春のせいにして(購入日記)
2006年4月14日 購入日記いとも楽しげな海外作品(特にSF)のレビュー感想を見るたびに、「超ときめくー買う買う読む次これ」と萌え燃えしているのに、実際本屋に足を運ぶとはて一体何を買おうとしていたのかしら、と頭の中には楽しいイメージ以外の何物も残っておらず、書名はおろか著者名まですっぽ抜けているありさま。
うーんうーんと悩むこと1時間。なんでかこんなラインナップで購入。
『恐るべき子供たち』コクトー著、鈴木力衛訳、岩波文庫。
『城』カフカ著、前田敬作訳、新潮文庫。
前者を見てるとエドワード・ゴーリーを思い出すんですけどなんでかしら。そういうエドワード・ゴーリーもあんまりちゃんと読んだことないんですが。
積み本が増える〜♪積み本が増える〜♪
うーんうーんと悩むこと1時間。なんでかこんなラインナップで購入。
『恐るべき子供たち』コクトー著、鈴木力衛訳、岩波文庫。
『城』カフカ著、前田敬作訳、新潮文庫。
前者を見てるとエドワード・ゴーリーを思い出すんですけどなんでかしら。そういうエドワード・ゴーリーもあんまりちゃんと読んだことないんですが。
積み本が増える〜♪積み本が増える〜♪
『完訳 ペロー童話集』
2006年3月24日 読書シャルル・ペロー著、新倉朗子訳、岩波文庫。
内容(「BOOK」データベースより)
ペロー(1628‐1703)の『童話集』は、民間伝承に材を得た物語集のうちでも最も古いものといってよい。よく知られた「眠れる森の美女」「赤ずきんちゃん」「青ひげ」「長靴をはいた猫」「サンドリヨン(シンデレラ)」を始め、韻文で書かれた「ろばの皮」など全作品を収め、口承文芸研究の視点から注・解説を付した。
有名どころの童話がいくつかありますが、物語集として「最も古いもの」だけあって、実に殺伐と短いバージョンです。赤ずきんは狼に食われて終わりだし、「青ひげ」も部屋をのぞいた妻が兄とともに青ひげに逆襲惨殺で終わりだし。とてもさっぱりしているので、好みが分かれるところだと思います。本当は残酷なグリム童話が流行したのを見ると、こちらのほうが人気ありそうですが。
「グリゼリディス」は、同名の女性がその忍耐によって幸福を得る話。夫のどのような暴虐にも愛と忍耐という美徳を発揮して接し、ついには夫を改心させるという「あまりにも古臭い教訓のせいで/お笑い草になるであろう(p.18)」内容。
作者見たこの頃のパリは、女性が主権者で主で、忍耐の美徳を発揮するのは亭主の方、という状況らしいですが、それの何が悪いのかと思ってしまうわたし。忍耐の美徳は発揮されるほうが気持ちよくて、発揮するのは辛く厳しいことを知った男性が「返せよー、忍耐を発揮される側だった俺の立場返せよー」と嘆いているみたいでちょっと面白い。そういえばこういった夫婦間の関係が主題になっている物語で、男性側に忍耐の美徳をさとすような教訓ものってみないですね。
と、色々考えたんですが、グリゼリディスは結婚するときに、相手から「わたしの意志だけを重んじ、決してそれに逆らわないよう誓ってください」って言われて誓ってるんですよね。大公はあらかじめちゃんと「服従心と忍耐のない女とは結婚しないもん!」って熱烈に主張してるし。なら忍耐の美徳がどうこうではなく、契約・誓いを忠実に遂行しただけの話じゃないかしらと思えてきました。「あー、うん、誓ってるんだー、じゃあしょうがないよね」と。自業自得とか因果応報とか責任問題とか?
