悩み雑記

2005年8月9日 未分類
diarynote内ではリンクすると相手にばっちりわかってしまうのですよね……。とっても張りたい人がいるのだけれど、なんらかのリアクションがあるかもしれないと想像するだけで無理だ絶対無理だー!なわたしisネットヒッキー。こっそりリンクが出来るならするんですけど。とりあえずブラウザのお気に入りに入れて毎日楽しみにしています。

今月の予定。
・プリン
・京極
・黒焦げ
・理科
・くとぅるふ
シェイクスピア、福田恒存訳、新潮文庫。

表紙が綺麗で福田恒存なので買い。世界で一番有名な戯曲ではないでしょうか。研究も盛んだし、いまさらわたしごときが何を言ってもどうもこうもないので、以下いつもの通り感想。

実は今日まで、「主人公佯狂」「オフィーリア発狂溺死」「ラストでは主要登場人物軒並み死亡の皆殺しコール」くらいしか知りませんでした。前提は知っていても、ストーリーはなにひとつわからない無教養。
叔父が前王を毒殺、嫂をめとって即位。前王の子であるハムレットは、父王の亡霊に遭遇して復讐をうながされるが、確信と機会を求めて狂気を装って日を過ごす。
で、もののついでに大臣殺害、イギリス追放暗殺の危機、オフィーリアお亡くなりなどの大事件をさらっとこなして叔父を返り討ちにしつつ自分もお亡くなりに。
名台詞の多いこと多いこと。例の「to be, or not to be」をはじめとして世界の関節が外れたりと以下略。

「ホレイショー、こうなったら、亡霊の言葉、千万の金を積んでも買いとるぞ……見たろうな?」

おおお男前だハムレット!福田恒存はカッコよすぎます。丁重が鄭重だったりと最初から最後までにやにやしっぱなしになりました。解説も強烈な美意識に満ちていて、胸が戦きましたよ!「解題」「解説」「シェイクスピア劇の演出」「シェイクスピア劇の執筆年代」と、巻末も大変親切で充実の一冊。
どうも解説の人びとが熱弁を振るって「一般にはこうだと思われているがそれは違う!」という「一般的解釈」とよほど離れた解釈をしていたらしく、一般解釈を前提とする話し振りに首を傾げてしまいました。塩野七生の『人びとのかたち』に、映画ハムレットが一本紹介されていたのを思い出しつつ読んだので、たいそう楽しかったです。叔父は熟年の魅力……ハムレットはマザコンの気配……。
あと、以前から思っていたのですが、ガートルードは悪女の名前ですよねやっぱり(偏見)。
漫画なんだなー。『BLEACH』の18巻購入。ここでいかにルキア萌えであるか熱く語ったら、間違いなくドン引きされてしまう自信があります。なので一言だけ。

卯の花隊長って男じゃなかったのかー!

あと、巻末の浮竹プロフィールって全部ネタですよね。生まれながらのお笑い体質……?
ヴェルヌ、波多野完治訳、新潮文庫。

言わずと知れたジュール・ヴェルヌの少年漂流冒険小説。15人の少年達を乗せた船がふとしたことから荒海へ。大嵐にもまれた末に、なんとか陸地にたどり着くが、そこはどうやら周囲を海に囲まれた無人島らしい。少年達は助けが来るまで生き延びるべく、さまざまな創意工夫を重ね、団結して知恵と勇気と好奇心と冒険に満ちた暮らしをはじめる。

『蝿の王』より先に読まないと駄目ー!

