石田衣良、講談社文庫。
『波のうえの魔術師』と『赤・黒』で石田衣良にすっかり参ったクチなので、帯の煽り文句「予想もできない反撃!」に非常にわくわくしながら読んだのですが、できはイマイチでした。連作というほど各短編の間に共通しているものがあるわけでもない。実に微妙。面白くなかったなんてことはないのですが、今までにもっと面白いものを見せてもらったことがある読者としては、これは不満の残るでき。
「ラストライド」
「ラストジョブ」
「ラストコール」
「ラストホーム」
「ラストドロー」
「ラストシュート」
「ラストバトル」
7編収録の短編集。現実の容赦ない重さ(主としてお金)に押しつぶされかけた7人の、最後の選択肢は反撃だった。
「ライド」のあの「ぶったぎるように終わる」幕切れに呆然とした人と仲良くなれそうです。どこがラスト?何がラスト?!むしろここからが勝負どころじゃない。
綺麗にまとまって面白かったのは「ラストドロー」くらいしかしら。短編の長さにぴったりのサイズの物語が小気味良かった。
看板持ちが勝手に命を賭けられて、ロシアンルーレットをする嵌めになってしまう「ラストバトル」も面白かったけれど、博打で人生を勝負するとなると、どうしても『赤・黒』の熱狂的興奮を思い出して比較してしまうので、単純に良かった面白かったという気持ちよりも、もう少しなんとかして欲しいという気持ちが先に立ってしまいます。
読み終わって借金地獄と売春の登場率の高さにげんなりしました。なんだかそればっかり読まされているような気になってきます。ハードボイルドっぽい場面が藤原伊織を彷彿とさせますが、正直向いてないんじゃないでしょうか。あとがきもどことなく気持ち悪い語り口が引っかかる。
最近石田衣良は面白かった/面白くないのぎりぎりの境界上をふらふらするような本ばかりなので、そろそろデフォルト買い作家リストから外れそうです。『骨音』の時からよくない感じがしていたのですが、そろそろ気のせいとも言っていられない。『電子の星』が積んであるのでそれを読んで決めようかと思います。
不満にまみれた感想になっちゃったわー。
『波のうえの魔術師』と『赤・黒』で石田衣良にすっかり参ったクチなので、帯の煽り文句「予想もできない反撃!」に非常にわくわくしながら読んだのですが、できはイマイチでした。連作というほど各短編の間に共通しているものがあるわけでもない。実に微妙。面白くなかったなんてことはないのですが、今までにもっと面白いものを見せてもらったことがある読者としては、これは不満の残るでき。
「ラストライド」
「ラストジョブ」
「ラストコール」
「ラストホーム」
「ラストドロー」
「ラストシュート」
「ラストバトル」
7編収録の短編集。現実の容赦ない重さ(主としてお金)に押しつぶされかけた7人の、最後の選択肢は反撃だった。
「ライド」のあの「ぶったぎるように終わる」幕切れに呆然とした人と仲良くなれそうです。どこがラスト?何がラスト?!むしろここからが勝負どころじゃない。
綺麗にまとまって面白かったのは「ラストドロー」くらいしかしら。短編の長さにぴったりのサイズの物語が小気味良かった。
看板持ちが勝手に命を賭けられて、ロシアンルーレットをする嵌めになってしまう「ラストバトル」も面白かったけれど、博打で人生を勝負するとなると、どうしても『赤・黒』の熱狂的興奮を思い出して比較してしまうので、単純に良かった面白かったという気持ちよりも、もう少しなんとかして欲しいという気持ちが先に立ってしまいます。
読み終わって借金地獄と売春の登場率の高さにげんなりしました。なんだかそればっかり読まされているような気になってきます。ハードボイルドっぽい場面が藤原伊織を彷彿とさせますが、正直向いてないんじゃないでしょうか。あとがきもどことなく気持ち悪い語り口が引っかかる。
最近石田衣良は面白かった/面白くないのぎりぎりの境界上をふらふらするような本ばかりなので、そろそろデフォルト買い作家リストから外れそうです。『骨音』の時からよくない感じがしていたのですが、そろそろ気のせいとも言っていられない。『電子の星』が積んであるのでそれを読んで決めようかと思います。
不満にまみれた感想になっちゃったわー。
『LAST』石田衣良、文春文庫
『幕末新選組』池波正太郎、文春文庫
『LAST』はこの間通販で入手し損ねたのが、本屋さんに行ったら平積みされていたので。『幕末〜』は持ってたかどうか怪しくて、悩んだ上に購入。
岩井志麻子の『黒焦げ美人』の表紙は全然田辺聖子じゃなかったです……。上巻発掘したので開いてみたら、そういえば桐壺の辺りはまるっとショートカットされてたのでした。開いた瞬間思い出さなくても。そしてうろ覚えで余計なことを書いて、かかなくてもいい恥を晒しています。そしてその昔挫折した円地文子の源氏物語が読みたくなりました。
『幕末新選組』池波正太郎、文春文庫
『LAST』はこの間通販で入手し損ねたのが、本屋さんに行ったら平積みされていたので。『幕末〜』は持ってたかどうか怪しくて、悩んだ上に購入。
岩井志麻子の『黒焦げ美人』の表紙は全然田辺聖子じゃなかったです……。上巻発掘したので開いてみたら、そういえば桐壺の辺りはまるっとショートカットされてたのでした。開いた瞬間思い出さなくても。そしてうろ覚えで余計なことを書いて、かかなくてもいい恥を晒しています。そしてその昔挫折した円地文子の源氏物語が読みたくなりました。
岩井志麻子、角川文庫。
「合意情死」と書いて振り仮名は「がふいしんぢゆう」、読みは「ごういしんじゅう」。
順調に岩井志麻子を消費しております。発刊ペースのせいでしょうか、楽しく読み捨てにしている印象があります。ということは、思っているより軽やかなのかしら岩井志麻子。
「華美粉飾」(はでづくり)
「合意情死」(がふいしんぢゆう)
「自動幻画」(シネマトグラフ)
「巡行線路」(みまはり)
「有情答語」(いろよきへんじ)
以上の短編5本を収録。背表紙の解説をそのままひっぱると、
「思惑と欲望がうずまく小市民たちの葛藤を、滑稽(ユーモア)と
恐怖の中に浮き彫りにした、名手による傑作短編集」
ということらしいです。
また「一言で言えば、これは<運命の女>の小説集(解説より)」でもあります。
とりあえずわたしが喜んだポイント。
まず美文。明治大正昭和初期までに漂う、あの懐かしくもロマン溢れる香り満ち満ちています。華やかで古びて埃と黴の匂いがする、薄暗い豪奢な部屋を照らす、闇を払拭し切れない電燈の光。「華美粉飾」が「はでづくり」ってしびれませんか?
登場する女達の美しさ。
「美人絵端書と称される、東京の名のある芸妓を写した端書よりも端整で清楚な横顔がそこにあるのだ。そしてそれは、異国の硝子細工の花瓶の如く繊細で脆く傷つきやすいものに映った」
「赤い革の靴を履いた足は、すっきりときれいに伸びていた。それは五十嵐の全身を踏み躙るように尖ってもいた」
「美しいが嘘つきなのだ」
短編ごとに違った性質の女が登場しますが、その全員が美しい。しかも幸福で陽の当たるような一面的な美しさではなく、妖しかったり不幸そうだったり、寂しそうだったりと幾重にも折りたたまれた襞を思わせる翳のある女が多い。
「巡行線路」が滑稽ながらもハッピーエンド、「有情答語」も主人公が改心するなど珍しい結末のものがあることに驚きました。絶望バッドエンドもいいけれど、こういった展開も素敵。
一番あっと思ったのは「華美粉飾」のテルでした。すばらしい。
『黒焦げ美人』から間を空けずに読んだせいか、世界が繋がっている感じがして不思議な気分です。しかし引き続いているようで違う世界だということがわかると、同じような登場人物がまたいるのかと、マンネリを感じなくもありません。いっそ全つなぎにしてくれたらそれはそれで違う楽しみが見出せるかも。
感想と関係のないメモ。
「思惑」が「おもわく」だということはわかっているのですが、どうしても「しわく」と読んでしまい、「塩飽」と変換されるたびにしまったなあと思うのですが一向になおりません。間違っているとわかっていても、そのままあえて使うのはよくない癖です。
「合意情死」と書いて振り仮名は「がふいしんぢゆう」、読みは「ごういしんじゅう」。
順調に岩井志麻子を消費しております。発刊ペースのせいでしょうか、楽しく読み捨てにしている印象があります。ということは、思っているより軽やかなのかしら岩井志麻子。
「華美粉飾」(はでづくり)
「合意情死」(がふいしんぢゆう)
「自動幻画」(シネマトグラフ)
「巡行線路」(みまはり)
「有情答語」(いろよきへんじ)
以上の短編5本を収録。背表紙の解説をそのままひっぱると、
「思惑と欲望がうずまく小市民たちの葛藤を、滑稽(ユーモア)と
恐怖の中に浮き彫りにした、名手による傑作短編集」
ということらしいです。
また「一言で言えば、これは<運命の女>の小説集(解説より)」でもあります。
とりあえずわたしが喜んだポイント。
まず美文。明治大正昭和初期までに漂う、あの懐かしくもロマン溢れる香り満ち満ちています。華やかで古びて埃と黴の匂いがする、薄暗い豪奢な部屋を照らす、闇を払拭し切れない電燈の光。「華美粉飾」が「はでづくり」ってしびれませんか?