「愚かな願いごと」は「猿の手」のバリエーションとして読んだことがありました。てっきり、感情的になって願いごとを無駄に使い果たす話なのかと思っていたら、予想以上にジュピターの約束がオートマチックでびっくりしました。これは慎重な思考型の人間には使いこなせいなー。ひらめきが全て。一瞬で決する。
オーロラ姫は「眠れる森の美女」に登場していたのですね。義理の母親が娘を食い殺そうとして、かわりに差し出された鹿にだまされるのって白雪姫もでしたっけか。
「ねこ先生」超モユス。ねこ先生萌え。
昔読んだあの童話、もう一度読みたい!という大人向け。
ペローの教訓がいちいち気が利いて面白い。辛辣だけど。
内容(「BOOK」データベースより)
ペロー(1628‐1703)の『童話集』は、民間伝承に材を得た物語集のうちでも最も古いものといってよい。よく知られた「眠れる森の美女」「赤ずきんちゃん」「青ひげ」「長靴をはいた猫」「サンドリヨン(シンデレラ)」を始め、韻文で書かれた「ろばの皮」など全作品を収め、口承文芸研究の視点から注・解説を付した。
有名どころの童話がいくつかありますが、物語集として「最も古いもの」だけあって、実に殺伐と短いバージョンです。赤ずきんは狼に食われて終わりだし、「青ひげ」も部屋をのぞいた妻が兄とともに青ひげに逆襲惨殺で終わりだし。とてもさっぱりしているので、好みが分かれるところだと思います。本当は残酷なグリム童話が流行したのを見ると、こちらのほうが人気ありそうですが。
「グリゼリディス」は、同名の女性がその忍耐によって幸福を得る話。夫のどのような暴虐にも愛と忍耐という美徳を発揮して接し、ついには夫を改心させるという「あまりにも古臭い教訓のせいで/お笑い草になるであろう(p.18)」内容。
作者見たこの頃のパリは、女性が主権者で主で、忍耐の美徳を発揮するのは亭主の方、という状況らしいですが、それの何が悪いのかと思ってしまうわたし。忍耐の美徳は発揮されるほうが気持ちよくて、発揮するのは辛く厳しいことを知った男性が「返せよー、忍耐を発揮される側だった俺の立場返せよー」と嘆いているみたいでちょっと面白い。そういえばこういった夫婦間の関係が主題になっている物語で、男性側に忍耐の美徳をさとすような教訓ものってみないですね。
と、色々考えたんですが、グリゼリディスは結婚するときに、相手から「わたしの意志だけを重んじ、決してそれに逆らわないよう誓ってください」って言われて誓ってるんですよね。大公はあらかじめちゃんと「服従心と忍耐のない女とは結婚しないもん!」って熱烈に主張してるし。なら忍耐の美徳がどうこうではなく、契約・誓いを忠実に遂行しただけの話じゃないかしらと思えてきました。「あー、うん、誓ってるんだー、じゃあしょうがないよね」と。自業自得とか因果応報とか責任問題とか?
「愚かな願いごと」は「猿の手」のバリエーションとして読んだことがありました。てっきり、感情的になって願いごとを無駄に使い果たす話なのかと思っていたら、予想以上にジュピターの約束がオートマチックでびっくりしました。これは慎重な思考型の人間には使いこなせいなー。ひらめきが全て。一瞬で決する。
オーロラ姫は「眠れる森の美女」に登場していたのですね。義理の母親が娘を食い殺そうとして、かわりに差し出された鹿にだまされるのって白雪姫もでしたっけか。
「ねこ先生」超モユス。ねこ先生萌え。
昔読んだあの童話、もう一度読みたい!という大人向け。
ペローの教訓がいちいち気が利いて面白い。辛辣だけど。
『陰陽師 太極ノ巻』
2006年3月21日 読書夢枕獏、文春文庫。
「二百六十二匹の黄金虫」
「鬼小槌」
「棗坊主」
「東国より上る人、鬼にあうこと」
「覚」
「針摩童子」
「ゆこう」
「ゆこう」
そういうことになった。
「また呪の話か」
でお馴染みの「いつ、誰がどこからこの物語を読み始めても、常に必ずあの縁側に晴明と博雅が座って(あとがきより)」いる冒頭から、都にあらわれる怪異と遭遇する例のシリーズ。
今「針摩童子」と打ち込んで、最初の変換が「播磨」であることにびっくり。巧いわー、なるほどと手を打ちました。
