ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、朝倉久志訳、ハヤカワ文庫

タイトルだけしか知らなかったときは、ミッションインポッシブルに挑戦する男主人公によるややハードボイルドな話かと思ってました。だってこれが小説のタイトルだと知ったのは格ゲーのノベライズだったんだもの、仕方ないと思います。
すいません、今ものすごい稚拙な言い訳しました。

デネブ大学の図書館で、「連邦草創期の人間(ヒューマン)のファクト/フィクション」を探している若いコメノのカップルに、主任司書が3冊の物語をさしだします。要するに作中作ですね。
その3冊の本に当たるのが、各章題になっている三話。カッコ内は原題。
「たったひとつの冴えたやりかた」(The Only Neat ThingTo Do)
「グッドナイト、スイートハーツ」(Good Night, Sweethearts)
「衝突」(Collision)
あ、今気がついたけど「スイートハーツ」なんだ。さすが。
やった! これで宇宙に行ける! 16歳の誕生日にプレゼントされたスペースクーペを改造し、そばかす娘コーティーは憧れの星空に旅立った。だが冷凍睡眠から覚めた彼女を意外な驚きが待っていた。頭の中にイーアというエイリアンが住みついていたのだ! 意気投合したふたりは、<消えた植民地>探検に乗り出すが……元気少女の愛と勇気と友情を感動的に描く表題作ほか、星のきらめく宇宙に展開する壮大なドラマ全三篇を結集(背表紙より)
このあらすじを見て、「ハヤカワが愛と勇気と友情と感動というからには、ただ人が死んじゃうだけの昨今の泣ける本とは違って、ほんとうに泣かしにくるに違いない」と思ったのは間違いではありませんでした。
が。普通、このあらすじで「宇宙と冒険に憧れる元気少女」が主人公だったら、幸せな冒険と帰還が待ってると思っちゃうんだぜ……。これは真性のトラウマ本だと思います。
レビューを探してみたら、かなりの人が泣かされてるようだし。そもそも訳者あとがきによると、「これを読んで泣かなかったら人間じゃない」という書評を書いた人までいるくらいなので、泣ける本という予想は間違っていなかったんですけどもー! もー!

あと二篇についても、ばたばたと人が死んでいくので、いつ誰が死んでも不思議はない、とびくびくしながら読みました。
全体から受けた印象は、ほぼ訳者あとがきの「昔なつかしいスペース・オペラの世界が」「円熟した筆致でくりひろげられて」いる感じ。確かにこれだけ見ると野心的とか最先端とかいう言葉とは縁遠いですね。
これがはじめて手に取ったテイプトリー作品なので、どんな作風の人かは知らないんですが、冒頭でいきなり『輝くもの天より墜ち』の話が出てて、これは読めということですか……と増えていくだけの読書リストに泣いた。

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