登場する女達の美しさ。
「美人絵端書と称される、東京の名のある芸妓を写した端書よりも端整で清楚な横顔がそこにあるのだ。そしてそれは、異国の硝子細工の花瓶の如く繊細で脆く傷つきやすいものに映った」
「赤い革の靴を履いた足は、すっきりときれいに伸びていた。それは五十嵐の全身を踏み躙るように尖ってもいた」
「美しいが嘘つきなのだ」
短編ごとに違った性質の女が登場しますが、その全員が美しい。しかも幸福で陽の当たるような一面的な美しさではなく、妖しかったり不幸そうだったり、寂しそうだったりと幾重にも折りたたまれた襞を思わせる翳のある女が多い。
「巡行線路」が滑稽ながらもハッピーエンド、「有情答語」も主人公が改心するなど珍しい結末のものがあることに驚きました。絶望バッドエンドもいいけれど、こういった展開も素敵。
一番あっと思ったのは「華美粉飾」のテルでした。すばらしい。
『黒焦げ美人』から間を空けずに読んだせいか、世界が繋がっている感じがして不思議な気分です。しかし引き続いているようで違う世界だということがわかると、同じような登場人物がまたいるのかと、マンネリを感じなくもありません。いっそ全つなぎにしてくれたらそれはそれで違う楽しみが見出せるかも。
感想と関係のないメモ。
「思惑」が「おもわく」だということはわかっているのですが、どうしても「しわく」と読んでしまい、「塩飽」と変換されるたびにしまったなあと思うのですが一向になおりません。間違っているとわかっていても、そのままあえて使うのはよくない癖です。
『合意情死』
『ラヴクラフト全集3』『ラヴクラフト全集4』
『電子の星 池袋ウェストゲートパーク4』
同時に注文した石田衣良の『LAST』が出版社に在庫問い合わせの上キャンセルされてがっくりです。もうちょっとしっかりしてくださいよ7yさん!
『ラヴクラフト全集3』『ラヴクラフト全集4』
『電子の星 池袋ウェストゲートパーク4』
同時に注文した石田衣良の『LAST』が出版社に在庫問い合わせの上キャンセルされてがっくりです。もうちょっとしっかりしてくださいよ7yさん!
横溝正史、角川文庫。
「悪魔の降誕祭」
「女怪」
「霧の山荘」
金田一耕介の活躍する三編を収録。
表題作「悪魔の降誕祭」はなんと第一の殺人が金田一の事務所で行われています。数々の事件を解決してきた探偵の事務所で殺人といういわく言い難い状況を、登場人物たちが「なにかしら、滑稽千万な間違いのように」思っているのがまたおかしい。読み手がきっと同じ気持ちになるのを狙って書いていると思うと、さすが横溝正史と大御所の貫禄を感じます。これは金田一耕介という積み重ねのなせるわざなのですね。
身近で行われる殺人の予感に怯え金田一の事務所訪れた女性が、事務所の中で殺される。原因は青酸カリ、彼女は確かに中から部屋の鍵を掛けていた。それが外れいている。そして今度はパーティーの真っ最中、脱衣所と居間を繋ぐ僅かな小廊下の中で男が刺殺された。誰もその中へ入っていって男を刺したものはいない。居合わせた人間の証言に齟齬なし間隙なし。では誰がいつどうやって犯行に及んだのか?
……このパターンで犯人が××××以外にあるのでしょうか。いわゆる状況密室、仕掛けは鉄壁、でも犯人はあんまりに予想通り過ぎます。動機のすさまじさには意表を突かれましたが、そこで犯人に××××などの「いかにも犯人らしい」特徴を与えずにもっと表向き「らしくない」設定にして欲しかったです。横溝の小説に出てくる犯罪者には大抵それらしき兆候や醜さがあり、わたしはどうしてもそこにある種の、人間に対する夢みたいなもの見てしまうのですが、穿ちすぎというものかしら。
「女怪」は珍しく金田一耕介が熱烈に思いを寄せる女性が登場。金田一も恋愛するのねと微笑ましく思うよりも先に、何かしら不安を感じさせる金田一の様子が怖い。事件の核となる謎にはさすがにあっと言わせられましたが、虹子さんそれは幾らなんでも間抜けじゃないですか。いや、もっと間抜けなのは虹子さんの秘密を掴んでおきながら××××で××××された行者跡部ですね。自業自得かも。
語り手の私、金田一呼ぶところの先生と金田一が、退屈を楽しめるほど気の合う友だちとして描かれているのですが、この語り手イコール横溝正史なのだと知った上で読むと、作中の探偵と現実の作家の幸せな関係に思わず頬も緩むというものです。
犯人が見当もつかなかったのが「霧の山荘」。霧の中別荘へたどり着くと、閉め切った建物の中で人が死んでいる。慌てて人を呼びに行って戻って来てみると、中で人が死んでいるどころか、死んでいたのと違う人間がごく普通に暮らしている。霧の中別荘まで金田一を案内し、一緒に死体を目撃した男も忽然と姿を消した。
これが時代を経て洗練されると『狂××××』の「脳××××」になるのですね!と一人エキサイト。殺人は確かに起こっているのに、現場には殺人の痕跡など何一つ残らない。おそらく似たような別の場所に案内されたのでは、というところまでは辛うじてわかりますが、それ以上はまったくの五里霧中。××××はともかく××××は完全にノーマークでした。そういえば最近の犯人は足し算引き算のように、殺人を計算して行うタイプが結構いますね。
解説で「金田一耕介」というキャラクターの積み重ねと成立について触れています。いつのまに緑ヶ丘荘に引っ越したの?と不思議に思っていたら、住居の変遷までちゃんと押さえてあって助かりました。松月の離れの次に移ったのですね。知らなかった。
「悪魔の降誕祭」
「女怪」
「霧の山荘」
金田一耕介の活躍する三編を収録。
表題作「悪魔の降誕祭」はなんと第一の殺人が金田一の事務所で行われています。数々の事件を解決してきた探偵の事務所で殺人といういわく言い難い状況を、登場人物たちが「なにかしら、滑稽千万な間違いのように」思っているのがまたおかしい。読み手がきっと同じ気持ちになるのを狙って書いていると思うと、さすが横溝正史と大御所の貫禄を感じます。これは金田一耕介という積み重ねのなせるわざなのですね。
身近で行われる殺人の予感に怯え金田一の事務所訪れた女性が、事務所の中で殺される。原因は青酸カリ、彼女は確かに中から部屋の鍵を掛けていた。それが外れいている。そして今度はパーティーの真っ最中、脱衣所と居間を繋ぐ僅かな小廊下の中で男が刺殺された。誰もその中へ入っていって男を刺したものはいない。居合わせた人間の証言に齟齬なし間隙なし。では誰がいつどうやって犯行に及んだのか?