順番を逆にすると割りと泣ける事態が待っています。ニュージーランドから嵐に流された少年達がたどりつく先が、北半球の島のために、南海の孤島が舞台である『蝿の王』とは真逆なのです。というか1828年のヴェルヌのほうが先なのに『蝿の王』と対照だなーって、基準が逆だからそれ。同じ少年漂流記でも、書く人間が違えば違うものだなあと思うよりも、年代が下ると少年探偵団がバトルロワイヤルになっちゃうのね……という殺伐感と時代の流れを思うほうが強かったので。

快活で心根の優しいブリアン、思慮深く慎重なゴードン、傲慢で自尊心の強いドノバンが年長組。これがそのまんま『蝿の王』のラーフ、ピギー、ジャックに対比されて、興味深いとか面白いとか言うより先に「リアリスティックってむごい」とテンションが微妙に下がりました。あと、ドノバンに銃を持たせると、いつブリアンを撃ち殺すのかとドキドキです。物語のテンションを考えると、そんなことは絶対無いのはわかるのですが、それでもドノバンがブリアンと対立する素振りを見せるたびに、びくびくしてました。

船には食料、生活必需品、工具、銃と火薬、そのほか島での生活に必要なものがたっぷり積み込まれていて、少年達はこれを元に暮らし始めます。8歳から14歳の集団とは思えないほど克己心にとんで自律性が高いのはご愛嬌。なぜならこの小説は「少年探偵団」だからです(断言してますがわたし少年探偵団読んだことないです)。読み手である少年達と少数派の少女に近い年頃の子供達が、創意工夫を重ね、友情を深め、冒険し、発明し、そして大人が見ても「実によろしい」というような生活を送る。もちろん深刻な失敗や外敵や仲たがいやその他いろいろあるけれど、少年達は努力と勤勉と協力で困難に打ち勝ち、冒険を成功させて無事に帰ってくるのでなくてはいけないのです。一言で言えば「道徳的」。いかにも「子供向け」、悪い言い方をすれば子供だましなんですが、ハイクオリティ通り越して「究極の」がつきそうな物語。子供向け子供だましで何が悪い。年頃の少年少女を夢中にさせる物語の強さに、そんな評価程度で傷一つつくものか!
エキサイトして話がずれました。要するに「安全」なんだけれど、安全で何が悪い、安全じゃなければいいというのか。むしろ安全でなければいいという考え方のほうがよほど安直じゃないのかと思った次第であります。

以下あまり本筋に関係ない感想。
ニュージーランドが植民地だったり、黒人のボーイだけ選挙権がなかったりと、時代を感じさせる記述が多い。
島にペンギンたくさん。羨ましい。
サバイバル物になると、ヨーロッパ人は狩猟のとき無意味に動物を殺しますよね。必要以上に殺してるように見えますが、あれは狩猟の喜びが一般的ということなのかしら……。いっつも「オーバーキルもいいところだなあ」と気になって仕方ありません。資源の無駄遣いいくない。そんなわたしは日本人。
14歳が「君は駝鳥の教訓を忘れのかい。(中略)その時まで、がまんしたまえ」っていう喋りはどうなのかと思いましたが、ゴードンが某本屋変換されて面白くて仕方なかったので、これでいいやー。最終的には「これでないと駄目だ」となったので、自分の頭が相当どうかしてると思いました。
ブリアンはもう少し快活寄りにして欲しかった。
手先の器用なバクスターの発明は、職人芸の域に達していると思います。

訳者による解説が非常に面白かったです。比較文学の視点から見たときのエピソードなどは非常に興味深いものです。日本語訳のタイトルが、原題と全く違うことも初耳。わたしからすれば「なんでこれだけ有名な本の原版が見つからないのか」と首を傾げるばかりですが、原本が凡作ならそれは仕方ないのですね。というか「原本が凡作」というのがカルチャーショック!思軒は偉大だ。

「男が理想を追って、最新の科学を駆使してかけまわるのが、ヴェルヌの世界なのです」
「ヴェルヌの小説には、あまり悪人がでてきません。科学者でエクセントリックな人はありますが、それもけっきょく、科学にこりすぎて人類全体を忘れたのです」

子供向けのような語り口で、実は大爆笑の内容の解説がむやみにツボでした。

『美人画報』

2005年7月31日 未分類
安野モヨコ、講談社文庫。

漫画家の安野モヨコが美人になりたいんじゃー!と女子力の限りを尽くすエッセイ。
「おもしろみ回路」と「美しいもの回路」を平行励起で人生送っているわたしには楽しい限りでした。だって「美しいこと」についてあの安野モヨコが面白さの限りを尽くして書いてるのですよ!ああ面白いああ楽しい。

