すすまねえ。

2004年9月8日 未分類
『悪霊島(上)』ようやく読了。だらだら3日とかかかりましたよ。なんでこんなに読みにくいんだ。登場人物が多すぎて把握できなくなってきました。なんつーか、殺人が起こるまで下準備と仕込みだけ読まされてる感じ。
金田一が昔の事件を思い出したり、自分の性格について自省してみたり、磯川警部と微妙に行き違ってみたり、あれあれ、これはシリーズが終わりに近くなると見られる傾向じゃないですか?
話は下巻を読んでからだ。
推理小説じゃなくて冒険譚として楽しめば、頭の中がハリウッド。
『三つ首塔』読了。
得体も正体も知れない男前の悪党と、超のつく巻き込まれ型ヒロインが人生を滑り落ちるように転落しながら目指す塔にたどり着いた冒頭。さてどうして良家の子女である私がここまで落ちたのかというと、それはもうちょっと筆舌に尽くしがたい事件事件またまた事件という、とんでもない運命の急流に落ち込んだからなのでした。
三つ首塔が日本の田舎にあるんじゃなければ、マジでハリウッドの冒険映画みたいなノリだったのになー。逃走しながら事件の真相に迫る!みたいな。変装尾行に危機一髪、カーチェイスだけはないけど軟禁監禁地下生活、双子に姉妹に同性愛までは幅広くご用意しております。当然探偵も警察も殺人犯もいるぜー。あとは空からの落下追跡があったりしたら完璧だった(それはもう違う話だし)。
あ、落下あったわ、そういえば。
漢字で書くと不思議なものもらい。昨日、久しぶりにコンタクトをしたせいかもしれない。とりあえず「眼球に傷」じゃなくて良かった。
『女王蜂』読了。
どうしてタイトルが女王蜂なのかさっぱりわからんのですが。智子さんは蜂で女王様なだけで、別に女王蜂ではないと思うんですが。苦しいな。そこら辺はさておき、ハッピーエンドでよかったよかった。……あれ、この構図、前にも読んだぞ。……犬神家か、そういえばあそこも美貌の跡取り娘+周りの男が死んでいくっつーパターンでしたな。神尾女史は端ッから怪しくてよいですね。もうひとり怪しい人間を探さねば!と思って読んだけれど、ほとんど直前までわからなかった……。
うむ、満足。

『罪と罰』

2004年9月1日 未分類
今夏自分的課題図書、読み終わりましたー!
いやあもうものすげえ面白かった!!特に下巻、ジェットコースターですよ。一気に読んじゃったよ。重さと厚さに躊躇してこれを読んでいない本好きは、絶対損をしている。つーか、人口に膾炙しているような粗筋は誰が考えたんだ。アレのせいで面白い本を読み損なっている人間はかなりの数だと思うぞ。あー、もうホント勿体無い。厚さだって実際読んでみれば大したことないし。読みにくい文体でもないし、難しい言葉が並ぶわけでもないし、読むのにかかった時間と気力なら高村薫の『リヴィエラ〜』の方が上だったな。