……このパターンで犯人が××××以外にあるのでしょうか。いわゆる状況密室、仕掛けは鉄壁、でも犯人はあんまりに予想通り過ぎます。動機のすさまじさには意表を突かれましたが、そこで犯人に××××などの「いかにも犯人らしい」特徴を与えずにもっと表向き「らしくない」設定にして欲しかったです。横溝の小説に出てくる犯罪者には大抵それらしき兆候や醜さがあり、わたしはどうしてもそこにある種の、人間に対する夢みたいなもの見てしまうのですが、穿ちすぎというものかしら。
「女怪」は珍しく金田一耕介が熱烈に思いを寄せる女性が登場。金田一も恋愛するのねと微笑ましく思うよりも先に、何かしら不安を感じさせる金田一の様子が怖い。事件の核となる謎にはさすがにあっと言わせられましたが、虹子さんそれは幾らなんでも間抜けじゃないですか。いや、もっと間抜けなのは虹子さんの秘密を掴んでおきながら××××で××××された行者跡部ですね。自業自得かも。
語り手の私、金田一呼ぶところの先生と金田一が、退屈を楽しめるほど気の合う友だちとして描かれているのですが、この語り手イコール横溝正史なのだと知った上で読むと、作中の探偵と現実の作家の幸せな関係に思わず頬も緩むというものです。
犯人が見当もつかなかったのが「霧の山荘」。霧の中別荘へたどり着くと、閉め切った建物の中で人が死んでいる。慌てて人を呼びに行って戻って来てみると、中で人が死んでいるどころか、死んでいたのと違う人間がごく普通に暮らしている。霧の中別荘まで金田一を案内し、一緒に死体を目撃した男も忽然と姿を消した。
これが時代を経て洗練されると『狂××××』の「脳××××」になるのですね!と一人エキサイト。殺人は確かに起こっているのに、現場には殺人の痕跡など何一つ残らない。おそらく似たような別の場所に案内されたのでは、というところまでは辛うじてわかりますが、それ以上はまったくの五里霧中。××××はともかく××××は完全にノーマークでした。そういえば最近の犯人は足し算引き算のように、殺人を計算して行うタイプが結構いますね。
解説で「金田一耕介」というキャラクターの積み重ねと成立について触れています。いつのまに緑ヶ丘荘に引っ越したの?と不思議に思っていたら、住居の変遷までちゃんと押さえてあって助かりました。松月の離れの次に移ったのですね。知らなかった。
真堂樹、コバルト文庫。
四龍島シリーズ番外編。もはや過去のわたしは現在のわたしの手の届かぬ彼方に押し流されていってしまっていたことを、今更のように知りました。時の流れに抗うすべはないのか……。
主人公、美形。花のような、どころか「花」だ花だと登場人物全てから愛され、四つの市に別れた島のアイドル。心は優しく喧嘩は強く、作中で一番女装率の高い男。
その主人、美形。宝石宝石と立っているだけで美貌を誉めそやされる街の主。根性曲がりで口からは皮肉しか出てこない、主人公命の恐ろしい執着心の持ち主。性格が極悪。
そんな登場人物がメインのこの本を、普通に面白いと物語に一喜一憂していた自分が信じられません。我に返ってあまりの狂乱の痕跡に眩暈が。なんだこの女装率の高さ、主人公男なのに花?って何さ、これがやおい学園(学園じゃないけど)という奴か!などなどなど。あとがきの作者のテンションの高さがそらおそろしい。
25冊+番外編で、いい加減ネタも尽きたのか、事件が起こって解決するパターンがマンネリになっているのが残念でした。イラストの人も、一時期の美しさを失ってしまって、99ページの絵に涙が滂沱と流れ落ち。でも前巻持ってないみたいなので買うことにします。
衝撃がさめてから改めてなぜに自分はこの作者が好きだったのかとよくよく本文を検討してみれば、なるほど美文の出現率が高い。言い切りの形なんかが独特で、使われている単語の選びようが結構耽美。これでたとえば皆川博子のような本を出したら、間違いなく店頭へ発売日前日に走っちゃいます。
女性陣が素晴らしく美人であることと、近親相姦の多発が自分の好みに合っていたことも再確認して、己の駄目人間ぶりに落ち込みました。
四龍島シリーズ番外編。もはや過去のわたしは現在のわたしの手の届かぬ彼方に押し流されていってしまっていたことを、今更のように知りました。時の流れに抗うすべはないのか……。
主人公、美形。花のような、どころか「花」だ花だと登場人物全てから愛され、四つの市に別れた島のアイドル。心は優しく喧嘩は強く、作中で一番女装率の高い男。
その主人、美形。宝石宝石と立っているだけで美貌を誉めそやされる街の主。根性曲がりで口からは皮肉しか出てこない、主人公命の恐ろしい執着心の持ち主。性格が極悪。
そんな登場人物がメインのこの本を、普通に面白いと物語に一喜一憂していた自分が信じられません。我に返ってあまりの狂乱の痕跡に眩暈が。なんだこの女装率の高さ、主人公男なのに花?って何さ、これがやおい学園(学園じゃないけど)という奴か!などなどなど。あとがきの作者のテンションの高さがそらおそろしい。
25冊+番外編で、いい加減ネタも尽きたのか、事件が起こって解決するパターンがマンネリになっているのが残念でした。イラストの人も、一時期の美しさを失ってしまって、99ページの絵に涙が滂沱と流れ落ち。でも前巻持ってないみたいなので買うことにします。
衝撃がさめてから改めてなぜに自分はこの作者が好きだったのかとよくよく本文を検討してみれば、なるほど美文の出現率が高い。言い切りの形なんかが独特で、使われている単語の選びようが結構耽美。これでたとえば皆川博子のような本を出したら、間違いなく店頭へ発売日前日に走っちゃいます。
女性陣が素晴らしく美人であることと、近親相姦の多発が自分の好みに合っていたことも再確認して、己の駄目人間ぶりに落ち込みました。
『宝はマのつく土の中!』
2005年9月2日 未分類喬林知、角川ビーンズ文庫。
土の中はともかく、宝なんて本文中のどこに出てきたというのか……(笑)。まだまだ聖砂国でサラ様に鼻っ面引きずりまわされる一行。前巻ラストで衝撃の登場を果たしたヘイゼル・グレイブスと合流してみましたよ、というところから物語は開始。
衝撃といえば今回の××××が××××ですが、次男のときの肩透かし展開を考えると、必ずしも××××したと思えず、素直に受け取っていいものかどうか非常に悩みます。最終決戦に臨む前に「これが終わったら」なんて言い出す、あるいは突然改心する、戦争中に子供の写真を見せるなどの「死亡フラグ」は多々あれど、今回のアレは死亡確定ルートなのでしょうか……ときどき作者がやけに迂遠な回避を行うのがひっかかる派。
地球眼鏡組は働けよもっと!と余りのぐだぐだぶりに評価が下がっていましたが、ようやく動き始めた兄頑張れ。2冊もかけて何してたんでしょうか眼鏡組。錦鯉はなんの役に立っているのか……。ボブは村田ほど自分のことではないという立ち位置がクール。
そしてかなり長い付き合いのサラ様。いまだにキャラがつかめません。根性曲がってる割にやることが純情なので、果たしてそれが計算尽くで演出された無邪気なのか、それとも本気で根性曲がりと純情が同居しているのか判断に苦しみます。ゾンビいやー!の慌てぶりからすると後者っぽいのですが……。
サラ様の母君はナイスブラックですね。でも、あれだけデンジャーデンジャーな地下迷宮に力が届かないとなると、逆に地下迷宮になじんでるサラのほうが実は危険な属性持ちじゃないのかしらという気になってきます。ゾンビ使ってるのに真っ当な力だったりしたら斬新過ぎる。指輪が位置特定に使用されてるとかそういうことはないのかしら。ものすごい言葉彫ってありましたけど、サラ様なにゆえにそれをプレゼント?単なるいじめっ子?
そろそろ次男に愛想が尽きそうです。段々キャラ変わってるし。外見相応から某名前を出すことすらはばかられる人にそっくりになってきました。次男よりグリ江ちゃんぷりーず。
土の中はともかく、宝なんて本文中のどこに出てきたというのか……(笑)。まだまだ聖砂国でサラ様に鼻っ面引きずりまわされる一行。前巻ラストで衝撃の登場を果たしたヘイゼル・グレイブスと合流してみましたよ、というところから物語は開始。
衝撃といえば今回の××××が××××ですが、次男のときの肩透かし展開を考えると、必ずしも××××したと思えず、素直に受け取っていいものかどうか非常に悩みます。最終決戦に臨む前に「これが終わったら」なんて言い出す、あるいは突然改心する、戦争中に子供の写真を見せるなどの「死亡フラグ」は多々あれど、今回のアレは死亡確定ルートなのでしょうか……ときどき作者がやけに迂遠な回避を行うのがひっかかる派。
地球眼鏡組は働けよもっと!と余りのぐだぐだぶりに評価が下がっていましたが、ようやく動き始めた兄頑張れ。2冊もかけて何してたんでしょうか眼鏡組。錦鯉はなんの役に立っているのか……。ボブは村田ほど自分のことではないという立ち位置がクール。
そしてかなり長い付き合いのサラ様。いまだにキャラがつかめません。根性曲がってる割にやることが純情なので、果たしてそれが計算尽くで演出された無邪気なのか、それとも本気で根性曲がりと純情が同居しているのか判断に苦しみます。ゾンビいやー!の慌てぶりからすると後者っぽいのですが……。
サラ様の母君はナイスブラックですね。でも、あれだけデンジャーデンジャーな地下迷宮に力が届かないとなると、逆に地下迷宮になじんでるサラのほうが実は危険な属性持ちじゃないのかしらという気になってきます。ゾンビ使ってるのに真っ当な力だったりしたら斬新過ぎる。指輪が位置特定に使用されてるとかそういうことはないのかしら。ものすごい言葉彫ってありましたけど、サラ様なにゆえにそれをプレゼント?単なるいじめっ子?
そろそろ次男に愛想が尽きそうです。段々キャラ変わってるし。外見相応から某名前を出すことすらはばかられる人にそっくりになってきました。次男よりグリ江ちゃんぷりーず。
『花龍神話』真堂樹、集英社コバルト文庫。
『宝はマのつく土の中!』喬林知、角川ビーンズ文庫。
怪しいラインナップになりました。前者はまだ続いていたのかと驚愕することしきりの番外編4冊目。3冊目を持っているのかしらわたし……。
『家族狩り』の文庫版が並んでいたので、あら、と手に取ったらなんと5冊分冊。そういえば『屍鬼』もこれくらいだったっけー、となにげなく解説を見たら、ハードカバー版を構想に書き下ろしでした。すごいや。
『宝はマのつく土の中!』喬林知、角川ビーンズ文庫。
怪しいラインナップになりました。前者はまだ続いていたのかと驚愕することしきりの番外編4冊目。3冊目を持っているのかしらわたし……。
『家族狩り』の文庫版が並んでいたので、あら、と手に取ったらなんと5冊分冊。そういえば『屍鬼』もこれくらいだったっけー、となにげなく解説を見たら、ハードカバー版を構想に書き下ろしでした。すごいや。
天童荒太、新潮ミステリー倶楽部。
95年に初版です。ハードカバーで二段組み、500ページ超。
「家族」の崩壊と再生がメインテーマで殺人事件多発のミステリ。カバー折り返しに、残酷描写が売りですよというようなことが書いてあって、内容もそれはそれは流血拷問すぷらったー。
しかし、この残酷描写に意味はあるのですか?
