長野まゆみ。

2004年10月24日 未分類
『千年王子』河出書房新社

わ、わからなかった……。
理解が及びませんでした。げふう。作中でも指摘されてたけど、千年前の登場人物と、現在の登場人物の頭数が合ってないのが混乱の原因。有害生物と認定された筈が、いつの間にか稀少だけど普通の生物認定に摩り替わってるのもわけわからん。『テレヴィジョン・シティ』を思い出すなあ。冒頭と結末は綺麗に呼応しているんだけど、なんだかよくわからんし。中途半端だなあ。
面白かったのは、いっそ類型的な男に描かれている人物が「機能的には女性」だったり、もはや人格としての性別と、機能としての性別が全く乖離していること。てっきり「性と生殖が切り離された世界」だろう思い込んでいたのでびっくり。生殖と関係ない、その能力の無い生殖器をなんと呼べばいいんだろうか、とか、性が区別されるものでなくなった状態では「性別」や、前述の生殖器を性器と呼ぶことも不可能だよな、とか真面目に考えてしまった。ジェンダーとかセクシャリティの話は難しいです。
そして相変わらずループネタは駄目だ……さっぱり頭がついていかない。

『絶対安全少年』作品社(初めて見るな、この出版社)

あちこちに書いたものをまとめたものかな?短編、企画もの、エッセイとバラエティにとんだ内容。
少年を「美少女のようだ」と呼ぶことを嫌い、自ら「少女に見まごう」と表記することを疎ましく思う作者に快哉を叫んだ。昨今の「美少年=女装」という風潮に耐えられないみじんこの言葉にならないもやもやを、これ以上なく簡潔にそして前世紀中に表現してしまっている長野まゆみは矢張り偉大だ。
尊敬の念を強くすることしきり。

『銀河電燈譜』

2004年10月24日 未分類
長野まゆみ、河出書房新社。

しょっぱなの語りで「これだー!」と思ったのに……。またいつものアレです。「誰か家系図描いてくれ」パターン。長野まゆみが描く「少し昔の日本」がえらく好きなので、駒泉を舞台にそのままのテンションを保って欲しかったんだけれども。

「銀河電燈譜」
汽車に乗る賢治先生。次々に乗ってくる不思議な乗客。唐突に場面冒頭で語られる「駒泉」という老舗の内情。誰かの昔話。それらを少しずつ交錯させながら、汽車は賢治先生が求める「何か」に近づいていく。
ラストで謎の語りと、相乗り客の事情と、先生の旅の理由と目的がぴったり重なる仕掛け。さすが手練の技。
書いている内容のせいなのか、それとも好んで作者扱う単語や小道具のせいなのかはわからないけど、感傷的に甘ったるい文章を書くと思われがち。が、実はそんなこたぁない、少しばかり耽美だけれども寧ろ硬質な手触りを堪能致しました。
しかしこの人は作品の系統をしっかり選んで読まないと大変な目に遭うな。
「夏日和」
そんな「電燈譜」にちらりと登場した川島さんちの物語。
……ものすごく今更な話かもしれないけれども気付いたこと。みじんこが求める耽美と長野まゆみの耽美の方向性って実は30度くらい違うような……。

文庫探しの旅に出ます。
長野まゆみ、角川。

……表紙を見て「読んだことあるような、ないような。いいや、借りてしまえ」で借りてきたら、しっかり読んだことのある本でしかも内容を覚えていましたとさ。読み始めるまで思い出せないとは屈辱。

岬と言う少年は、このあと『夏帽子』辺りにひょっこり登場してたような気がするんだけど、どうだったかな。手元にないのでちょっと確認できないのだけど。
少年と父の距離感が素敵だ。父がいい親父でいい男だよなー。梓少年と賢彦のやり取りがやるせない。檸檬水の瓶から作った二つの笛、半分に割った堅果の片割れ。
別れるたびに自分の天秤を、別れた重さにつりあうように自分の天秤をつくりかえなきゃいけない、というのは切ない言い様。こんな環境で育ってこんな別れを経験した父がこうなるのはわかるような気がする。そして息子はきっと何処かで友人を得るのでしょう。
文庫が出てたら買わなきゃー。
この年で長野まゆみを大量に借り出すのはなんだか微妙に恥ずかしい。普通に配置してあればまだしも、わざわざ低年齢向けの分類棚があって、そこにコバルトやらティーンズハートやらホワイトハートやらと一緒に置いてあったので……。一緒に藤原伊織を借りて誤魔化そうと思ったけれど、恩田陸も借りたので何のフォローにもなっていない罠。図書館が閲覧図書の情報を公開しない施設で本当に良かった……と思いつつ自分でバラしてれば世話無いですな。
もっと沢山読めれば、その中でも特に気に入った本だけ紹介できるんだけどなあ。年間百冊ごときでは無理か。
帰省に備えて大量に読むべし。べし。

『天然理科少年』『千年王子』『絶対安全少年』『銀河電燈譜』『図書室の海』『禁じられた楽園』『蚊トンボ白鬚の冒険』

中々恩田がコンプできません。あと4冊くらいなんだけど。

これだ!