びっくりしたのが安野モヨコって文章美しいですね!もっとぐだぐだなものがくるかと思っていたら、えらいかっちりした「あたまどうたいしっぽ」の明確な文章書くのでびっくりしてしまいました(あたま云々は大体主語述語目的語みたいなもんだと思ってください)。わかりやすーい。おもしろーい。「とゆう感じ」乱発しながら呼応の明確な文章書く人はじめて見ました。
一、二ヶ所、どっちの意味にも取れるけど、どっちのなのかしらと考え込む部分がありましたが、絵のフォローで解決。いまひとつだった詰め込み旅行日記は脳内フィルター適用。

日本家屋で隠居生活を送りたい夢いまだかなわず……。美しいものに囲まれて暮らしたいです。その前に言葉習慣叩き直してきたいと思います。
ところで髪型ビフォーアフターの、アフター写真は載せないのですか?残念だ。
『美人画報』安野モヨコ、講談社文庫。
『ハムレット』シェイクスピア、福田恒存訳、新潮文庫。
『十五少年漂流記』ヴェルヌ、波多野完治訳、新潮文庫。

ちょっと知的で綺麗なおねーさんが読んでいそうなラインナップを目指してみました。嘘です。『ハムレット』は福田恒存訳にひかれてふらふらと気がついたら手にしてました。ヴェルヌは折角『蝿の王』が同じ100冊のラインナップに入っているので読み比べ。

ところで先日のエロゲー雑誌を購入日記ですが、雑誌もマリ見てもそれぞれピンで買うならあそこまで暴れません。なんというか組み合わせの妙ってありますよね。そんな感じ。
かつて一度もプレイしたことがなく、これからもプレイすることのないゲームの攻略本買ってどうするのかしらー。しかも予約して。昔から変わらない癖というものを実感。
『MELTY BLOOD Act Cadenza公式攻略ガイドブック』買いました。表紙がピカピカ銀箔押しでカッコいいー、と喜んだのも束の間、何故か角ががっつり削られて落ちる寸前、同じく角の辺りに尖ったものをぶつけた跡があって大いにへこむ。
「Re」の時とどれだけ違いがあるのかなーと興味深く眺めて一人怪しく笑う。もしかしたらそのうちこっそり一人でゲーセンへ行くこともあるのかもしれません。家主連れてって攻略させるほうが先っぽいですが。
今野緒雪、集英社コバルト文庫。

表紙の3人の3本収録。
ぶっちぎりで田中有馬ですよ。もう彼女以外ない。イラストの由乃さんお出かけ姿がむちゃくちゃ可愛い。
柏木の立ち位置やら性能やら人格やら、嫌な人でありつつ嫌な人であってくれない、という状態が、ものすごく絶妙でうまいなー。

えーと、まさかラストは鬱展開とかそういうことは……。

LIKE罰ゲーム

2005年7月25日 未分類
先日からの決意を固めたまま書店へれっつごー。最初に行こうとしていたお店は、車では近寄れない立地条件だったので、見送って次へ。見た目小さな店なのに、何故か人がいつも沢山いるなあと思っていたその書店、中へ入ってみてびっくり。売り場面積は予想の1.5〜2倍程度、まあ普通の規模です。しかし棚の充実具合が尋常でない。敷地面積に対して棚がみっしりなら、棚に対する本の量もみっしり。特に雑誌の充実度合いが高く、この規模でこれだけ雑誌の品揃えがいいお店はじめて見ました。文芸誌だけで30種類近く置いてて、ムックも雑誌扱いという。ハードカバー後回しで文庫に力を入れているのもよくわかる、狙いのはっきりした実にいい書店なので今後ごひいきにします。