中学生くらいにありがちな「残酷極める自分カッコいい」という自己陶酔系の匂いがぷんぷんします。におうぜー以下略と、ジョジョっぽく煽りたいくらいだ。登場人物も、全員が「不幸」を基本装備。装備って言うか不幸属性。やけにマイナス方向に過剰で、うっとうしいことこの上なし。どこの中学生ですかおまえら。作者の意図はわかりませんが、登場人物を酷い目にあわせることによって、登場人物に対する思い入れで物語を書いていないよ、キャラ萌えなしで駒として突き放してますよ、という変に歪んだ自己主張を感じます。アンチと信者が偏執という一点において同質であるのと同じに、不幸属性を付与することによっても思い入れの強さがあらわれてるんだから、やっぱり自己陶酔系の感触。
なんでわざわざいらんスプラッタで読み手の範囲をせばめて、作品を安く売っちゃうかなあと不思議なんですが、物語中盤を過ぎると登場人物がころっと方向転換しています。無責任で情けない美術教師が、ちょっととろくさい好青年に大変身するわ、感じの悪い児童センターの暴走職員が職務に忠実な真面目おねえさまになっているわ、枚挙に暇がないですね!しかも、方向転換した辺りから物語ののりが絶好調。面白い。会話も軽やかに登場人物たちに親しみが加わり、不良刑事の過去のエピソードをちらっと見せる検事とのやりとりは非常に楽しいハードボイルド。最初からこの調子で淡々とやれば高村薫だったのになあ。暴力で突き抜けてる作家ってもう他にいるんだから何故に暴力描写?と首を傾げました。
そして一番の見せ場はシロアリ駆除で家庭相談の大野さん。家庭の悩みを相談しに行った教室で、拘束衣のようなものを着た宗教くさい発言をする男が出てきたら、普通ドン引きだと思うんですよ。参加者誰も違和感を感じていないうえに「まったく素晴らしい」と信頼感溢れる空気が教室に充満。
ありえない。
その後の描写で大野(夫)拘束衣の下が全裸であったことが発覚、思わず「もりあがってまいりました」という台詞が口をついて家主に笑われました。この辺りから読むスピードがアップした自分はとっても正直者だと思います。だって笑いが止まらなかったのですもの。笑いだけでなく、重苦しい前半にくらべて、物語が快調だったことももちろんあります。ありますって。ありますってば。
罵倒からはじまって、笑いものにしているような感想になってしまいましたが、評価としてはそこまで悪くはないかなーというところです。わざと技巧を凝らしたような印象の前半が終わって、登場人物が親しみを感じさせるような姿を見せ始めたところから、面白さ加速で一気に読めました。あの厚さを1日ですよ。すごい爆発力。「家族の再生と崩壊」というテーマがちゃんと最後まで書ききられているし。ただ、物語に登場した主要な家族は新たな形での再生がかなったけれど、あれだけ人死にが出る事件を介してはじめて再生が可能だったのであり、なんの事件も起こらず平凡な日々を積み重ねていく大多数の家族にとっては、再生は遠い遠い夢物語なのではないかと、「特別」でしかない物語の力弱さを感じます。
とすると「再生」そのものではなく、再生の可能性、いわゆる希望を提示する物語として見るのが一番妥当なのかしら。ラストの崩壊に巻き込まれた崩壊は、犯人の復活の可能性も示唆しているわけで、遠い希望を抱いて絶え間ない努力と挫折とをあきらめずに繰り返す、それこそが「真実の愛」なのではないか、と美しい結論にたどりつきましたが自分でも安易だと思います。
精神や心理に関する描写が、どこかから体験談を引っ張ってきたような棒読み具合で、こなれていない、借り物のような印象を受けるのは、95年という時代のせいなのでしょうか。そう言われればそうかもしれないなあ、と、95年の自分に照らし合わせて納得してみる。
95年に初版です。ハードカバーで二段組み、500ページ超。
「家族」の崩壊と再生がメインテーマで殺人事件多発のミステリ。カバー折り返しに、残酷描写が売りですよというようなことが書いてあって、内容もそれはそれは流血拷問すぷらったー。
しかし、この残酷描写に意味はあるのですか?
中学生くらいにありがちな「残酷極める自分カッコいい」という自己陶酔系の匂いがぷんぷんします。におうぜー以下略と、ジョジョっぽく煽りたいくらいだ。登場人物も、全員が「不幸」を基本装備。装備って言うか不幸属性。やけにマイナス方向に過剰で、うっとうしいことこの上なし。どこの中学生ですかおまえら。作者の意図はわかりませんが、登場人物を酷い目にあわせることによって、登場人物に対する思い入れで物語を書いていないよ、キャラ萌えなしで駒として突き放してますよ、という変に歪んだ自己主張を感じます。アンチと信者が偏執という一点において同質であるのと同じに、不幸属性を付与することによっても思い入れの強さがあらわれてるんだから、やっぱり自己陶酔系の感触。
なんでわざわざいらんスプラッタで読み手の範囲をせばめて、作品を安く売っちゃうかなあと不思議なんですが、物語中盤を過ぎると登場人物がころっと方向転換しています。無責任で情けない美術教師が、ちょっととろくさい好青年に大変身するわ、感じの悪い児童センターの暴走職員が職務に忠実な真面目おねえさまになっているわ、枚挙に暇がないですね!しかも、方向転換した辺りから物語ののりが絶好調。面白い。会話も軽やかに登場人物たちに親しみが加わり、不良刑事の過去のエピソードをちらっと見せる検事とのやりとりは非常に楽しいハードボイルド。最初からこの調子で淡々とやれば高村薫だったのになあ。暴力で突き抜けてる作家ってもう他にいるんだから何故に暴力描写?と首を傾げました。
そして一番の見せ場はシロアリ駆除で家庭相談の大野さん。家庭の悩みを相談しに行った教室で、拘束衣のようなものを着た宗教くさい発言をする男が出てきたら、普通ドン引きだと思うんですよ。参加者誰も違和感を感じていないうえに「まったく素晴らしい」と信頼感溢れる空気が教室に充満。
ありえない。
その後の描写で大野(夫)拘束衣の下が全裸であったことが発覚、思わず「もりあがってまいりました」という台詞が口をついて家主に笑われました。この辺りから読むスピードがアップした自分はとっても正直者だと思います。だって笑いが止まらなかったのですもの。笑いだけでなく、重苦しい前半にくらべて、物語が快調だったことももちろんあります。ありますって。ありますってば。
罵倒からはじまって、笑いものにしているような感想になってしまいましたが、評価としてはそこまで悪くはないかなーというところです。わざと技巧を凝らしたような印象の前半が終わって、登場人物が親しみを感じさせるような姿を見せ始めたところから、面白さ加速で一気に読めました。あの厚さを1日ですよ。すごい爆発力。「家族の再生と崩壊」というテーマがちゃんと最後まで書ききられているし。ただ、物語に登場した主要な家族は新たな形での再生がかなったけれど、あれだけ人死にが出る事件を介してはじめて再生が可能だったのであり、なんの事件も起こらず平凡な日々を積み重ねていく大多数の家族にとっては、再生は遠い遠い夢物語なのではないかと、「特別」でしかない物語の力弱さを感じます。
とすると「再生」そのものではなく、再生の可能性、いわゆる希望を提示する物語として見るのが一番妥当なのかしら。ラストの崩壊に巻き込まれた崩壊は、犯人の復活の可能性も示唆しているわけで、遠い希望を抱いて絶え間ない努力と挫折とをあきらめずに繰り返す、それこそが「真実の愛」なのではないか、と美しい結論にたどりつきましたが自分でも安易だと思います。
精神や心理に関する描写が、どこかから体験談を引っ張ってきたような棒読み具合で、こなれていない、借り物のような印象を受けるのは、95年という時代のせいなのでしょうか。そう言われればそうかもしれないなあ、と、95年の自分に照らし合わせて納得してみる。
京極夏彦、ぴあ。
「きょうごくばなしだいほんしゅう」と読みます。「りくぎしゅう」だと思ってました……。それにしても新作古典って変な言葉ですね。
古典芸能のために京極夏彦が書いた新作台本を一冊にまとめたもの。オリジナル台本と上演台本、茂山狂言に関するインタビューそのほかを収録。
狂言「豆腐小僧」
狂言「狐狗狸噺」
狂言「新・死に神」
落語「死に神remix」
特別収録で「講談巷説百物語」が入ってます。
がちがちの正統派ではなく、時事ネタも取り込んだ新発想の台本で、さっくり読めます。といってもこれは本来読むものじゃなくて舞台を見て楽しむものなんでしょうね……。落語「死神」を春風亭小朝がやったなんてそんな殺生な!当時学生の身分しかも地方都市在住だったわたしには涙を飲むしかなかったわけで、いいなーいいなー!(暴れてないで今後のために調べてきます)。
「豆腐小僧」を読んだ覚えがあるなと思っていたら、『豆腐』の豆本でしたそういえば。通称薬味。あんまり小さいので読みにくくて途中放棄していたのでした。こんなオチだったのか……。それよりも、狂言にまでシステム的な話を持ち込むなんて、ということのほうが気になって、わたしもしかして笑い所ではないところで笑っている?