2004年10月23日 未分類
『てのひらの闇』藤原伊織、文芸春秋。

最後まで油断できないどんでん返し多段系。ハードボイルドのような気もするけれどでもハードボイルドじゃないんだな。極道やら銃やら木刀やら肋骨折りのコツなんかが出てきても。なんだろう、この不思議な本は。何処にカテゴライズしたらいいのか手が本を持ったまま棚の前でさまよってしまう。

出てくる人たちが基本的にいいひとなんだな、そういえば。そして八方丸く収まる大団円で建設的。この時点でハードボイルドは無理か(笑)。それにしても藤原伊織は、駄目な男を描くのが上手いなあ。駄目男でいい男で仕事は優秀。そして暴力傾向があって自己管理が出来なくて部下に駄目出し食らって。なんともかわいい。
物語の重要人物が、作中に登場しないと言う中々に変わった演出アリ。加賀美姉と佐藤政治家はでてこなかった……多分。佐伯父もか?物凄く重要な役どころが揃って欠席してたり。物足りなく思ったけど、これが一番いい捌き方なんだろう。
「東南アジアのある国」って何処なんだろう。どうして主人公はそれで見当がついて且つ納得しているんだろう……。自分の無知っぷりを晒してみる。
ナミちゃんと弟がいい味出してる。大原さんも。ドゥカティ乗り回すナミちゃんにはぶっ飛んだけどなー。経済大好きな弟は将来ランキングに名前を連ねて欲しいなあ。

タイトルの意味が解らなかったことは些細なこととして次いってみよー。

『雪が降る』

2004年10月18日 未分類
藤原伊織。講談社。

「台風」
過去の話と現在の話の間に温度差がなく、全て同じ濃度で書かれているような……。何処に焦点をあわせたら良いのかわからなくてちょっと戸惑い。唯一であるものを取り上げられたら人殺しだってするさー、ということと、それを二度経験しかけた主人公の心理との間にどんな因果関係あるいは相関関係があるのかさっぱりでした。悪役が悪役らしくて非常にいいんだけどなあ。
「雪が降る」
親友と、元恋人の親友の奥さんと、親友の息子。自嘲以外は今更実用以外の何が出てくるんだといわんばかりの主人公が語る妙な人間関係。親友のことを、親友の息子に対して誇りに思うと言った主人公が自分の誠実さに全く気づいていないのがミソ。素直に泣ける話でした。
「銀の塩」
この辺りで傾向を掴んだ気がするんだけども、いざ書こうとしたらするっと逃げられた。
「トマト」
噛めば噛むほど味が出る代わりに、味が出るまでのこの日干しのような淡々とした固さは何事なのか。口の中の水分を吸い取られそうな予感がしたので、顎がいかれる前に咀嚼を諦めました。自称人魚の彼女が水際立って鮮やかですね。
「紅の樹」
「銀の塩」と同じタイプだと思ったんだけれど、話の流れを見ると正反対だったり。逃走する人間が日常に戻ろうとして、あるいは知らず日常に足を突っ込んでいたのだけれども……、というところまでしか共通点無し。うーん、さっき逃げた言葉は何処へ行ったのか。捕まえ損ね悔しい。
「ダリアの夏」
金魚飲んだら駄目ー!真夏の路面に水溜りのように光る硝子の輝きに目を奪われるような人間だけがわかる「ゆがみ」なんじゃないかなあ、と勝手に推測。母と老人と主人公と、曲がってしまった大人の中にあって章一のなんとまっすぐなことか。この話に限っては全員がちゃんと歩き出せたのだろうなと思う。歩き出した先が何処に続くのかはまた別の話だけれど。

「台風」が秋、「雪が降る」が冬、「塩」が夏、「トマト」がちょっと限定できなくて、「紅」が冬、「ダリア」が夏。春だけないのか。まあ「紅」の冒頭は春先みたいだけど。発表時期を見ればまあ当たらずとも遠からじ。こんなとこ。