で、目指す雑誌2冊のうち、1冊を発見。一通り店内を見回ると、マリ見ての新刊も発見。家主に「新刊出てるよー」と報告したところ、

「ついでにそれも買っておいて」
「ありえない!」

思わず即答です。いや、だって、男性向け18禁雑誌とマリ見てですよ?ありえない。
しかしわたしはザッツエンターテイメントの真髄目指して日々を送るオタク。ありえないという自分の台詞に触発されるまでにかかった時間が3秒。ありえない組み合わせの本を買う、ライク罰ゲーム、ネタになる!
やっぱり面白いから買う、と家主に告げたところ「それでこそ漢だ」って言われました。男じゃなくて漢なのよね……とネタやら自嘲やらが飛び交うわたしの背中に家主もう一言。

「業が深いな……」

というわけで、18禁表示アリ・水着のツインテール美少女が胸に挟んだソフトクリームをなめてる表紙・透明フィルムラッピング済み・やたら分厚い・小冊子付録・裏表紙は寒いギャグの巨乳ゲームの宣伝と何拍子揃ってるのかすらわからないエロゲー雑誌と、『マリア様がみてる 薔薇のミルフィーユ』買ってきました。ちなみに雑誌は「テックジャイアン9月号」です。

我ながら業が深いと思いました。
ついにとある雑誌の購入を決意。さすがに物が物だけに書店に行くのも色々と差しさわりが、とこんなときのネット通販を頼ろうとしたら、発見できないわ取り扱ってないわその雑誌だけないわと軒並みお断りされました。近所の本屋はお子様に配慮してアレな雑誌はほとんど置いてないんだよー!うわああん!
明日から捜索の旅に出ます。早々に発見しないと売り切れる!欲しい本のためなら恥も外聞もあるものかー!

某本屋さんはわたしが探しているアレな雑誌よりもはるかにお子様の教育上宜しくないシロモノが山と積まれている某コーナーを先になんとかしてください。
喜びの余り二回言います。
「晴天なり。」の文庫が本日到着しました!メールでは8月半ば発送予定だったのに、すごいやアマゾンお見それしました。
『ぷろぺら青空』
『異星人交差点』
『自由になあれ』
の3冊。おお、表題文字数揃ってるじゃん。3巻の『自由になあれ』収録の、「sol・la」を雑誌で読んでからずっと待ってました。「すごい目で俺のことにらんでた」がむちゃくちゃ心に残っていたのです。あれは酷い話だ。とても酷い話だ。こんな酷い話があっていいものかと衝撃を受けたのでした。藍川さとるはざっくりと心に傷をつけていくような話を紡ぐのが上手いなあ。一時期「さかなのf」にものすごく影響受けていました。

藍川さとる、晴天なり。シリーズ『ぷろぺら青空』『異性人交差点』『自由になあれ』新書館ウィングス文庫。
ウィリアム・ゴールディング、平井正穂訳、新潮文庫。

第三次か第四次か、ある対戦のさなか、イギリスから疎開する少年達を乗せた飛行機が、落ちる。飛行機は南太平洋の孤島に不時着したが、助かったのは少年達だけ。そして島は無人島だった。少年達は救助を待つ間生き延びるため、隊長を決めて集団で暮らすことにした。