ラスコーリニコフVSポルフィーリィ。
予審判事の性格の悪さにはときめき。解説でも書いてたけど、形式としては完全に「コロンボ」なのですね。判事の視点から描いた場面がないために、読者には判事が何処まで掴んでいるのか、行っていることの何処まで嘘なのかはっきりとわからない。心憎い!
ルージンVSスヴィドリガイロフ。
ルージンの阿呆ッぷりと途中脱落振りには同情の涙を禁じえませんでしたな……(笑)。才色兼備な主人公妹を挟んで合わせ鏡のように登場したスヴィーにインパクトで負けて蹴落とされたというのが相応しい。ルージンがソーニャにちょっかいを出したときは、このロリコン、まさか次は代わりにソーニャをターゲッチングしたのではあるまいな?!とどきどきしたもんです。つーかスヴィーの変態ロリコン振りには「ニヒリスト」なんて形容が似合わないです。なんだよ、50歳になるおっさんが16歳の許婚に鼻の下伸ばしやがって。確かに綺麗で若い女の子は素敵だが!主人公妹が好きで好きで仕方がない理由は、彼女がややロリィだからなんだろうか……。
主人公とその妹。
途中から影が薄い……(笑)。てっきり、一冊丸々かけて主人公が苦悩する様をねちねちねちねち描いた作品だと思ってたのに、発狂もせず普通に収監されて、あまつさえ更生しちゃって。お前って奴は周囲に恵まれたよな。人間万事塞翁が馬、の見本みたいな人。妹とは双子みたいで面白かった。ていうか妹が面白かった。兄さん大好き妹大好きなこの兄妹、絶対シスコン&ブラコンだよな。主人公の妹に対する過保護さは、ある意味仕方ないのかもしれない。変質者二人も出てきて兄さんもう大変☆とか。妹にはいつ不幸になるか死ぬんじゃないかとハラハラさせられっぱなし。薄幸な匂いがするんだもの。
神VS無神論者。
ロシアという、正教の支配下真っ只中で、洗礼を受けるのが当たり前なほどのキリスト教徒が神を信じなくなる/信じられなくなるということの苦痛がいかほどのものであるか、現代日本に住む私には解らないのですが、神を信じなくなる/信じられなくなるほどの苦痛であるならば、一端ではあるけれど、想像できる。貧しさということ、をマルメラードフが語っていたけれど、閉塞しない貧しさは、ただ破滅に向かってだけ道を示している。奇跡を待つ心の弱さや、切実さは、何の足しにもならないと一刀両断されているのが悲しい。
まとめ。
思想を読むことができ、犯罪後の対決を読むことができ、尊厳をかけた人間関係を読むことができ、現代では陳腐に堕してしまったリアリスティックな人間を読むことが出来る、一粒で4回美味しい本。更には新しい世界へ踏み出す希望のラストまでつけて文庫上下巻じゃ足りなーい!と思った私は少数派かしら。もっと書いて欲しかった。
『耳猫風信社』。これまた最初に読んだのは高校時代に単行本で。覚えてるエピソードは、前髪をフラッシュピンクに染めたい少年、耳の中に入ったうさぎ草、ママのひまわりパンと灰色猫、のみっつ。まあまあ覚えてた方だと自分では思う。
診療所にいた甥っ子の少年がビジュアル的にクリーンヒット。これ読んで以来、みじんこ理想の綺麗な少年は、「濃紺の上着に白いブラウスが似合うすっきり品のいい姿」をしています。カシスの黒コート姿も凄く好きだけど、やはり青系で。
なんちゅーかもう長野節大全開、真骨頂。大好き。
あれー、なんだか記憶と違うぞ、あつかましさ全開の女の子を拾って苦労するけど結局それでOKしてしまう話ではなかったか。
『月の船でゆく』読了〜。
首傾げながら読んでたら、間違ってなかった。少年は自分が女の子だと主張しているし、叔母上も女の子だと決めてかかってる。姉だけが弟だと言ってるけど、よし、間違っていないこれでOK。
最初に読んだのは高校生の頃に、母が図書館から借りてきた単行本だっけ。今ほど巻き込まれ型押し切られ型の主人公に反発を感じなかったような。しかしこうして改めて読んでみると、ものすご巻き込まれ型の主人公ですな。パロマもかわいそうに。変なのに引っかかっちゃって。
……叔母上が自分より年下になってしまったことに愕然。
『海猫宿舎』長野まゆみ読了。
宿舎で暮らす体の弱い少年たち、新しくその土地にやってきた先生、季節が移り行くそのほんの僅かな境目、当たり前のように溶け込む「不思議」、成長の軌跡と待ち受ける奇跡。
まあ要するにいつもどおりといえばいつもどおりということで。ただ、いつもの毒だの偏執だの拘泥するところがない書きぶりのせいか、この作家にありうべからざらる地味さ。普通さ。真っ当さ。綺麗には間違いないんだけれども、何か足りない気がする。
普通の話を書く長野まゆみって平凡な作家でしかない気がする。知らずにこの話だけ読んだら「ふーん」ってあまりの普通さと地味さに多分、もとい間違いなく読み捨てにしていたに違いない。『夏帽子』なんかと比較するとよくわかると思われる。
いや、でもより現実に寄り添う姿としてはこちらが正解なのだろうな、とは思った。ただそれが「長野まゆみ」に似合うかどうかは別の話というだけのこと。