げーふごーふ。

2004年10月15日 未分類
風邪を引きました。右耳の鼓膜辺りが痛い。読み手は書き手の健康状態なんて知ったこっちゃないという自分の信条が痛感できる今日この頃。

『白い薔薇の淵まで』中山可穂、ついに読了。細く白くやわらかく、それでいて温度のない肉付きの薄い指の、ごつごつと骨っぽい感触。あるいは真っ白な骨を切れ味のいいナイフで薄く削いで磨きこみ、それを花びらにしてつくった白い薔薇。
まったく「普通の恋愛小説」です。女同士だからって普通じゃないなんてことはない。これっぽっちもない。もー、週末にしか泊まらないルールが破られるまでの一番幸福な筈の時間の最中でさえ、二人の関係が壊れることが目に見えていて痛々しい。お互いに手を離した後の平凡で軽蔑すべき幸福すら破綻するのが明らか。読んでいてひりひりする。別れたくないけど別れなきゃいけない、けれど別れられない。離れたり戻ったり嫉妬したりされたり追いかけたり逃げたり、思うようにいかないこの状態を「好き」って言うんだろうなと、やたら納得してしまった。冒頭で「あれは10年前で、わたしは今一人でニューヨークにいる」と明記されていなかったら、うかうか読んでもいられなかったに違いない。
夫がまれに見る美徳の持ち主で善良な人間に描かれているのは「それとこれとは関係ない」という物語の構造上必要なんだろうけど、ちょっとやりすぎな感は否めない。しかしこの夫から高須の事件を引っ張り出してくる手際は見事でした。
塁の人物が魅力的であると同時に類型的。むしろとく子の方が型破りなんだけども、男女の恋愛小説を見るならとく子もそれほど珍しいタイプじゃないんだよなー。違うものになるのを承知であえて例えるなら、年上の女が年下の無邪気で残酷な男にのめりこむのに似ている。もし塁が男だったら、この結末はなかったのだろうなという点一つとっても、女同士でなければならなかった理由と言うのは明白だと思われる。
牧野修、『傀儡后』読了。
見たことある名前だけど、この人何書いてんだっけなー、とぐぐってみたらそりゃあ見たことあるはずだ。『呪禁官』で「かまいたち」で『デビルサマナー』(以下略)。しかし実際読んだのはこれがはじめてかも知れん。知れん、ていうか初めて。手にとって見た理由は、恩田陸の『ロミオと〜』に載っていた既刊リスト内での紹介。「SFは守備範囲外だから」などという考えはそろそろ捨てねば、と思い始めた矢先のことだったのでナイスタイミング。

内部と外部、自分と世界の対立、反定立の根拠は境界、すなわち皮膚であると言うテーマは良いです。世界と繋がると言うことは、世界と繋がっていなかった、つまり自分は世界ではなかったというあそこら辺やそこら辺も余すことなく網羅して、細部にモチーフとして現れる「衣服」の概念が秀逸。「クチュールになる」なんていいえて妙だよなあ。服飾学校が物語の始点になるのはそういうことなんだろうと解釈。
「コミュニケーター」の設定も今の携帯依存な現代を知っている身としてはつい口元がほころんでしまう。「デス・メル」をはじめとして「ドーラー」なんかもとってもサブカルでオタク。作者絶対オタクだと確信して読んでたら、ものっそいシリアスなシーンで「ここは晴海か」に腹筋が吊りそうになった。危ない危ない。あちこちでさりげなく洒落がきいてるのがたまらない。
蓮元と夷のコンビに代表される登場人物の奇妙な記号性が、王道を知っていて踏み外さない、という捻りに見える。あちこちで前提をひっくり返すような新事実の発覚が途絶えることなく起こっている割には、世界観は少しも揺らがない。おかしい。主要登場人物の性別が実は思っているのと逆だったり、今までの記憶は全部嘘だお前は別人だとかやられたら、物語を見る視点が少しは変わっても良さそうなんだけど、その程度瑣末な事柄ですと言わんばかりの筆の運びがなんつーか「どうせ」とあらかじめ考えて/こうくるだろうと身構える読み手の予想の上を行ってる。そういう意味では変な話。
逆に気になったのが、折角登場してきた函崎の扱い。コミュを中心に話が進むと思ったら肩透かしを食らいました。七道父と沙子さんのエピソードが心震える割に、息子の桂男はどうなのよ、とか。丁寧に下準備しておいて(期待させておいて)何も無しってのは思い切りが良すぎるのか無駄手間なのか……。結局、美香さんが奈蛹のところにやってきた理由もわからんし。あっさり退場しすぎな人々も気になる。裏表紙の粗筋紹介はものすご華麗なんだけど。
ラストはなんとなく『パラサイト・イヴ』を思い出しますな。