タイトルから、きっと陰惨で凄惨で醜悪でリアリスティックな、人間のろくでもない面を緻密に描いた作品に違いない!と確信していました。その通りでした。でも、わたしの予想をはるかに上回る極悪さでした。
少年達は最初こそ南の島を楽園と思い、集会を開き、冒険気分で暮らしますが、それも束の間、烽火を絶やしたことが原因で有力な少年二人が対立、「獣」の不安により理性的生活からどんどん離れていってしまいます。救助を待ち理性的に生活しようと主張するラーフ、豚を狩って肉を手に入れようと蛮人のごとき扮装をはじめるジャック。少年の集団はこの二つの派に別れ、命を脅かすほどの対立を開始します。
開始から全員キャラ立ち激しいわ濃いわ、対立の予兆はすぐにきざすわで、30ページもすすまないうちに胸が一杯、もう胸焼け寸前。しかしそれがいい、と集中して読んだら一日かかりませんでした。後半はノンストップにサバイバル。
リーダーに選ばれる少年ラーフは金髪で姿の美しい運動能力の高い少年。ラーフと最初に遭遇するピギーは太っていて眼鏡で喘息。何かにつけて「ぼくの叔母さんが」と言い出し、快活なラーフに執拗かつ媚びるような同道の仕方をする。もうこの時点で濃いですよ。ものすごい濃さ。ラーフの態度はいかにも少年らしい気随や無邪気さに溢れていますが、それ以上に何か不安になるような自在勝手なところがある。ピギーは仇名の通り「豚ちゃん」に相応しい外見と性格で、非常に実際的な考え方をする賢明な少年なのに、集団からは外見の通りに冷遇される。
で、ラーフと対立することになるジャックは、合唱団のリーダーをしていただけあって、権柄ずくで倣岸。最初のうちなど「名前で呼ばれるのはごめんだ」と名字で呼ばせる始末。ただし少年の集団の中で力を持つだけの素養は全て備えている。サイモンはひとり真実に近くせまるだけの思考力を持っているけれども、ラーフとジャックほどのカリスマはない。
崩壊した集団は、もはや救助を待つことも忘れて狩りに興じ、権力欲に取り付かれたジャックのために武装してラーフたち対立グループを狩りたてる。そのために二人死なせ、島を焼き尽くしかける。
最後には危ういところで(ネタバレ)するのですが、わたしこのラストに愕然としました。むしろ戦慄したといったほう近いです。(ネタバレ)が(ネタバレ)したその瞬間、少年達が島についてから起こったあらゆるできごとが戯画化されたと感じたのです。途中でたびたび「大人がいればなあ」という意味合いのことが言われますが、この段階で(ネタバレ)するということは、今までの少年達の生活すべてが「子供の遊び」になるわけで(実際そのような発言をしている。今目の前で起こっているのは殺戮ですよと)、つまり三人の死も生活の苦労もすべて価値がないものとしておとしめられたわけです。
ラーフを獲物として煙でいぶりだし、集団で武装して殺そうとしたことも「子供の遊び」として価値をつけられて終わりというもの中々すごい落差ですけど、一人死なせて二人殺してリンチっぽい懲罰まで起こってた状況が全部「はいはい、子供の遊びはここまでね」になるって、戯画化によっていっそう悲惨なことになっていますよ。
気温が30度を超えるような真夏の最中に、汗をかきながら読むのがいいと思われます。幸せな「少年漂流記」を想像していると、容赦なく足元すくわれてこかされます。人間が野生に転がり落ちていく、殺し合いに発展していく「性悪説」実験、あるいは人間の持つ根源的悪について、というような読み方が主流っぽいですが、やはりラストの(ネタバレ)が一番極悪でありました。

原始状態に放り込むと「狩猟」「姿の見えない何ものか信仰」「ささげもの」などが発生するという運びや、そのほか細々とした点も非常に面白く出来ています。が、
極悪。
京極夏彦、角川書店。対談集。

水木しげる
養老孟司
中沢新一
夢枕獏
アダム・カバット
宮部みゆき
山田野理夫
大塚英志
手塚眞
高田衛
保阪正康
唐沢なをき
小松和彦
西山克
荒俣宏

妖怪を愛してやまない京極夏彦が、怪しいものを愛してやまない15人と対談。あまりにアカデミックに真面目な話をしているので、『怪談の怪』のときのノリを想像して読んだら面食らいました。作家というものは日ごろからこんな知識で頭を一杯にしているのか……と、出力<入力の関係にうちひしがれました。一般人にはひとつとして理解できない単語だけで一文成立していたり。それを口頭で嬉々としておこなう作家の驚異(脅威)。
もやもやしていたことをすっきりと言葉に直してくれる、システム的な話が多くて面白かったです。解体大好き。在野の趣味人のほうが、学者よりよっぽど専門的な学問をしていることを不思議に思っていたのですが、学者もいまや趣味人と変わらないような研究をしていて、ぱっと見区別がつかないのですね。学者から在野の趣味人になり、また学者に戻ってきている人も珍しくないようで。
ところでこのところずっと気になっていたのですが、宮部みゆきは単なるゲーム好きなので、オタクについて言及するのはやめたほうがいいと思います。あまりに外している上に、自分の影響力を考えてない発言が多くて怖いです。
学生時代にこういった明快なものを読んでいたら、もう少し学問に身を入れていたのになあと残念になるほどの内容。装丁も凝っていて、新刊で買った甲斐があります。カバー絵が可愛い。ぺろっとめくって遊び紙のところにいるネコとカエルが超キュート。