それにしても『月の船でゆく』が光文社から文庫化してたとはねー。やられた。道理で見つからない筈だわ。

罪と罰

2004年8月27日 未分類
罪と罰〜♪
すっかりありふれてそこいらの安い歌にでも転がるようになったフレーズですが書名です。
ドストエフスキーの『罪と罰(上)』読了です。
ドストエフスキーは(゜Д゜)ゴルァ!!なんですねー、と知り合いに話したら爆笑されました。高級な話題なのか低俗な話題なのかわからないし。
途切れ途切れに読んでいたら、誰が誰なのかわからなくなって大変。ザミョートフっていつ出てきたんですか。あと、名前を活用しまくるのを何とかしてください。女性の愛称変化はなんとか知識の中にありましたが、名字まで活用されるとはおもわなんだ……。「マルメラードワ」なんて誤植かと思ったっつーの。
ポルフィーリィが出てきてぎくっとした俺は阿呆ですね。こっちが元ネタなんだから出てくるのが当然だというに。
下巻でどれくらいラスコーリニコフがいかれるのか大変楽しみです。
通称「おねえさま」「ささやん」そして「家主」と僕の4人でオタクスポットにゴーです。うふふ。むしろくすくす。
何処へ行ってきたのかといえば、耳にしたことはあるけれど足を踏み入れたことは一度たりともない地底の穴、まんだらけですよ……!いやあ、おかしいネ!テレビで話題になっていた頃の姿を想像して足を踏み入れたワタクシ、ビル一つぶち抜いていることに驚愕。社会見学の如き態度で18禁男性向けコーナーへ……(間違っている)。

通販特典の「アレ本」がいちまんごせんえんってどういうことですか師匠!
初回限定版が1万ちょっとって、それは初回特典ついているのですか!
どうしてBPNとメタモとBABYとナオトの服がコスプレ衣装と一緒に売っているのですか!
ちゅーか主目的であった店員さんによるステージ上ライブがいたたまれないのはどうしてですか……!

同人誌など今更欲しいとは思わないので、この程度で撤退してきました。ああ、面白かった。
そして途中で寄った本屋でメルブラのリアクト攻略ガイドブックと、fateのプレミアムファンブックを購入。家主に馬鹿呼ばわりされました。メルブラもっていないのにどうする気だと。いいんだ、今度買いに行くから。
真っ当な本も買いました。『海猫宿舎』を探していて『月の船でゆく』『耳猫風信社』を発見、まとめてゲット。『悪霊島(上下)』『病院坂の首縊りの家(上下)』『三つ首塔』『女王蜂』……ガーン、『仮面舞踏会』買い忘れた!後一冊でシリーズコンプだったのに(号泣)。
今月はもうお金ないんで、家で大人しく本を読むことにします。
しかし、プレミアムファンブックが割りと期待はずれだったのでどうしてやろうかと復讐の念に萌えています。違う燃えています。

もしかしたらメルブラのためだけにパッド購入もあるかもしれない。人生のピンチ!
何を勘違いしたのか母に向かって「芥川賞受賞作品」と解説してしまった『脳男』。いやそれありえないから。気付いてすぐに訂正したので以下何事もなかったかのように感想。
色々使い捨てというか出しっぱなしというか。出したものにきちんとケリをつけてくれていないので(具体例:青木)どうにも散漫な印象が拭えない。もっとタイトにつめて濃縮還元120%くらいにしてくれれば丁度いいと思われる。主人公も刑事と女医と脳男のどれかに絞った方が良かったなあ。刑事を主人公に一本書いたら、菊地秀行みたいなそれはそれは無茶で面白い話が出来そうな予感がするんだけど。
まあ第一作目でこれなら大したものなんだろうなあ。とか、最近濃い上に重いものばかり読んでいるからジェットコースター系は評価が低くなるのかなあ、とか。まあ色々。フォローフォロー。

絵が怖いよ!