ものすごく些細な点として、第三章ラストで「傀儡后”閣下”」っていうのがなんとも。「陛下と呼べー!」っていう直前のやり取りはなんだったんだ。
ろんどんぶりっぢいずふぉーりんだうんふぉーりんだうん♪
図書館に行って、綾辻を作品を探したらこれしか見つけられず、まあいいかー、と作品を刊行順に読むのを諦めて借りてきました。閉館30分前に鳴る音楽を、10分前に鳴るものだと勘違いしていて、物凄い勢いで借りる本を選んだので物凄いラインナップになりました。藤原伊織は『ひまわりの祝祭』を探していたんだよう。今回も5冊。次回は検索と予約を駆使して残りの恩田作品と乙一を制覇しようと思います。

『どんどん橋、落ちた』
へー、これが新本格というやつですか。わかりやすく親切な例題ありがとうございます、な短編集。収録順に読まないと駄目らしいですが、読んでみて可能な並べ替え順として「どんどん>ぼうぼう・フェラーリ・伊園家(この三つは順不同)>意外な〜」を考案。まあ、こだわる人なら「ぼうぼう>フェラーリ」の順は動かせないんだろうけど。どうせ浅はかなみじんこの脳味噌なんてこのくらい入れ替えても違いを読み取れない汚れたピックアップレンズです。
「どんどん橋、落ちた」
あー、あー、海外作品には全くもって弱いもので。ユキト=行人、というのに本文中で指摘が入るまで気付かなかった。字面で読んでいて、音で読んでいなかったのが丸わかりですね。出た当初は新鮮だったのかもしれない。しかし常日頃から人間以外が闊歩するような話ばかり読んでいると、「?」な結果に。つまりみじんこはヨゴレに他ならないと言う証拠。
「ぼうぼう森、燃えた」
犬についての知識は「常識の範囲」を超えていると思います。視力が低いのは有名だけどさ。メインのトリックについては文句ないんですが、犬についてのアレが常識の範囲にないとすると、犯人当てが成立しないんじゃないかなー、という杞憂。もしかしたら成立するんですか?
「フェラーリは見ていた」
見てました。193ページでようやくわかった。明確に回答を与えられる前に気付いたのは初めて。まあ、現実なんてそんなもんだよな。
「伊園家の崩壊」
……こんな救いの無いもの書かなくても……。子供が読んだら泣くぞ。
そういえば、「フェラーリ」で散々言及されていた「カサイさんちのシンちゃん殺害が予見的」ってネタが全く理解できなかったんですが、ああいうのってどうなんですか。どうなんですかと聞いてい置いて即座に駄目出し。作中から浮いてる身内ネタはみっともない。または作中で解消されないパロネタは消化不良で気持ち悪い。その点、伊園家はすぐわかったんで文句ないです。
……まさか、普通に読んで解るネタなのか「カサイ予見的」は!誰か教えてください。
「意外な犯人」
確か賞金が結構な値段だという話を聞いたことがあります。そしてここまで読んで漸く気付いた、この本、犯人当てに勤しんで失敗するのも確かに醍醐味だけど、失敗してる「綾辻」の見事なミスリーディングに唸るべきなのではないかと。作中人物として登場している「綾辻」と、ほぼ同じ回答になったということは、8割まで見切った!と喜ぶべきことじゃなく、その回答にたどり着くように誘導されたんだということで。いやー、見事だ。それなら見事だ。こりゃあ見事だ。

ちなみに今回借りてきた本→『どんどん橋、落ちた』『傀儡后』『白い薔薇の淵まで』『てのひらの闇』『雪が降る』。
「モンスター」見てきました。セルビー綺麗な子ですね。めろめろ。物語としてはもう少し底上げやらてこ入れやら補正やらが必要だったと思われますが、ラスト付近の電話以外は概ね満足と言うことで。
うーん、物語、というよりはドキュメンタリーに近いのかなあ。生の材料をごろりと出されて、物語として/調理済みのものとして楽しみたい方は各自で補完/調理してください、と言われたような気分。「脳内補完できる人は困らないけど、そうじゃないひとは感情移入できなくて困るとか云々」と、隣で観に行くことを熱烈主張していた筈の家主が不完全燃焼に苦しんでいます。
メロドラマな恋愛として観た分には泣けるシーンが各所に御座いましたわよ。……果たしてこの作品の宣伝を見て「メロドラマ」を目当てに観に来る人がいるのかは大いに疑問だけど。
さて、それじゃあラスプーチンとナチがラスボスに控える「ヘルボーイ」でも見て燃焼してきますかね。←これでこけたら、完全無欠にこけるために「ヴィレッジ」決定。