厚さに対して情報密度が高くてげんなり寸前の素敵さ。
いつまでたっても「在庫切れ」表示になっている7yに耐えかねて、出版社の直接通販を試みました。あるじゃん在庫。と、そこでふと気付いてアマゾンへ。あるじゃん在庫。当然のようにアマゾンで注文、確認メールを見て「……」到着予定日が8月半ば以降って、まる一月かかるってことじゃないですか。注文してから発送までの期間が長いと、無理でしたキャンセルしますってパターンが多いので、ちょっと心配です。お願いします、遅くなってもいいのでその本確保しといてくださいアマゾンさんー!(さんづけ)。

というわけで現在発売待ちが2冊、取り寄せ待ちが3冊。

プレイしてもいない、プレイする予定もないゲームの攻略本を発売待ちで予約してしまう自分は馬鹿だと思いました。付属の小冊子目当てに雑誌を2冊購入しようかどうか本気で悩んでいるところもアホです。
詳しく書いた日にはなまぬるい目で見られること請け合い。でも買ったら公表。
司馬遼太郎、新潮文庫。

下巻は「四面楚歌」が登場。これだけの物語をよくも文庫3冊におさめてしまったものです。不器用な人が大真面目にやったら、一生物の大部になっていたのではないかしら。歴史小説の神はやることが違うなあ。日本人は中国の歴史が云々、と中巻の感想に書いていたことが、あとがきでわかりやすく説明されていて膝を打ちました。そしてこの感想でおおむね間違っていないのだなと喜びました。それにしても元禄時代に『通俗漢楚軍談』『通俗三国志』が成立しているというのだから、三国志好きは筋金入りですね。国際交流が盛んになった近代の産物じゃなかったんだ三国志ファン。すごい。
司馬遷たら紀元前126年(推定)にフィールドワークですか!みあげた歴史学者と言うべきなんでしょうか。
れきいきがジジイながら硬骨だなと思っていたので、かいえつが嫌いです。下巻になってから韓信がやけに可愛らしげなので余計にかいえつが腹立ちますね!でも平国候は好きだ。「傾国」を踏まえたうえで「平国」なんて尋常の呼称ではないので、そのあと、とっとと逐電してしまったところもポイント高い。弁士が舌に命をかけることが出来た時代って、いったいどんな時代だったのか見てみたい。釜で煮られたのを「華やかな最期」とする時代ですよ。みんなむちゃくちゃだ。……一国を陥として釜で煮られるなんてたいそう華やかだと思ってしまいましたと自己申告。
カバー背中の解説が絶妙です。
「天下を制する”人望”とは何かをきわめつくした物語」(上巻)
「あらゆる人物の典型を描出しながら、絢爛たる史記の世界を甦らせた歴史大作」(下巻)
作者のあとがきもそれはそれは含蓄ふかい。本編もあとがきも、ああだこうだとこまかく説明し始めると、ありえない長さになるので(この圧縮率を見よ!と原文→解説の劇的ビフォーアフターができるくらい)、興味を持った人はじっくり腰をすえて読み、なにがどう魅力的なのか自分の目で確かめるのが一番です。
司馬遼太郎、新潮文庫。

なんだか半分以上が妄想感想。

「腐れ儒者ども生き埋めじゃー!」
「小僧、貴様語るに足らん!」
などの言葉が日常的に飛び交うみじんこ家。そういえば以前家主に「みじんこよ、汝は我が鶏肋なり」と言われ「け、けいろくー?!くきー!」となった記憶があります。
子房って言ってよ。