2004年8月18日 未分類
『透明人間の納屋』読了。ミステリランドは執筆陣が豪華だけど子供向けとしてはトチ狂ったとしか思えないラインナップですね。しかもこの本、やたらと絵が怖いし。装丁も怖ければ中の挿絵も怖い。うなされるっちゅーねん。ホラーかと思ったわ。
それはさておき面白かった。でも、透明人間実在説を信じさせたまま11章辺りで終わった方が良かったのではなかろうか。すべての不思議な出来事に、合理的解決がつくというのは、凄いことだけれど少し味気なくもある。金縛りの謎くらいは、読み手はともかく一人称の観点では謎のままにしておいて欲しかったなー、と。夢がないんですね、謎がひとつもないと。
それにしてもまさか政治ネタで落ちがつくとは思わなかった……。途中で「ん?」とは思ったけれども。「報道による大衆操作の一環」だったとかそういう逆転オチが後世で判明したらどうするのだろうと、現実の話には常に余計な心配をしてしまうチキンなわたし。げふへは。
ところで、ミスリーディングのひとつであろう「あなたの死体、消せるわ!」っていうあの台詞は一体どういうことだったのだろう。自転車での移動中何を着ていたのかー、とか、何か着ていたなら何故裸だったのかー、とか。単なる読み落としだったら情けないのですが。
そういえば島田も『竜臥亭〜』以来ご無沙汰だわ。図書館には結構入ってるから読んでもいいなー。
浅田次郎著、『姫椿』読了。
浅田は読みやすいからお勧めだよー、と母に薦めた浅田次郎、自分で読んでて割と世話無いですな。このひとのエッセイは大爆笑ですきなのだけど、直木賞受賞後から刊行ペースについていけなくなってご無沙汰だったのでした。『勇気凛々ルリの色』なんてハードカバーで買ったのにね。
それはさておき短編集。骨っぽさを語り口でもって巧みに整えた、手練な文章は相変わらず。泣かせどころを心得たしみじみとした筆は、年輪と経験が滲み出していてヒジョウに羨ましい。じゅるり。
「一体何処の国の麒麟を攫ってきたー!(笑)」な「シエ」から「落ちてねえー!」な「零下〜」、「エバーグリーンって聞いたことあるよなあ、でも思い出せない」な「緑」まで、幅広い作風で魅せてくれます。「再会」でのどん底ぶりや、「姫椿」での容赦なく襲う理不尽まで、さらりとした筆致で残酷というものの姿を描き出す様子にはもう脱帽。ってか、この人を見てると、北村薫が好んで描く残酷さがわざとらしく見えるんだよなあ。なんというか、北村薫のは、いかにも女性らしい仕組まれた個人攻撃、という黒さ。それに対して浅田次郎は、自然の猛威と同じく勘定(感情)なくそれゆえ仮借なく人を襲う理不尽の持つ残酷さ、というか。
久々にさくさくとした骨太の文章をかじりました。もぐもぐ。
ちゅーても浅田次郎にも、どちらかといえば女性の感性に寄り添うようなところがあるのだけど。
図書館で制覇するのも悪くないなあ。
やかましいタイトルですが、これくらいではちっとも全然まったく僕の心情を言い表せてはいないのですよお嬢さん。
なんかもう、フォントサイズ馬鹿でかくして前後2ページに渡るくらいのスクロールになるほど行間空けて、

古橋秀行はいいな……!

とかやりたいですよ。
『デモンベイン 機神胎動』読了。
鋼造カッコいいー!あんたのその手回しの良さには参るわ!人物造形はほとんどオリジナル鋼造みたいですが、細部を見る限り九郎鋼造のほうなのね。ゲストヒロインはどじっこ属性でありながら嫌味なく元気で前向きでかわいらしいですね!ナイアさん今回はネーミングセンスがないとは言わせない名前で登場。
しかしそうか、アイオーンはアイオーンで、アリゾナ発のデモンベインとは別の機体だったのか。ああ、でもこれなら「混ざった」とも解釈できるなあ。
おそらく今回の主役であると思われる(笑)アズラッドと、悪役でありつつ奥さんでもあるあの人の関係は激しくときめきです。奥さん(・∀・)イイ!!よな。アズラッドは乗り捨てられるマスターの分際でアルと仲良くしすぎです。ムキー。
あー、でもこの鋼造は写本持ちで孫娘持ちで時計塔で殺害確定なのかと思うと泣ける。とりわけエイダが泣ける。