映画の話。

2004年10月11日 未分類
本日、家主と共に「I,Robot」を観てきました。やつは「『モンスター』が観たい、そして鬱々したい!」と主張していましたが、私の「アシモフを観ずして何がロボ子か!何がクラスタか!」という強硬な主張に折れました。矢張りガンダムを見ないことにはサブカルの何割かが理解不能なように、原典に当たらずしてロボを理解するのは不可能ですよ。三原則がいかに働くか思い知れー!
以下何事もなかったかのように、細部のみに拘った感想。

近未来(もう「近」なのですよ!)ロボが当たり前のように雑踏を歩く世界がそこにある。主人公はちょっとした事故からロボ不信に陥った刑事。時々神経科に行ったほうがいいんじゃないかなーと思われる程度で、古き良きものを愛する以外には取り立てて特徴はありません。ていうかまあ、主人公としての基本は全部押さえてるのでオッケー。そんな彼が何故かロボを売って大成長した、ロボ供給会社の開発者トップの博士からお呼び出しを食らいます。博士はよくわからん問答を残して自殺済み。自殺した瞬間のデータはビルの管理システム(ヴィッキーという女性人格)からも失われ、引きこもり人間不信をこいていた博士がどうやって死んだのかは全くの謎。周囲は自殺だと言うけれど、ロボ不信の主人公は「誰がこの強化ガラスの窓叩き割ったんだよ」と、ロボ犯行説を主張。博士の引きこもり部屋を捜索したらなんと三原則に従わないロボ=名前はサニー発見!さあ逃げるサニーをダッシュで追跡だー!
燃えどころは、ビル内廊下でのサニーVS他のロボ。人間同士の殴り合いは見ててイマイチだけど、互いに一撃必殺の機構を持っているロボ同士の接近戦は息を飲むほどカッコいい。常に殴り合いがこういうのならトリガーハッピーやめてもいいなあ。ロボなら人間だと見えない骨格や筋肉の動きがそのまま見えるというのも素晴らしい。警部が乱入してきたロボを撃ち倒すところも素敵。クリーンヒットは爽快。
最初にサニーが疑問点として提示した「ウィンク」の使用や、トラウマ持ちの刑事のロボ不信の原因が目の前で解消されるところなんかはもうベッタベタの王道お約束。鉄板ですな。しかしこのお約束の強固さ故に安心してみていられると言うのも事実。つーかお約束好きにはたまりません。

……ものっそいここだけの話、途中から「はろわ」フィルターが稼動して、ヴィッキーがイズモに見えてしまったり色々と大変でした……。反対していたはずの家主が「かーずきー!!」と帰りの車で大変ご満悦だったのは忘れてあげた方がいいんだろうか。
読んだー。
読んだー。
読んだー。
土岐さん大好き。こうなりたいと肝に銘じるほど理想だった。光を、まぶしいものを、鋭いものを、強いものを、純粋なものを、誰かの心の中で永遠に輝くものだけを、正しいと思っていた。
自分が書くものは、書きたいものはきっとそういうもので情熱と言うことだと思っていた。

自分がもう若くないと思うと余計に切ない。
『ねじの回転』見事!

恩田陸描くところの二・二六事件。人類は時間遡行の技術を確立し、その結果として(以下ネタバレにつき割愛)。
時間遡行ものは頭が悪いので苦手なんですが、久しぶりに大当たりでした。つーても時間遡行絡みで読んだ本なんて某SF大家の日本が沈没する話くらいなのでえらそうなことはいえません。基本的に時間遡行は「ループ」形式をもっているので、やり直したらああなってこうなって影響が〜、と考えているうちに大混乱、訳がわからなくなるのがお約束です。
しかし、まあ。ここまで広げた大風呂敷を、よくも見事に畳んだものです。はい、ここに取り出だしたりますは時間遡行、柄はニ・ニ六事件、中から飛び出したのは鳩ならぬ猫、ついでに言うならウィルス持ちで人類滅亡の予感!贅沢です。劫火です。もとい豪華です。鳩、逆上がり、懐中時計、ハッカー、クリップ、猫、時間遡行、壮大なループ、歴史の改竄、仕掛けはこれだけで飽き足らず、夢オチまでつけてくれちゃうそのサービス精神。
……恩田陸は文庫のラインアップを考え直した方がいいと思う。マジで。文庫作品だけを読んで培った恩田イメージは「基本的に『蛇行する〜』で、少年は大抵『ネバラン』で、女性はことごとく『木曜』。まあ当たりが多いのは『三月』よね〜」なので、まさか陸軍と海軍が仲が悪くて一触即発で東条英機を軍用銃で撃ち殺す(この頃陸軍内で使用されていた銃ってなんだっけ)話を書こうとはお釈迦様でも思うまい。軍事マニア大喜びーイエー!岡田首相暗殺失敗なんて基本よね。うふふふふふ。鈴木さんとか名前見るのも久しぶりな人が大挙して登場。キャー!ああ、でも政治ネタは食指が動かない。