中巻まで張良と韓信が本格的に登場しないことにびっくり。片々と名前が上がっているくらいの上巻には舌を巻く。
智謀三人組が登場した時点で、一押しはやはり蕭何。この民政好き文官を見逃していた自分が信じられない。文官なのにやってることは兵站後方支援というのがまた素晴らしい。補給線の地味さにときめかなくて何がいくさか!生きている間も死んでからももっとも評判のいい政治家というのも笑ってしまいました。登場してからずっと鎮撫しっぱなし。きっと政治が95超えてて、配置して放置しておくだけで治安がアホみたいに上昇するんだぜ。伝説だけに、100いくかもしれない。残りの二人もきっと数値換算すると97とか98とかたたき出してくれるに違いない。そんな妄想。
関中入りから螢陽落ちまで。世に名高い鴻門の会やらなにやら詰まっていて大変懐かしい気分です。「寸毫寸毫」呟きながら読み下しした「関中に入ったら略奪禁止ー!」や、「夜に錦」もこの辺りだったなあ。高校生はもっと本を読むと人生が楽しいと思われます。原文探したら、当たり前ですが「張良」って字があってどっきり。どらまちっく中国。それにしても日本人って中国の歴史が熱狂的に好きですよね。
先日まで『関ヶ原』を読んでいたので、国土の異常な広さと、それを端から端まで移動する、始皇帝をはじめとする英雄の行動範囲の広さに度肝を抜かれました。スケールが違いすぎる……3万の軍隊が、増えに増えて56万!もう想像の範疇にありません。小さい市だと3万人くらいしかいなかったりするのに、出てくるところはともかく、それがまとまって移動して、まとまって食べていく。そしてまとまって戦ってまとまって死ぬんですよ!どんな規模だ。
会稽と咸陽が地図の端だって気付かないで、最初困ってしまいました。そういえば上巻は折込地図がついているのですが、大体の行軍経路がたどれてとても便利です。

張良さんが見た目美青年なのに行動が美少女っぽくて、読み進めつつなんどか「この美少女が!」と突っ込んでしまいました。もういっそ美少女であってくれれば(以下略)。蕭何と韓信と張良は歴史に残る智将なのに仲が良くて面白い。仲良し智謀トリオ。武勇で目立つ人がごく少ない編成って珍しいなあ。
これは、と思う場面を拾っていたらきりがなくなったのでやめます。字面でなんとなく意味が解るけど、正確なところは辞書に頼るしかない(それも広辞苑クラスでないと大変)単語がばらばら出てくるのでおそろしいです。「斉」をなんと読むのか毎回迷うのは何故だろう。「せい」ですよ「せい」、「さい」じゃないです。

いい場面紹介を削ったら、ほとんどが妄想感想という罠。
章邯の転落ぶりが哀れでなりません。
今更ながら「官」「吏」二文字の意味の違いを知りたい。
アンデルセン、矢崎源九郎訳、新潮文庫。

普段「ハンス・クリスチャン・アンデルセン」という読みでもって呼び習わしていますが、出身地デンマーク流の読み方だと「アナスン」「アネルセン」が近いんですって。知らなかった。童話で名高いアンデルセンの作品。

貧しい絵描きの私に、月が語ってくれた三十三夜の物語。2〜3ページほどの長さの、ささやかなエピソードで構成されています。それは月が見た景色であったり、事件であったり、物語であったり、人生であったり。はるか昔から、世界のあらゆる場所を見てきた月の光は時間も国境も越え、あらゆるひとの上に降りそそぐのです。

カバー背中の表紙に「温かく優しい感情と明るいユーモア」と書いてありますが、広告に偽りあり。半分くらいはむごい話です。ぎょっとするような表現が頻出。しかし美文だ。こんなうつくしいものがたったの300円で手に入るなんて信じられない!
「死神が、わたしの胸の中にいるんです!」と死の病にとりつかれた女が言い、貧しい男の子がフランス国の玉座の上で死に、若者が額に薔薇の花を巻いて、美しいライスの姉妹と踊るのです。
小さな女の子が新しい服に胸を躍らせ、人形に「生き物を笑ったことがある?」と尋ね、かみさまに「パンをお与え下さい、ついでにバターもつけて下さい」とお祈りするのです。