歴史文化に関する知識がさっぱりないもので、狂言と落語がどんな関係にあるのかわかりませんが「同じネタは3回までだ!」と突っ込みたくなる繰り返しネタなどの細かいポイントはようく似ていますね。落語「死神」を二人でやったらコントなんだろうなあ。それにしても、全編にどすこいの香り漂うこの語り口。作者不詳でも一発でわかりますねきっと。
個人的にはあんまり時事ネタ取り込むのは好きじゃないんですが、生きている芸能としては時事ネタあって当然なんですよね。古くなったら時事ネタの部分はどんどん書き換えられていくわけで。いっときのブームでなく「生きている伝統芸能」の復活目指して頑張って欲しいものです。先に小説書いてから。『邪魅』年内は信じていいんですよね?今秋って公式アナウンス出たみたいですけど。
毎回装丁が凝ってて楽しい、新刊を買う喜び。表紙のこのつやっとして盛り上がってる部分はなんと言うのでしょう。狂言台本のページ左下にぱらぱら漫画みたいな小さいイラストがあって、やけにかわいらしいです。
全体を通して一番突っ込みたかったのは、「なんで小豆洗いのあのひとが百介って名乗ってるんですか?」ってところでしょうか。又市でしょ又市!なんで先生名乗ってるのこの小股潜りは!思わずエキサイトしちゃいました。だって「百介」であのオチはひどいですよ……。又市さんなら酷くないかというとそんなことはないんですが。脳内でちゃんといつもの面子に変換されてた自分えらい。
「きょうごくばなしだいほんしゅう」と読みます。「りくぎしゅう」だと思ってました……。それにしても新作古典って変な言葉ですね。
古典芸能のために京極夏彦が書いた新作台本を一冊にまとめたもの。オリジナル台本と上演台本、茂山狂言に関するインタビューそのほかを収録。
狂言「豆腐小僧」
狂言「狐狗狸噺」
狂言「新・死に神」
落語「死に神remix」
特別収録で「講談巷説百物語」が入ってます。
がちがちの正統派ではなく、時事ネタも取り込んだ新発想の台本で、さっくり読めます。といってもこれは本来読むものじゃなくて舞台を見て楽しむものなんでしょうね……。落語「死神」を春風亭小朝がやったなんてそんな殺生な!当時学生の身分しかも地方都市在住だったわたしには涙を飲むしかなかったわけで、いいなーいいなー!(暴れてないで今後のために調べてきます)。
「豆腐小僧」を読んだ覚えがあるなと思っていたら、『豆腐』の豆本でしたそういえば。通称薬味。あんまり小さいので読みにくくて途中放棄していたのでした。こんなオチだったのか……。それよりも、狂言にまでシステム的な話を持ち込むなんて、ということのほうが気になって、わたしもしかして笑い所ではないところで笑っている?
歴史文化に関する知識がさっぱりないもので、狂言と落語がどんな関係にあるのかわかりませんが「同じネタは3回までだ!」と突っ込みたくなる繰り返しネタなどの細かいポイントはようく似ていますね。落語「死神」を二人でやったらコントなんだろうなあ。それにしても、全編にどすこいの香り漂うこの語り口。作者不詳でも一発でわかりますねきっと。
個人的にはあんまり時事ネタ取り込むのは好きじゃないんですが、生きている芸能としては時事ネタあって当然なんですよね。古くなったら時事ネタの部分はどんどん書き換えられていくわけで。いっときのブームでなく「生きている伝統芸能」の復活目指して頑張って欲しいものです。先に小説書いてから。『邪魅』年内は信じていいんですよね?今秋って公式アナウンス出たみたいですけど。
毎回装丁が凝ってて楽しい、新刊を買う喜び。表紙のこのつやっとして盛り上がってる部分はなんと言うのでしょう。狂言台本のページ左下にぱらぱら漫画みたいな小さいイラストがあって、やけにかわいらしいです。
全体を通して一番突っ込みたかったのは、「なんで小豆洗いのあのひとが百介って名乗ってるんですか?」ってところでしょうか。又市でしょ又市!なんで先生名乗ってるのこの小股潜りは!思わずエキサイトしちゃいました。だって「百介」であのオチはひどいですよ……。又市さんなら酷くないかというとそんなことはないんですが。脳内でちゃんといつもの面子に変換されてた自分えらい。
長野まゆみ、文春文庫。
文庫になったので購入。読むの3回目です。
主人公と北浦・賢彦の関係がごく普通の「友情」なのがいい、という趣旨の感想を見て、なるほどと膝を打ちました。確かに、少年と父親、少年と友人、少年と級友、少年と教師。どこを取っても少年とおおよそ一般的な関係者ですね。長野初心者にもすすめやすい一冊です。
岬は「友だち」ということの重さを知り、父親の過去に触れたけれど、結局北浦と賢彦の間はすれ違いのまま終わっているのですよね。合図の笛は確かに鳴ったのに、北浦に会えずに去っていく賢彦可哀相……。その昔にもすれ違ったのかどうなのかはわからないけれど、どうにも不憫です。
何度読んでも食べ物が美味しそうな本だ。父親の書く文章はどんな文章なんだろう。
文庫になったので購入。読むの3回目です。
主人公と北浦・賢彦の関係がごく普通の「友情」なのがいい、という趣旨の感想を見て、なるほどと膝を打ちました。確かに、少年と父親、少年と友人、少年と級友、少年と教師。どこを取っても少年とおおよそ一般的な関係者ですね。長野初心者にもすすめやすい一冊です。
岬は「友だち」ということの重さを知り、父親の過去に触れたけれど、結局北浦と賢彦の間はすれ違いのまま終わっているのですよね。合図の笛は確かに鳴ったのに、北浦に会えずに去っていく賢彦可哀相……。その昔にもすれ違ったのかどうなのかはわからないけれど、どうにも不憫です。
何度読んでも食べ物が美味しそうな本だ。父親の書く文章はどんな文章なんだろう。
『ビートのディシプリンSIDE4』
2005年8月23日 未分類上遠野浩平、電撃文庫。
ようやく完結。帯の「上遠野浩平の人気シリーズ、遂に完結!」という煽りを見て「はっ?ブギーポップ完結したの?」と思ってしまったうっかりさんは全国で3人以上いると思います。少なくとも一人、わたしがいます。内容は全然完結していなくて(目次をご覧下さい。ラストに「序章」の二文字が)、おそろしい引きで終わっています。
戦う少年の成長物語だと思っていたら、なんですかこの変則ボーイミーツガールは!甘酸っぱくも気はずかしいラブな空気にぎゃっと叫んで本を取り落としてしまいました。そういえばずっと朝子はビートを追っかけてたんだっけ……。いやほんと何このラブい空気。しかも最強ヒロインと手を携えたことによって最強コンビ誕生ですよ。なんかもうがんがれ超がんがれ。
相変わらずなんでもないことを「謎」あるいは「秘密」として引っ張る手法がものすごく目立ちます。カーメンとかスリーオブパーフェクトペアーとか。今回新しく登場したアルケーとヴァルプも、きっとわかってみればなんてことのない謎なんだろうなあ。その「わかってみればなんてことのない」謎を、てんで見当のつかないレベルにまで持ち上げて、登場人物を振り回す中心にする手際が素晴らしいですね。「カーメン」だけで4冊。登場人物と読者をひとつの言葉だけで4冊引きずり回す上遠野浩平おそるべし。
正直言うと、引っ張られすぎて前巻までの内容うろ覚えですけどね!ていうかカーメンがどういう概念なのかついに理解できなかった……。
フォルテッシモがリキティキを攻撃した瞬間、わたしの中ではぴきーん!という効果音とともにフォルテッシモ=きんぴか互換が起こり、そのあとずっとフォルテッシモがぱちんと指鳴らして空間断裂ゲートオブバ(ネタバレにつき略)。油断属性まで一緒だよこの二人!とラストまで笑いが止まりませんでした。こうなると特殊能力持ちのステータス表がすごく欲しい。「これだ誰だっけ?」という悩みを一挙に解決してくれそう。人物相関図くらいなら、辛うじて探せばありそうだけど……。登場人物が総勢どれくらいいるのか見当もつきません。
イマズマと直死は似たような能力なのに、日常生活での利便性がまったく違って、その差異が面白いのですが、これについて詳しく述べたら何か壮大な誤解を受けそうなのでやめておきます。既に手遅れのような気がしないでもない。
ようやく完結。帯の「上遠野浩平の人気シリーズ、遂に完結!」という煽りを見て「はっ?ブギーポップ完結したの?」と思ってしまったうっかりさんは全国で3人以上いると思います。少なくとも一人、わたしがいます。内容は全然完結していなくて(目次をご覧下さい。ラストに「序章」の二文字が)、おそろしい引きで終わっています。
戦う少年の成長物語だと思っていたら、なんですかこの変則ボーイミーツガールは!甘酸っぱくも気はずかしいラブな空気にぎゃっと叫んで本を取り落としてしまいました。そういえばずっと朝子はビートを追っかけてたんだっけ……。いやほんと何このラブい空気。しかも最強ヒロインと手を携えたことによって最強コンビ誕生ですよ。なんかもうがんがれ超がんがれ。
相変わらずなんでもないことを「謎」あるいは「秘密」として引っ張る手法がものすごく目立ちます。カーメンとかスリーオブパーフェクトペアーとか。今回新しく登場したアルケーとヴァルプも、きっとわかってみればなんてことのない謎なんだろうなあ。その「わかってみればなんてことのない」謎を、てんで見当のつかないレベルにまで持ち上げて、登場人物を振り回す中心にする手際が素晴らしいですね。「カーメン」だけで4冊。登場人物と読者をひとつの言葉だけで4冊引きずり回す上遠野浩平おそるべし。
正直言うと、引っ張られすぎて前巻までの内容うろ覚えですけどね!ていうかカーメンがどういう概念なのかついに理解できなかった……。
フォルテッシモがリキティキを攻撃した瞬間、わたしの中ではぴきーん!という効果音とともにフォルテッシモ=きんぴか互換が起こり、そのあとずっとフォルテッシモがぱちんと指鳴らして空間断裂ゲートオブバ(ネタバレにつき略)。油断属性まで一緒だよこの二人!とラストまで笑いが止まりませんでした。こうなると特殊能力持ちのステータス表がすごく欲しい。「これだ誰だっけ?」という悩みを一挙に解決してくれそう。人物相関図くらいなら、辛うじて探せばありそうだけど……。登場人物が総勢どれくらいいるのか見当もつきません。
イマズマと直死は似たような能力なのに、日常生活での利便性がまったく違って、その差異が面白いのですが、これについて詳しく述べたら何か壮大な誤解を受けそうなのでやめておきます。既に手遅れのような気がしないでもない。
『ラヴクラフト全集2』
2005年8月22日 未分類 コメント (1)H・P・ラヴクラフト、宇野利泰訳、創元推理文庫。
「クトゥルフの呼び声」
「エーリッヒ・ツァンの音楽」
「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」
古い事件に興味を持つ→その辺に血縁がいる→事件の調査を通して暗黒に肉薄→人生まっくら、のパターンが多いですね。遭遇すればすなわち病院行き。SAN値というシステムを考え出した人は本気で天才じゃないかと思う。
「永遠の憩いにやすらぐを見て、死せる者と呼ぶなかれ
果て知らぬ時ののちには、死もまた死ぬる定めなれば」
おおおおおお!これですよこれ!カッコいい……ラヴクラフトが幻想文学に分類されているのは、内容もさることながらこの美しい文体にもあるのではないか。調べたところによると原文は、
「That is not dead which can eternal lie.