日本海軍大好き。

足袋。

2004年10月9日 未分類
なんとなく本屋に寄って『キノの旅8』ゲットー!それからコンビニに行って『AGE/楽園の涯』も受け取ってまいりました。後者はなんと「出版社在庫問い合わせ」になっててビビたシロモノですが、こうして無事ゲットできれば嬉しい限り。

『キノの旅8』
ローマ数字は機種依存なので便宜的にアラビア数字表記。
「歴史のある国」
師匠ー、笑いすぎて涙が出ました。特に時候の挨拶から始まる例の手紙と、交渉のときの会話。国を滅ぼすと言う意味ではマジで「傾国の美女」ですな。ああおかしい。
「愛のある話」
久々にダークな話だー。わー。喜んだのも束の間、これでは足りん、足りんのだよ。もっとブラックを俺にー。
「ラジオな国」
ザッツエンターテイメント!!エンターテイナーの真髄を見ました。これ以上はネタバレにつき撤退。
「救われた国」
誰かに、救われた国なのか。誰かが、救われた国なのか。相変わらずサブタイトルも含めていいセンスしてるよなあ、と嘆息のタイトル。
「船の国」a,b
長ッ?!
実はプロローグに当たる方のエピソード、誰が喋っているのかわからずじまい……。定住の話なんて縁がない人だと思っていたんだけど、あの人なのかなあ。ううん、何回読んでも解らない。
「あとがき」
最初ぱらぱらっと内容を確認したとき、全く気がつかなかった……。まさかこんなあとがき、生きているうちに目の当たりにしようとは思いもよらなんだ。これって一体、どうやって書いたんだろう。GOサイン出した編集サイドもどうかしている(笑)。相変わらずの著者近影もあいまって、素晴らしい破壊力。このあとがきだけで買った価値は充分にありました。ぷはー、満足。
黒理瀬だー!

『麦海』で学校を出てから理瀬はまっしぐらに突き進んでいるようですね。うんうん。彼女の将来が非常に楽しみだ。ネタバレしたくない方は『三月』『麦海』を読んでからご覧下さい。

あの素晴らしいパパ上の母君である祖母がお亡くなりに。血の繋がっていない伯母(だか叔母だか。血が繋がっていないならこの表記は意味がない)と住むことになった理瀬。祖母君の思い出詰まる屋敷には、思い出と一緒に「魔女の館」という中傷めいた噂と、なんだかやばそうな「ジュピター」が詰まっておりましたとさ。
「ジュピター」の謎を探り出しながら、それを他の人間に悟られることなく暮らさなければならない理瀬の明日はどっちだ?!頼りになる従兄弟も二人ついてきて、最後の最後まで気が抜けないサスペンス。
いやー、好対照のいとこが好感度高めと思いきや、潜む伏兵、意外な結末。事件が転がり始めるまでの息苦しさと、転がり始めてからの一気呵成な展開、予想外の結末が非常に良い。ゴシック体がないのも素敵(そこにこだわるか)。「R」についての手記を誰が書いていたのか解らなかったので、もう一回読み直してきます。
あれだ。

『クレオパトラの夢』読了。めぐみさん久しぶりー。妹さんの性格の悪さには読んでるほうもイライラするってのな。気になったのは、恵弥と和見の双子が会話するところ。特に前半だと「視点が誰のものなのか」曖昧になることが多い。妹、と書いてあればめぐみ視点だろうに、そのすぐ後に兄、とめぐみを外から見る描写があったり、空白を挟んでいるから視点が移動したのかと思えば、そうでもないことがあったりと、誰の謎も明らかにされていない段階での視点のふらつきが目立つ。確かに視点固定すると、固定された人間の謎はだだ漏れになるから仕方ないのかもしれないけど、もう少しなんとかならかったのかなー。
「実際はないものを、みんなが勘違いして追っかけるものだから、参加者全員があると信じちゃってどうしてくれるのよないものはないって言ってるでしょ!と逆切れ、じゃあこうなったらないものをあるように見せかけた挙句おおっぴらに処分するわよこれで元々あってもなくてもなくなったでしょ?!とばかりに壮大に機密を処分する振りをする話」。
と、思いきや。
という話。