なんだろ、他所のサイト様でも言われていたけれど、古橋ならば何か暴走脱線を一つくらいしてくるに違いないと思ったら、これがあまりに真っ当正統でびっくり。足りないところは一つもなく、過剰なところもまた一つもない。この「足るを知る」とでも言うんだろうか、元の世界から逸脱すること無しに充実するという事態に自分は驚いたのだと思う。
98点あげちゃう。
やられたー!!
思い返してみれば、最近ここまで見事に騙しの効いた本は読んでないや。一人称視点で読者を騙す〜、って括りで記憶に残ってるのは森博嗣の『そして二人だけになった』くらいかなあ(古いよ)。
いやあやられた。
蓬莱倶楽部の悪事を爽快に締め上げてくれるんかなー、と思ったら、あらまあ。ハードボイルドだけどハードボイルドが主眼じゃなかったのですね。
しかし、さくらさんが安藤だとわかっても、愛さんが祖母だとわかっても、トラが安藤ではないとわかっても、それでもまだ一番大きな作者の仕掛けが何処(何)なのか解らないというのには心底参った。読み手の先入観を逆手に取るどころか、手にとって転がしまくるのは全く見事な腕ですわよ。つっかね、さくらさんが怪しいのなんて途中でまるわかりなんだ。でも、さくらさんが節子さんで主人公を安藤だと思い込んでいたのには「うわっ」って感じでした。こういう場合、普通は読者ごと「主人公は安藤というのだな」と勘違いさせておくものじゃないのか。登場人物だけってのは何か定石を外して凄くないか。
やや惜しいのは、蓬莱倶楽部に関して最後で微妙に投げ気味なこと。二人が警察に行けば目的は果たされるんだからいいんだろうけど、どうせなら当初の予想通りに、愛さんが望む形で蓬莱倶楽部が壊滅する爽快な結末も見たかった。若かりし頃の主人公の話と、現在の主人公の話と、結局関連性が見出せなかったのもちょっとなあ。ううん。

いやいやいや、それにしても近年まれに見るくらいすっかりさっぱりしっかりきっかり騙されました。ああいい気分だ。

で、歌野は新人だと思っていたら15冊目のベテランだったのか……。
著者名が名字だけだったり、出版社関係の情報がすっかり落ちてたりするのは「メモだから」という手抜きであって、本当なら著者名出版社発行年月日版ISBNまできっちり記入する作法を知っています。つーか大学4年間で叩き込まれたので、間違ってる人を見るとむずむずします。
新潮文庫でよく遭遇するんだけれども、戦前の版と、戦後すぐの版と、最近の版では同じ作品でも全く違って見えるのですね。特に戦前の版で読むとほぼ原文底本なのに、最近の版を本屋で手に取ると間違って違う本を手にしてしまったのだろうかという気分になることもしばしば。夏目の「こころ」を夏の文庫フェアで手にしたときは、マジで同名の違う作品かと思ってしまった……。旧字旧仮名の原文が一番美しい作家なんか損しまくりだね。

『しゃべくり探偵の四季』読了。
中身は激しくどうでもいいんだけど、解説に爆笑。比較対象にする作家がよりによって高村薫かよ!コピーとって置けばよかった(笑)。
で、この解説を書いたのが誰なのかさっぱり記憶にない、と。
実家のすぐ側には町立の図書館があるので、気軽に本を借りにいけます。中学を卒業するまではお世話になったものだ。今回帰省中することがないというか読むものがないと怖いので母にくっついて本を借りに惨状、もとい参上。「買うのはためらうけど読んでみたいなあ」と思われる本を中心に借りてみた。
それが昨日の話。

黒崎みどりの『しゃべくり探偵』読了。
全編台詞だけで構成された(手紙などの例外もあるがほぼ会話のみといって差し支えない)、日常の謎ミステリー。大阪弁且つボケノリ突っ込み一人漫才しょうもない駄洒落でできているので、肌に合わなかった人、ギャグが笑えなかった人には相当苦しい。発想としては斬新なんだけどね……。僕は苦しかった。それなのにうっかり続編の『しゃべくり探偵の四季』から読み出してしまったために、泣く泣く全部読むことに。一冊目から読んでたら、読み終えると同時に捨ててた。図書館で借りて読んでよかった。
しかしこれが黒崎みどりか!どうしても『聖なる死の塔』のイメージが先行してしまうから(っていうかそれしかない)びっくりした。いや、『聖なる〜』自体も読んでなくて、ドラマの再放送を眺めて笑っただけなんですが。ファンの人には申し訳ない。