And with strange aeons even death may die.」
ときめく。
個人的には「久遠に臥したるもの死する事なく、怪異なる永劫の内には死すら終焉を迎えん」が一番しっくりくるかなあ。わたしの脳内では「死すら終焉を迎えん」よりは「死すら死に絶えん」のほうが語呂がいいんじゃないかしら、など好きな訳を継ぎ合わせた脳内フレーズができあがっております。
1巻と2巻で訳者が違うせいか、2巻は文章がやや地味な感じです。1巻はゴシックの荘重華麗さをこれでもかと惜しみなく見せてもらいました。尖鋭で華やか。一文が長くてだらだら読んでいると意味が取れなかったりします。2巻は地味な分読みやすいですが、それでも昔栄えた港、貨幣の名前をつけられた通り、立ち並ぶ商店の掲げた看板の塗り跡。光の落ちてくる街のたたずまいの描写など、稀に見る美文です。訳の差異を確認しようと思って1巻と2巻を並べて開いたら、なぜかフォントが違っていました。2巻のほうが文字が小さくて読みにくいです。統一しなかった理由がわからない。
「エーリッヒ・ツァンの音楽」は昔々に読んだことがあります。小学生くらいの頃じゃないかしら。アンソロジー形式の本で読んだのですが、一緒に収録されている前後の話より格段に難しく、知らない言葉が沢山出てきたので、これは理解できないとあきらめた記憶が今もはっきり残っています(多分子供向けの世界恐怖文学なんとかという類の選集で読んだのではないかと。レ・ファニュの「白い手」の話と、ポーの「黒猫」と、あとは知らない著者の「緑の目の白い猫」が出てくる話が入ってるシリーズでした。なつかしい、そして気になる。正式なタイトルが解ればもう一度読みたいシリーズです)。大人になって読み直してみた感想は、地図で探した見たけれどオーゼイユという街は見つけられなかった、というのが非常にいい。怪異との遭遇が回想として語られるのですが、なんとなくラヴクラフトらしくなくてロマンチックな気がするのです。昔映画で見たアリスや探偵を思い出します。あと、子供の頃の自分が間違いなく理解できていたことが再確認されて嬉しかったです。内容は理解していても、面白さがわからなかった辺りは未熟者。
「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」
何かに似ている、この語感はどこかで……としばらく悩んでからはたと気付きました。そこに積んであるそれ。『ジョジョの奇妙な冒険』と構造・成分ともに全く同じじゃないですか。聞いたような覚えがるのも当然でした。日本で映画が封切られたときのタイトルのセンスのなさが腹筋よじれるほどおかしいです。「怪談呪いの霊魂」って。怪談……。
読み手には何が起こっているのか一目瞭然、登場自分たちにとっては奇怪極まりない事件を書くのが非常にうまい。外から眺めただけでは理解不能な現象が少しずつ繋がって、これ以上ない明白な真相にたどりつくけれど、それは読み手にとってだけ明白で、登場人物にはほとんど明かされない真実ばかり。「それしかないこと」が認めることもできないほど忌まわしく恐怖に満ちていた場合、人は認識理解を拒否するのです。唯一の長編ということですが、他に長編がないのがとても惜しいできばえ。
「クトゥルフの呼び声」
「エーリッヒ・ツァンの音楽」
「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」
古い事件に興味を持つ→その辺に血縁がいる→事件の調査を通して暗黒に肉薄→人生まっくら、のパターンが多いですね。遭遇すればすなわち病院行き。SAN値というシステムを考え出した人は本気で天才じゃないかと思う。
「永遠の憩いにやすらぐを見て、死せる者と呼ぶなかれ
果て知らぬ時ののちには、死もまた死ぬる定めなれば」
おおおおおお!これですよこれ!カッコいい……ラヴクラフトが幻想文学に分類されているのは、内容もさることながらこの美しい文体にもあるのではないか。調べたところによると原文は、
「That is not dead which can eternal lie.
And with strange aeons even death may die.」
ときめく。
個人的には「久遠に臥したるもの死する事なく、怪異なる永劫の内には死すら終焉を迎えん」が一番しっくりくるかなあ。わたしの脳内では「死すら終焉を迎えん」よりは「死すら死に絶えん」のほうが語呂がいいんじゃないかしら、など好きな訳を継ぎ合わせた脳内フレーズができあがっております。
1巻と2巻で訳者が違うせいか、2巻は文章がやや地味な感じです。1巻はゴシックの荘重華麗さをこれでもかと惜しみなく見せてもらいました。尖鋭で華やか。一文が長くてだらだら読んでいると意味が取れなかったりします。2巻は地味な分読みやすいですが、それでも昔栄えた港、貨幣の名前をつけられた通り、立ち並ぶ商店の掲げた看板の塗り跡。光の落ちてくる街のたたずまいの描写など、稀に見る美文です。訳の差異を確認しようと思って1巻と2巻を並べて開いたら、なぜかフォントが違っていました。2巻のほうが文字が小さくて読みにくいです。統一しなかった理由がわからない。
「エーリッヒ・ツァンの音楽」は昔々に読んだことがあります。小学生くらいの頃じゃないかしら。アンソロジー形式の本で読んだのですが、一緒に収録されている前後の話より格段に難しく、知らない言葉が沢山出てきたので、これは理解できないとあきらめた記憶が今もはっきり残っています(多分子供向けの世界恐怖文学なんとかという類の選集で読んだのではないかと。レ・ファニュの「白い手」の話と、ポーの「黒猫」と、あとは知らない著者の「緑の目の白い猫」が出てくる話が入ってるシリーズでした。なつかしい、そして気になる。正式なタイトルが解ればもう一度読みたいシリーズです)。大人になって読み直してみた感想は、地図で探した見たけれどオーゼイユという街は見つけられなかった、というのが非常にいい。怪異との遭遇が回想として語られるのですが、なんとなくラヴクラフトらしくなくてロマンチックな気がするのです。昔映画で見たアリスや探偵を思い出します。あと、子供の頃の自分が間違いなく理解できていたことが再確認されて嬉しかったです。内容は理解していても、面白さがわからなかった辺りは未熟者。
「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」
何かに似ている、この語感はどこかで……としばらく悩んでからはたと気付きました。そこに積んであるそれ。『ジョジョの奇妙な冒険』と構造・成分ともに全く同じじゃないですか。聞いたような覚えがるのも当然でした。日本で映画が封切られたときのタイトルのセンスのなさが腹筋よじれるほどおかしいです。「怪談呪いの霊魂」って。怪談……。
読み手には何が起こっているのか一目瞭然、登場自分たちにとっては奇怪極まりない事件を書くのが非常にうまい。外から眺めただけでは理解不能な現象が少しずつ繋がって、これ以上ない明白な真相にたどりつくけれど、それは読み手にとってだけ明白で、登場人物にはほとんど明かされない真実ばかり。「それしかないこと」が認めることもできないほど忌まわしく恐怖に満ちていた場合、人は認識理解を拒否するのです。唯一の長編ということですが、他に長編がないのがとても惜しいできばえ。
『ラヴクラフト全集1』
2005年8月17日 未分類H・P・ラヴクラフト、大西尹明訳、創元推理文庫。
文庫でラヴクラフトの全集が揃えられるなんて創元推理はなんて素敵な文庫をつくったのだろう!ばんざーい、ばんざーい!我が家にくとぅるーちゃんとにゃる様がやってくるよー!
と、大喜びで家主に自慢。常日頃からSAN値が激減などというネタを振っている家主なので、当然読んでいるものと決め込んでいたら、なんと読んでいないという。えええー!だまされた!クトゥルフ話が通じてTRPGの存在を知っていて、PS2版のデモンベインを購入する人間の中で原作を読んでいない不届き者なんてわたしくらいだと思っていたのに!