ここまでもここからも素晴らしくネタバレな気もしないではない。

ラストで「実はずうっと気付かなかったんだけど、本当は考えてたのと逆なのよね?真相は推理と真逆で、あれはこうでこれはこうなのよね?……証拠はないから推測だけど〜」っていう展開で「実は推測が真相であったことを匂わす」手法なんてありふれていてよ。

実はそんなことはどうでも良く。
「恩田作品なのに文中に突然ゴシック体が挿入されることが一度もなかった!」
偉大なことです。
読み終わってからしばらく「あれ〜?」と思いながら気付かなかった。
大脱走だ!しかもちゃんと起承転結できっちり落ちて終わっています!ありえねえ恩田陸!(ものすごい暴言)。

『ロミオとロミオは永遠に』恩田陸、ハヤカワSFシリーズJコレクション。読みました。面白かったです。サブカル好きにはたまらん話です。ジャンプの三大テーマって努力友情勝利だったと思ったけどなー。正義友情勝利だっけ?うわー、混乱してきた。
で、サブカルに対するオマージュとか言ってますがパロディにしか見えない私。パスティーシュって何だっけ。いやーしかし、アレだ、とても素敵だ。恩田陸芸風広いな。むしろこういう話を書いてたほうが良いんじゃないのかなー。文庫で読んだ分で培ったイメージがガタガタと音を立てて良い方向に崩れて行きます。いやそういじゃなくてさ。何が言いたいのかと言うと、ちゃんと結末があって、お話としてこれ以上無いほどきちんと終わっていますよと、それを叫びたい。世界の中心では愛しか叫べないので布団の中心辺りでこそっと。
難関試験を苦労して乗り越え、憧れの学園に入学してみたら聞くと見るでは大違い、百聞は一見にしかず、なんとか天国なんとか地獄、恐怖の管理型労働地獄に叩き落されちゃった少年二人が主人公。学園のありように疑問を持った人間が幾度も脱出を試みているが、警備が格段に厳しくなった最近では成功例がない。しかしそこはそれこれはこれ、彼らは脱走するのです。トンネルを掘って、空を目指して、輸送用トラックに忍び込んで。待ち受ける数々の苦難と困難とアクシデントと仲間の脱落を乗り越えていく。青春だー。脱出した先に何が待つのかは誰も知らない。ただ、「成仏する」と言う言葉がまことしやかに囁かれ、脱出に成功したものは日本の何処を探しても見つからない。煙のように消えてしまうその「成仏」の謎に迫るのと同時進行で脱出の手筈は着々と進行していく。
主人公二人組みの友情もいいですよ。内通者のあっと驚く正体も良い。時々、描写が足りなくて何が起こっているのか把握しづらい箇所もあったりしますがその程度は軽く読み流してスルー。サブカルに詳しければ一粒で三度おいしい『ロミオとロミオ』。恩田らしからぬキャラクター造形が好感度高めで「恩田陸は登場人物が少女小説っぽい」と敬遠している向きにもお勧めできる一品。

ちなみにサブカルに理解の無いみじんこ母は意味がわからなくて途中で投げたそうです。面白いのになー。サブカルわからなくても青春群像で脱出劇として読めば盛り上がること請け合いなのになー。勿体無い。
お金もないしー、やる気もないしー、歩いていけるところに図書館があるのなら、活用しない手はないですよ奥さん。ねえ奥さん、今日の夕食はサンマですか?デザートに梨なんかいかがでしょうか(大分頭がおかしな方向へトリップ中)。
つーわけで初・図書館利用で恩田陸5冊借りてきました。家の電話番号が解らなくて(普段使っていない。ネット回線専用と化している)、貸し出しカードつくるのに手間取ってしまいましたが、以後通いつめる所存にござる。