映画「キング・アーサー」見てきました。これ以上ないほどよこしまな目的で(笑)。そういえば「デイアフタートゥモロー」「イノセント」「ホーンテッド」「パイレーツオブカリビアン」は見られなかったんだよなあ。家主が映画館に行く習慣をもっていないから。残念。「キルビル」はDVDでいいや(投げやり)。
ところで「ダークウォーター」って『仄暗い水の底から』だよね?(今検索したら「灰暗い」が大量に引っかかって笑った)。
最寄り駅から大阪駅までの電車の中で『老人と海』を読み終えてしまいましたよ!いやだって、血沸き肉踊るハードボイルド小説だったのですもの。中学生くらいをだまくらかして「冒険小説だよ」って読ませても大丈夫な気がする。ヘミングウェイの骨っぽさはまさしく漁師の老人の、働くことによって削がれた手の骨のようだ。
訳者の福田恒存の解説にふんとかはあとかほへえとか。うんうん頷きながら読みました。そう、つまりそういうことなんだ、僕がアメリカ文学を愛せないのは。同時にこれが、自分とヨーロッパ文学の縁が薄い理由だったりもするのだろうなと。まあでも、日本文学>ヨーロッパ文学>アメリカ文学って感じの並びですわな。

今気がついたんだけど、中国文学を何処に入れようか。
『ナイン・ストーリーズ』読了。『ライ麦畑〜』は読んだことがありません。なんちゅーか「せいしゅん小説」ってくくりに入る古典(とか純文学とか)ってキライなんですよ。読まず嫌いだけど。

「バナナフィッシュにうってつけの日」
こ、こんなんありか?!ありなのか?!シーモアさんは他の長編にも登場してるということで、そっちから読めば何とかなるかもしれないけど、とりあえずこの短編だけ読んだ印象は「わからん」。わけわからんというか、もうそれ以前に「読めてない」。作者が意図したところなど読みきれるはずもないし、作者が意図したところ以上のものを読んでしまうのが読書の醍醐味だとは思うのだけど、それはあくまで「読んだ」時に汲み出したものについての話であって、何一つ汲み出せていないというのは大変に問題なのではなかろうか……。なんだかもう「読み方が解らない」のセカイ。
バナナフィッシュは一部で有名なエピソードだけれど、初出は何処なんだろう。この作品中では「見ると死にたくなる魚」ではないらしい。多分。
「コネティカットのひょこひょこおじさん」
解説によると、「最初から七番目まで同じ主題の絶妙なヴァリエーション」ということらしい。嘘つけ。男前なおねーさんが、母親を慕う子どものように泣いているラストはなんだか切ないなあ。
「対エスキモー戦の前夜」
いやー、笑った笑った。簡単に言ってしまえば「無神経な友人に清算を迫るが、友人の兄がいい男だったので縁切りを中止」ってことなんだろうけど、なんとも絶妙。いい味出してるわー。おかしい、エピソードとしてはいかにも類型的なのに、見たことの無い変さ。よく天日干しにして原材料がよくわからなくなってしまった干物を、奇妙な味に首傾げつつ食べきった後に、実はあれ食べ物でもなんでもないんだよね……と知らないところで噂されてしまったような気分。
「笑い男」
ああ、これならわかる、これなら読み方を知っている。高校のときに現代文の教科書に載っていた、志賀直哉(志賀直哉だよな?ものっそいうろ覚え)の作品に似ている。あれは、訓練中の兵士の「人間的」とはかけ離れた姿を見るのと、その時食べるつもりでいた鴨の姿とが重ねあわされた作品だった。感想とかそれがどういうことなのかとか、そういうことはさっぱりわからないけど、これは多分こういう感じ、という程度にならなんとか読めた。誰かこういうタイプの小編の読み解き方を教えてくれないものかしらん。
「小船のほとりで」
つまり、主題というのは「希望」ということでいいのかしら。この辺りから漸く理解が追いついてきた感じ。「コネティカット〜」と「対エスキモー〜」はこれと同系ですな。どうも俗っぽくて類型的なものの方が自分の好みに合っているようだ。さすが村上春樹の全作品が理解不能なだけあるぜ自分。
「エズミに捧ぐ」
これ、エズミがめちゃくちゃ可愛いのな。萌え萌えですよ。まさかサリンジャーも日本のオタクが「エズミ萌え〜」などと転がりまわっているとは予想だにするまい。耳までの金髪に迷わず「前髪は目の上直線な」と決めてかかった阿呆。
で、前半エズミの愛らしさにのた打ち回って、もう理解できなくてもエズミ可愛いから(・∀・)イイ!!や、とか腐ったことを考えていたのだけれど、神経症になった主人公にぐあーと歯軋りし、手紙を開いてからラストまでのくだりにえっらい泣かされた。サブタイトルに「愛と汚辱のうちに」ってあるんだけど、こんなお題でこんなものが出てきてしまうサリンジャー恐るべし。
「愛らしき口元目は緑」
電話口での会話のみでここまで描き出されるストーリーがあろうとは。ところで、帰ってきた奥さんって誰なんですか?妥当な読みとしては理不尽あるいは幻覚あるいは自殺の示唆だと思うんですが。
「ド・ドーミエ=スミスの青の時代」
いつも思うんだけど、作中人物が物凄い大嘘をついた挙句、まったくさっぱりなんの「怖さ」も感じないまま、だまくらかした人の前に現れて、その嘘を突き通そうとするのって凄いですね。絶対出来ないって、無理だって。一体その度胸と危機感のなさと如才なさは何処から出てくるんだ……。職業としてそれを学習したわけでも訓練したわけでもない人間が、やすやすと実行していることが多いのは、フィクションじゃないと無理だからなのか、これくらい実際にはありがちだからなのか、どっちなんだ。
嘘ついて自分を突っ張ってみたけど、ちょっとした事情から年相応の決着を見て日常に帰るという、これもまたわかりやすい展開。細部はかなりありえないんだがナー。
「テディ」
うわあ。