くとぅるふちゃんからお手紙着いた、読んでもないのにSAN値が激減〜♪
それはさておき。作者の名前、つづりが「LOVE」craftだったんですね。luvとかlavとかlovとか色々予想していましたが、loveだけはないと思っていたので思わず吹き出してしまいました。愛クラフトさん。
「インスマウスの影」
「壁のなかの鼠」
「死体安置所にて」
「闇に囁くもの」
4本収録。「インスマウス」は読んだことがないのに粗筋をざっと知っていました。やはり有名なのだなあ。なんというか、ホラー系のゲームでありそう、命がけ鬼ごっこ。まず部屋から脱出して、追っ手に捕まらないようにアイテムなどを駆使しながら街の外へと逃げ出すのが最終目的。追っ手は視力が弱いので、離れた場所で敵視界を横切る際は歩いていかないと駄目なんですよ。走っちゃうと正体がばれてみんなが一斉にこっちくるの。でも、歩くのは移動速度が遅いから、見つかったときは走らないとあっというまに捕まっちゃったり。ディープワンズと命がけ鬼ごっこアクション。装備品は懐中電灯、システムで地図を参照しながら、刻々と変化する状況を読みつつダッシュ大脱出!そんな妄想。
「死体安置所」も何処かで読んだことがあるような気がするんですが思い出せません。前半が非常にホラーなので、びくびくしながら読んだら、強烈なブラックジョークでした。引っ張って引っ張って、最後に明らかにする(落とす)文章書くのが上手いなあ。
散々あちらこちらでエピソードだけつまみぐいしてから原典に臨むと、なんだか拍子抜けするようなことがありますね。デモンベインのインスマウスのエピソードが、小説ほとんどそのままでびっくりだ。
この訳では「ニャルラホトテプ」表記ですが、わたしが最初に遭遇した訳は「ナイアルラホテップ」でした。雑誌ムーか何かで目にしたのが最初かなあ。家の中にある活字を片っ端から読んでいたときのことで、そのときわたしは何故かにゃる様を「エジプトの神様」だと思っていました。ホルス神と並んでる女神ってそんな名前でしたっけ……?たぐいまれな混同。菊地秀之は「ヨグソトース」表記ですよね。たしか。あちらこちらで見た訳がごっちゃになっているようです。あの発音不可能な単語の数々をどう表記するかが、クトゥルフをどの出版社で読むか選ぶときの大事なポイントでした。いいものをすすめてもらってとても嬉しい。人生の先達よ。
内容に余り関係ない感想ですが、猫の「くろすけ」は英語原文ではなんと呼ばれていたのでしょうか。日本語の黒すけに当たる英単語……気になる。ジャスコの看板にある「AEON」があいおーんに見えてきたどうしよう。
文庫でラヴクラフトの全集が揃えられるなんて創元推理はなんて素敵な文庫をつくったのだろう!ばんざーい、ばんざーい!我が家にくとぅるーちゃんとにゃる様がやってくるよー!
と、大喜びで家主に自慢。常日頃からSAN値が激減などというネタを振っている家主なので、当然読んでいるものと決め込んでいたら、なんと読んでいないという。えええー!だまされた!クトゥルフ話が通じてTRPGの存在を知っていて、PS2版のデモンベインを購入する人間の中で原作を読んでいない不届き者なんてわたしくらいだと思っていたのに!
くとぅるふちゃんからお手紙着いた、読んでもないのにSAN値が激減〜♪
それはさておき。作者の名前、つづりが「LOVE」craftだったんですね。luvとかlavとかlovとか色々予想していましたが、loveだけはないと思っていたので思わず吹き出してしまいました。愛クラフトさん。
「インスマウスの影」
「壁のなかの鼠」
「死体安置所にて」
「闇に囁くもの」
4本収録。「インスマウス」は読んだことがないのに粗筋をざっと知っていました。やはり有名なのだなあ。なんというか、ホラー系のゲームでありそう、命がけ鬼ごっこ。まず部屋から脱出して、追っ手に捕まらないようにアイテムなどを駆使しながら街の外へと逃げ出すのが最終目的。追っ手は視力が弱いので、離れた場所で敵視界を横切る際は歩いていかないと駄目なんですよ。走っちゃうと正体がばれてみんなが一斉にこっちくるの。でも、歩くのは移動速度が遅いから、見つかったときは走らないとあっというまに捕まっちゃったり。ディープワンズと命がけ鬼ごっこアクション。装備品は懐中電灯、システムで地図を参照しながら、刻々と変化する状況を読みつつダッシュ大脱出!そんな妄想。
「死体安置所」も何処かで読んだことがあるような気がするんですが思い出せません。前半が非常にホラーなので、びくびくしながら読んだら、強烈なブラックジョークでした。引っ張って引っ張って、最後に明らかにする(落とす)文章書くのが上手いなあ。
散々あちらこちらでエピソードだけつまみぐいしてから原典に臨むと、なんだか拍子抜けするようなことがありますね。デモンベインのインスマウスのエピソードが、小説ほとんどそのままでびっくりだ。
この訳では「ニャルラホトテプ」表記ですが、わたしが最初に遭遇した訳は「ナイアルラホテップ」でした。雑誌ムーか何かで目にしたのが最初かなあ。家の中にある活字を片っ端から読んでいたときのことで、そのときわたしは何故かにゃる様を「エジプトの神様」だと思っていました。ホルス神と並んでる女神ってそんな名前でしたっけ……?たぐいまれな混同。菊地秀之は「ヨグソトース」表記ですよね。たしか。あちらこちらで見た訳がごっちゃになっているようです。あの発音不可能な単語の数々をどう表記するかが、クトゥルフをどの出版社で読むか選ぶときの大事なポイントでした。いいものをすすめてもらってとても嬉しい。人生の先達よ。
内容に余り関係ない感想ですが、猫の「くろすけ」は英語原文ではなんと呼ばれていたのでしょうか。日本語の黒すけに当たる英単語……気になる。ジャスコの看板にある「AEON」があいおーんに見えてきたどうしよう。
よいせっと購入日記。
2005年8月17日 未分類掛け声のつもりが「良いセット」に見えなくもない。
『京極噺 六儀集』京極夏彦、ぴあ。
『天然理科少年』長野まゆみ、文春文庫。
新刊をネット通販すると出遅れた気分になります。
『京極噺 六儀集』京極夏彦、ぴあ。
『天然理科少年』長野まゆみ、文春文庫。
新刊をネット通販すると出遅れた気分になります。
横溝正史、角川文庫。
文庫未収録短編集。解説によると、横溝作品のうち探偵小説はほとんど角川文庫に収録されているそうで、今後地道に角川文庫で買い揃えていけば重複無しに作品集が完成するモヨウ。「この作家については、この出版社で文庫を揃えれば重複無しに全集が完成する」ようになってくれれば嬉しい作家は多いのになあ。1編だけ違うものが入っているから他の作品は読んだことがあっても買う、などという贅沢ができるほどのお金もスペースもないです。詩集なんかだと、読み手がいつも編者と同じ趣味してると思うなー!と暴れたくなるようなチョイスが多いですよね……。抜粋するな、全部載せろと。
話がずれました。帯は三谷幸喜。
「汁粉屋の娘」
「三年の命」
「空き家の怪死体」
「怪犯人」
「蟹」
「心」
「双生児は囁く」
の短編7本収録。
「汁粉屋の娘」は、汁粉屋の美しい姉妹小町の競争と、片割れの殺害から始まる。姉の直接の死因が実は(ネタバレ)だった辺りが横溝らしいなあ。誰も(ネタバレ)では(ネタバレ)辺りが特に。単に(ネタバレ)だけだったら、そんなご都合主義がと萎えるところなのですが、近藤の「時計くらい」という言葉が実に沁みます。「やがて」が漢字だったり「そんな」が「其那」だったりと、ずいぶんと字面の印象が違ってびっくりしました。
「三年の命」が変なかたちなので、なんだろうこれと思っていたら、雑誌連載で「1ページにつき1枚の挿絵がついて物語が展開していく」話だったのですね。解説読むまで1話がものすごく短いなあと首を傾げておりました。どうせなら挿絵つきで収録して欲しかった。
表題作「双生児は囁く」が一番長くて100ページほど。真鍮の檻に守られた真珠の展示部屋、その中にいた説明役の男が、衆人環視の中ナイフで刺殺される。腕にハートのクイーンの刺青をした女が二人。すばらしく豪華な舞台設定。探偵役の双子のタップダンサーからして人の神経を逆撫でして平気な、どこか馴れ馴れしくて図々しい性格で、なんだかいい人が全然いないんですけど。悪人もせいぜい二人だけど、いい人は一人だけしかいない……。双子にじりじりさせられる警部が、いかにも貧乏くじ引きそうな性格で笑ってしまいます。
ところで、帯の惹句ですが「由利先生」って誰かしら。
文庫未収録短編集。解説によると、横溝作品のうち探偵小説はほとんど角川文庫に収録されているそうで、今後地道に角川文庫で買い揃えていけば重複無しに作品集が完成するモヨウ。「この作家については、この出版社で文庫を揃えれば重複無しに全集が完成する」ようになってくれれば嬉しい作家は多いのになあ。1編だけ違うものが入っているから他の作品は読んだことがあっても買う、などという贅沢ができるほどのお金もスペースもないです。詩集なんかだと、読み手がいつも編者と同じ趣味してると思うなー!と暴れたくなるようなチョイスが多いですよね……。抜粋するな、全部載せろと。
