかどうしよう……。

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