新潮文庫は翻訳者が安定していいのばっかりですね。つか、訳者は野崎孝なのか。それなりにいい訳をするなと思ったら。野崎は具体的に翻訳作品を上げろと言われても出てこないけど、名前を聞いたらわかる程度には俺の中でメジャー(はっきり名前と作品が一致するのなんて福田恒存くらいだ)。「A Perfect Day for Bananafish」を「バナナ魚日和」って訳すセンスだったら多分理解できなかったと思うわ……。野崎に78点。
奇数巻と偶数巻で視点の交代するザッピングファンタジー(帯の煽り文句だった)ミズー編完結。10巻完結で最終巻は10月発売。マジで年内完結ですよ。偶数巻は連載分とはいえ、すげえ。
ひとつのエピソードが終了ということで、ちょっとは真面目に思ったところでも書きとめて置こうかな、と。
まずは話の締め方に驚く。まだまだ幾らでも長くなりそうなところを、この長さで落とすか。背景設定の惜しげもない使い捨てには参った。つーかここまできて新しい話だの設定だの登場人物だの出すか普通。うへえ。しかし考えてみれば、最初にでてきた主要人物はほとんど変動なく最後まで出てるのな。途中脱落者はひとりか精々ふたり。マリオが出てきたときには俺も驚いたさ……。
一番気になったのは、ミズーとアイネストとの対比とか、ウルペンとの対比とか。後者については「超のつくシスコンの義妹と対決する超のつく愛妻家の義兄」って書くとなんだか違う世界の出来事ですね。そういえば姉と妹で既にコントラストだったか。「タッチング・ディスタンス」を二種類に訳してみた。
契約の謎も皆目見当もつかない内容だったのが、聞いてみればさてもなるほど。大仰な内容だと思ってたのが実はささやかな謎でしかなかったというのは、作者の引きの腕だよなあ。最近、職業作家としての秋田の有能っぷりに感嘆することが多い。

で、今更のように、赤毛赤マントハートオブレッドライオンのヒロインの名字が「ビアンカ」ということに何か意味があるのかと首を捻ってみる。

うわー、何か思っていたよりはるかにまずい文章になったのは何故だ。書くのが久しぶりだからか。しかも内容も取り留めなさすぎ。ちょっと修行して出直してきます。
あるいは「非・正気DEフライトあくろばてぃっく」な感じ(我ながらニュアンスでしか喋ってない頭の悪さ)。
『罪と罰(上下)』『老人と海』『ナイン・ストーリーズ』購入。三島はどうした、とか言わないように。『エンジェルハウリング』の新刊が見つからない。
まーなんつーかぶっちゃけ実家の母が貧血で入院とか言われると例え緊急度がDくらいでもテンパって外国文学の苦手どころでも買ってしまうようなこともあるのだろうなあ。
で、こういうときに限ってというタイミングなので家主は出張中だー!GBアドバンスの電池が切れたー!

俺の神経も切れたー!

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