まずは一冊目『劫尽童女』読了。
タイトルから想像していたのは、日常生活にそろりと忍び込んでくる超常現象を宗教テイストでホラーかつファンタジーに仕上げた話だったので、実際の内容を目の前にして思ったのが「自分センスない」。珍しく真っ向からファンタジー(どちらかといえばSFよりなのだろうけど恩田陸なのでファンタジー)。日常を根底に変な現象を描くロゥファンタジーも上手いけど、真っ向勝負のファンタジーを書いたらそれも絶対に面白いだろうと思っていたので、ここまで正面切って「超能力」(超感覚も自分内特殊能力分類では超能力だ)を持った主人公が出てくるとは思わなくて大喜び。いいよーいいよー、思う存分やっちゃってくれさい。
しかしこれは本当に恩田陸なのだろうかと文章の平坦さに首を傾げつつノンストップしてたら、……紛れもなく恩田陸でした。どうしてこの人は明らかに「起承転結」のある、筋の通ったストーリーを書くのに、最後がこけるんだ。ストーリーのない話なら別にラストがこれでも怒らないけどさ……。蛇足なのか足りないのか竜頭蛇尾なのか。面白くて盛り上がるだけにこの落差は読者を突き落としてくれるね。しかもほぼ毎回。泣ける。
普通の人間にはない能力を持った主人公が、住む場所を転々としながら敵と戦い、気がついたら大きな流れに突入、最後にでかい事件が待ってるぞー、というある意味では王道お約束パターン。筒井の「七瀬」を思い出したけど、思い出す割には読んだことがないので比較できず。タイトル「劫尽童女」にはなるほどと納得させられたのも束の間、結局主人公は何処へ向かうのかわからんまま意味不明な確信と共に去ってしまわれるので、やっぱりタイトルがどう呼応しているのかわからなくなった。
それでもかなり当たりですよ。面白いですよ。超能力訓練のシーンなんて昔懐かしいヒロインが火星人の少女漫画を思い出してにやにやしてました。うふふ。

「マリ見て」も「マ」って表記にならないことはないと、今気がついた。そんなことする人はいないと思うけど、もしそうなったらややこしい限り。
三件連続で売り切れ、4件目でラスト一冊をようやくゲット、待望の『これがマのつく第一歩!』読みましたよー。うひひひ。
ネタバレありますので見たくない方はくるっと踵を返して本屋へどうぞ。

……前回の内容を殆ど覚えていなかった。思い出しつつ読んで、サラ様は絶対悪だよな!悪でなきゃ嘘だ!水色のマントを渡したのだって絶対故意犯だよな、寧ろこの場合だけは確信犯という単語を使用しても許されるだろう!と、息巻いていたのだったなあと自分の偏見が当たっていたことに概ね満足しました。
つーか、ものっそ気になるんですが、作中の軍曹ネタは「フルメタルジャケット」のハートマン軍曹が出所でいいんですよね?たまたまこの間見たばかりだったので、えらい笑わせてもらいました。まー、口を開けば糞でピーな元ネタにくらべれば大分ぬるいですが。
で。
なんでこんなところで切れてるわけー?!
しかも続きは可及的速やかと言いつつ今冬だしね……。がっくり。話が進んでないのに引っ張られても泣けるっつーねん。グレタの愛らしさだけであと最低2ヶ月(みじんこ予想)待つのは厳しい……。最近某あの人が某Nみたいになってきてすげえ嫌なんですが、これも向こう側についてる間だけですよね、謎が解けて大団円で解決したら元に戻ってくれ頼むむしろたのぬ。←ミスタイプそのままネタ使用。
松本さんはアナログじゃなくなった辺りから随分絵が変わりましたなあ。アナログ塗り好きだったんだけどなー。
いつものことながら変換に苦労するタイトル。「さま」なのか「様」なのか、「みてる」なのか「みている」なのか(「みる」「見る」のバリエーションも含めるとえらいことに)。時々、「マリヤ」って表記してる人も見かけます。
そんなことはどうでもいい、今野緒雪『マリア様がみてる〜特別でないただの一日』読了。ちなみに家主のです。みじんこ本人は『マ』待ち。待ちっていうか近所の本屋では売っていないので遠出するしか……がっくり。

なんだか最近厳しい。なんなのかこの「NOTみっしり感」は。すかすかというよりは、薄めすぎたスープの如き味わい。これだけ人が出てきて色々起こってるんだから、はしょらないで上下巻にしてきっちりぎゅうぎゅう書いて欲しかったですな。
瞳子嬢がツンデレでたまりません。なんちゅーか独壇場ですがな。ついに「ドリル」と言われてしまったけれど、作者は彼女があちこちでドリル呼ばわりされていることを知っててやったんだろうな……。にんともかんとも。てか、可南子嬢も問題が解決したらしいし、これでまたどっちが妹になるのかわからなくなってきました。いや、感想書くまですっかり忘れてて、もう瞳子嬢で確定だと信じてましたが。どうせなら反則二人妹とかどうですか。主人公ならではの大反則ですが、多分みんな許すと思う(笑)。

ところでコバルトは少女小説誌なのにどうしてボーイズラブの特集なんぞを組むのか……!そんなものは他所に任すか別レーベルを立てるかして欲しいもんです。
よく考えたら、こないだマリ見てを表紙に特集組んだ後、すぐにBL特集って、ものすご節操のない話ですね。

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