話がずれました。帯は三谷幸喜。
「汁粉屋の娘」
「三年の命」
「空き家の怪死体」
「怪犯人」
「蟹」
「心」
「双生児は囁く」
の短編7本収録。
「汁粉屋の娘」は、汁粉屋の美しい姉妹小町の競争と、片割れの殺害から始まる。姉の直接の死因が実は(ネタバレ)だった辺りが横溝らしいなあ。誰も(ネタバレ)では(ネタバレ)辺りが特に。単に(ネタバレ)だけだったら、そんなご都合主義がと萎えるところなのですが、近藤の「時計くらい」という言葉が実に沁みます。「やがて」が漢字だったり「そんな」が「其那」だったりと、ずいぶんと字面の印象が違ってびっくりしました。
「三年の命」が変なかたちなので、なんだろうこれと思っていたら、雑誌連載で「1ページにつき1枚の挿絵がついて物語が展開していく」話だったのですね。解説読むまで1話がものすごく短いなあと首を傾げておりました。どうせなら挿絵つきで収録して欲しかった。
表題作「双生児は囁く」が一番長くて100ページほど。真鍮の檻に守られた真珠の展示部屋、その中にいた説明役の男が、衆人環視の中ナイフで刺殺される。腕にハートのクイーンの刺青をした女が二人。すばらしく豪華な舞台設定。探偵役の双子のタップダンサーからして人の神経を逆撫でして平気な、どこか馴れ馴れしくて図々しい性格で、なんだかいい人が全然いないんですけど。悪人もせいぜい二人だけど、いい人は一人だけしかいない……。双子にじりじりさせられる警部が、いかにも貧乏くじ引きそうな性格で笑ってしまいます。
ところで、帯の惹句ですが「由利先生」って誰かしら。
岩井志麻子、文春文庫。
あら、文春文庫ではこれが岩井志麻子一冊目なんですね。意外だ。大正初年の岡山で、妾稼業の女性が焼死する。評判の美人だった彼女は新聞に「黒焦げ美人」とセンセーショナルに書き立てられる。
帯とカバー背中に「意外な犯人像」と書かれているので、犯人当てが主体だと思った人もいるのじゃないかしらん。意外な、は犯人にではなく犯人像の「像」にかかるので、ミステリを期待してはいけません。「岩井志麻子で何故に犯人当て……?」と帯に不信感を抱いたわたしは勝ち組。
駄目な両親に美しい姉。妹の晴子は、姉が妾稼業についているから女学校に通っていられる。姉の住む妾宅には、高等遊民のような若い男たちが出入りしている。晴子はそのうちの一人、大橋に好意を抱いているが、姉は誠実な大橋には見向きもせず、冷淡なヴァイオリニスト藤原に恋焦がれている。真夏の最中に明治が終わり、その年の末、はじめての大正の大晦日、姉は耳だけ残した焼死体となる。
凄惨だけれどどこか滑稽な「黒焦げ美人」。表紙の書体がまさしくその通りの印象で秀逸。中身は岩井志麻子節絶好調。美しく悲惨、可憐で不幸、豪奢で酸鼻を極め、生ぬるく凍える真夏、焦げ付く真冬の寒さ。痛み傷んだ真夏の凍える悪夢や、悲劇に凛と映える真冬の端整さなどは夏と冬に思い入れのある人間にはたまらない。一言一句全てが美しい、耽美といえばこれ以上の耽美があるかという美文。「拵え映えのする女」の不幸な後ろ姿が耽美でなくてなんであろうかー!
各章の出だしと題も美しい。章題は新聞の見出し記事の体裁で、作中人物の新聞記者が書いたような軽薄で執拗な時代がかった美文、大きく取り沙汰されるゴシップの質の悪さと、野次馬の無責任な興味本位の覗き趣味が大仰な身ぶりで迫って来るよう。
「奇々怪々の大事件勃発す」
「美人惨殺の兇行者遂に捕はる」
「恐るべし美人焼殺犯の消息」
「好男子にして性向不品行なり」
これが岡山で実際にあった事件なのだそうで。といっても「取材した」とあるので、現実にあった事件が岩井志麻子の手でまったくの別物語になっているのでしょう。『夜啼きの森』のときのように。
帯裏側の引用が絶妙。
「姉です。
藤原さんのヴァイオリンを聴きたがっていたから、耳が残っているのです。」
何気なく本を裏返して、それに気付いたとき体に震えが走りました。鳥肌。
表紙、焦げた本のページが辛うじて読めるけど、これ田辺聖子の『源氏物語』じゃないかしら。手元にあるけど確認するためには段ボール箱を崩さないといけないので挫折。上巻冒頭の桐壺だと思うんですけど誰か確認してください。田辺聖子じゃなくても、桐壺なのは間違いない(もし田辺聖子だったら新潮文庫じゃあ……)。
解説が面白くなかったので残念。というか誰?これでエッセイスト?と暴言で〆る。
あら、文春文庫ではこれが岩井志麻子一冊目なんですね。意外だ。大正初年の岡山で、妾稼業の女性が焼死する。評判の美人だった彼女は新聞に「黒焦げ美人」とセンセーショナルに書き立てられる。
帯とカバー背中に「意外な犯人像」と書かれているので、犯人当てが主体だと思った人もいるのじゃないかしらん。意外な、は犯人にではなく犯人像の「像」にかかるので、ミステリを期待してはいけません。「岩井志麻子で何故に犯人当て……?」と帯に不信感を抱いたわたしは勝ち組。
駄目な両親に美しい姉。妹の晴子は、姉が妾稼業についているから女学校に通っていられる。姉の住む妾宅には、高等遊民のような若い男たちが出入りしている。晴子はそのうちの一人、大橋に好意を抱いているが、姉は誠実な大橋には見向きもせず、冷淡なヴァイオリニスト藤原に恋焦がれている。真夏の最中に明治が終わり、その年の末、はじめての大正の大晦日、姉は耳だけ残した焼死体となる。
凄惨だけれどどこか滑稽な「黒焦げ美人」。表紙の書体がまさしくその通りの印象で秀逸。中身は岩井志麻子節絶好調。美しく悲惨、可憐で不幸、豪奢で酸鼻を極め、生ぬるく凍える真夏、焦げ付く真冬の寒さ。痛み傷んだ真夏の凍える悪夢や、悲劇に凛と映える真冬の端整さなどは夏と冬に思い入れのある人間にはたまらない。一言一句全てが美しい、耽美といえばこれ以上の耽美があるかという美文。「拵え映えのする女」の不幸な後ろ姿が耽美でなくてなんであろうかー!
各章の出だしと題も美しい。章題は新聞の見出し記事の体裁で、作中人物の新聞記者が書いたような軽薄で執拗な時代がかった美文、大きく取り沙汰されるゴシップの質の悪さと、野次馬の無責任な興味本位の覗き趣味が大仰な身ぶりで迫って来るよう。
「奇々怪々の大事件勃発す」
「美人惨殺の兇行者遂に捕はる」
「恐るべし美人焼殺犯の消息」
「好男子にして性向不品行なり」
これが岡山で実際にあった事件なのだそうで。といっても「取材した」とあるので、現実にあった事件が岩井志麻子の手でまったくの別物語になっているのでしょう。『夜啼きの森』のときのように。
帯裏側の引用が絶妙。
「姉です。
藤原さんのヴァイオリンを聴きたがっていたから、耳が残っているのです。」
何気なく本を裏返して、それに気付いたとき体に震えが走りました。鳥肌。
表紙、焦げた本のページが辛うじて読めるけど、これ田辺聖子の『源氏物語』じゃないかしら。手元にあるけど確認するためには段ボール箱を崩さないといけないので挫折。上巻冒頭の桐壺だと思うんですけど誰か確認してください。田辺聖子じゃなくても、桐壺なのは間違いない(もし田辺聖子だったら新潮文庫じゃあ……)。
解説が面白くなかったので残念。というか誰?これでエッセイスト?と暴言で〆る。
クトゥルフはじめました(購入雑記)。
2005年8月10日 未分類宣言から遅れることひとつき。ようやくクトゥルフはじめました。夏は京極とか夏はオツイチとか「夏は〜」ネタはいい加減重複なので「冷麺はじめました」という宣伝調で決めてみました。「クトゥルフひとつー、あとビールお願いねー」「クトゥルフ一丁はいお待ち!」なんてことになってたらそれはそれはSAN値の下がりまくるお店ですね。常に一見さんばかりなのに、客足の耐えない「くとぅるふの店」。
『ラヴクラフト全集1』H・P・ラヴクラフト、大西尹明訳、創元推理文庫。
『ラヴクラフト全集2』H・P・ラヴクラフト、宇野利泰訳、創元推理文庫。
『黒焦げ美人』岩井志麻子、文春文庫。
『双生児は囁く』横溝正史、角川文庫。
プリンを探しに近所の本屋に行ったら、何故か先月までは置いていなかった「コンプティーク」が。……が、9月号……。
うわああんひどいやひどいやー!と涙ッシュで横溝買ってきました。
結局、目的のプリンは見つからなかったので、明日にでも別の本屋に行くことにします。
『ラヴクラフト全集1』H・P・ラヴクラフト、大西尹明訳、創元推理文庫。
『ラヴクラフト全集2』H・P・ラヴクラフト、宇野利泰訳、創元推理文庫。
『黒焦げ美人』岩井志麻子、文春文庫。
『双生児は囁く』横溝正史、角川文庫。
プリンを探しに近所の本屋に行ったら、何故か先月までは置いていなかった「コンプティーク」が。……が、9月号……。
うわああんひどいやひどいやー!と涙ッシュで横溝買ってきました。
結局、目的のプリンは見つからなかったので、明日にでも別の本屋に行くことにします。