巻末に注釈がついているのですが、この注釈なしで読むと意味がまったくわからないエピソードがちりばめられていて恐ろしいです。「わからない」というより「読み違える」というほうが正確かしら。「ライスの姉妹」なんて知らずに読んでから「あれ?なんで注釈ついてるのかしら」とぺろっと巻末見て仰天しました。なんというか展覧会で寓意をそこかしこにちりばめた絵を見ているのに、絵に込められた意味を読み取れず&解釈できず「祭りの絵だと思ってたら葬式の絵だったー!」という驚き。
これ、事物にこめられた意味を全部注釈で出してくれたらいいのに……というかそういう事典でもないかぎり、わたしに文脈を読むのは不可能だと思われます。うわああんほとんど読めなかったよー!

300円でうつくしいものを買い求めたときに、宝石箱を手に入れることができる幸福。
『鏡のなかの鏡』と『夢十夜』を連想した人は同志。
司馬遼太郎、新潮文庫。上中下巻。

再読。はじめて読んだのは父親の持っていたハードカーバーだったと記憶しています。学生時代の漢文の授業で散々読んだよ項羽の最後……。おかげで懐かしい名前続出です。そしてまた范増と樊かい(漢字にすると文字化け)が微妙にまざってることが判明。なんなんでしょうこのまざりっぷりは。

はじめて読んだときのごひいきは張良さんでしたが、今回は蕭何。こんな素敵文官をどうして見逃したのかしら。項梁&范増、章邯&長史欣、このあたりがペアでいい味出してます。過去の人として語られる信陵君&侯生のエピソードも苛烈でいいなあ。「死を予約した」なんておそろしい表現をどうして忘れてたのか不思議。全人格を尊敬されたらそのあとは最早死でしか報いることが出来ない、というくだりは覚えてました。恐るべし知己の恩。
で、やっぱり男は愛嬌!天下を取る男には、武勇も智謀もいらないのです。そんなものは得意な人間に担当させればよし。本人に必要なのは可愛げ。これさえあれば万事オッケー。男は可愛くなければいけません。……という「男は愛嬌」型の価値観をわたしに植え付けたのはどうやら司馬遼太郎らしいです。振り返ってみれば全くこの人が原因だわ……。劉邦をもっとだらしなくすると劉備だなあ思うのですが、あそこまでだらしないと好きになれないわー。劉邦は適度な可愛らしさだと思います。
原文で読み下しさせられた学生時代から「項羽っておぼっちゃんだなー、貴族の子弟っぽい癇癖なところが」と思ってましたが、本当に育ちがよくて爆笑してしまいました。関中に絶対先着できなさそうな上巻ラストに「こういうタイプは貧乏くじ引きまくるんだよなー」と可哀相になってきました。

7月9日の日記

2005年7月9日 未分類
ファッション誌を買って、綺麗なおねーさんを眺めて幸せな気分を満喫しようかと本屋へ行ったのですが、新潮文庫の百冊が平積みされていたのに目がくらんで予定を放棄、『絵のない絵本』と『蝿の王』を購入。
今年の百冊キャンペーンは金のパンダ。鍵と錠前という素敵デザイン。去年に引き続き「帯についている応募券2枚」で応募できるのがいいですね。今年は二つもらおうと思います。本当はyonda?クラブの新潮文庫完全対応なブックカバーが欲しいんですが、文庫のカバーを切ることがどうしても出来ないため、帯で応募できるブックチャームで飢えを凌いでおります。
未だに新刊についている特殊な帯は切り取ることが出来ません……。yonda?クラブのグッズってどうしてあんなに素敵なの。失意前屈体。

夏は京極。

2005年7月8日 未分類
また嘘八百なタイトルを……と自分で思わないでもないです。
予約して買った対談集の『妖怪大談義』があまりに真面目すぎて面食らっております。そして今なにげなく7yのぞきにいったら『京極噺六儀集』が予約受付中だったので「なにー!」と叫びながらぽちっと予約してきました。

夏は京極なんですってば。多分。邪魅さえ出れば。

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