「二百六十二匹〜」は、二百六十二という時点でネタが割れてしまって少しさびしかった……。
「棗坊主」が今回最大のヒット。老人二人が囲碁を打つのを眺めている間に時間が経過して、気がついたらもたれていた鍬の柄がぼろぼろに朽ちていた、っという有名エピソードが、夢枕獏の手にかかるとこうなるのですね。思わずにやにやしてしまいます。
晴明と博雅が呪について話す場面は、簡単な言葉だけで世界やものごとの成り立ち、ありようを捉えて毎回見事なものですよね。
なんでもない日常の景色から、世界の理を導き出す。でもとっても短くてわかりやすい。専門用語なし。うっかり下手な人が書いたら10倍くらいになりそう。難しいことを簡単な言葉で説明するのが頭のいい人だ、っていう結構有名な言葉を思い出します。
「さとり」は遭遇したのが鈍感な人だったら、なんの形も取れず、なんの影響も及ぼすことができなくて立ち往生しそう……と思うと間抜けなんだか愛らしいんだか。
相変わらず道満先生が素敵だ。
あとがきの「完結までは10年は楽にかかる」っていう一文に、倒れ伏したファンは多いと思います。
頼むから死ぬ前に完結させてくれと、切実に思わされる作家は少なくないけど、十年単位で完結しませんと公言するツワモノは少ない気がします。
「二百六十二匹の黄金虫」
「鬼小槌」
「棗坊主」
「東国より上る人、鬼にあうこと」
「覚」
「針摩童子」
「ゆこう」
「ゆこう」
そういうことになった。
「また呪の話か」
でお馴染みの「いつ、誰がどこからこの物語を読み始めても、常に必ずあの縁側に晴明と博雅が座って(あとがきより)」いる冒頭から、都にあらわれる怪異と遭遇する例のシリーズ。
今「針摩童子」と打ち込んで、最初の変換が「播磨」であることにびっくり。巧いわー、なるほどと手を打ちました。
「二百六十二匹〜」は、二百六十二という時点でネタが割れてしまって少しさびしかった……。
「棗坊主」が今回最大のヒット。老人二人が囲碁を打つのを眺めている間に時間が経過して、気がついたらもたれていた鍬の柄がぼろぼろに朽ちていた、っという有名エピソードが、夢枕獏の手にかかるとこうなるのですね。思わずにやにやしてしまいます。
晴明と博雅が呪について話す場面は、簡単な言葉だけで世界やものごとの成り立ち、ありようを捉えて毎回見事なものですよね。
なんでもない日常の景色から、世界の理を導き出す。でもとっても短くてわかりやすい。専門用語なし。うっかり下手な人が書いたら10倍くらいになりそう。難しいことを簡単な言葉で説明するのが頭のいい人だ、っていう結構有名な言葉を思い出します。
「さとり」は遭遇したのが鈍感な人だったら、なんの形も取れず、なんの影響も及ぼすことができなくて立ち往生しそう……と思うと間抜けなんだか愛らしいんだか。
相変わらず道満先生が素敵だ。
あとがきの「完結までは10年は楽にかかる」っていう一文に、倒れ伏したファンは多いと思います。
頼むから死ぬ前に完結させてくれと、切実に思わされる作家は少なくないけど、十年単位で完結しませんと公言するツワモノは少ない気がします。
購入日記 とあとちょっと雑記
2006年3月19日 購入日記『陰陽師 太極ノ巻』夢枕獏、文春文庫。
『完訳ペロー童話集』新倉朗子訳、岩波文庫。
文庫のコーナーを何気なく見ていたら、中央東口絵が平積みにされていたので、知らないうちに何かノベライズになったのかと手にとって震撼しました。笠井潔ですね、講談社文庫ですね。
ちょ、ほんとに東口絵?と焦って中を見たら、確かに「装丁ニトロプラス」の文字が。角川でもスニーカーでもノベライズでも企画物でもないのにニトロプラス?
っていうか笠井潔、この前に出してるヴぁんぱいやーの方は、表紙が武内崇だったじゃないですかよ……。
TYPE-MOONはファウストできのこ繋がりとして、ニトロプラスは一体どういうことなのか。講談社なのにエロゲーメーカーが装丁ってどんな事態なのか。
……ハッ。講談社ノベルスって今どこまで侵食されてたっけ……?(侵食ってものすごい言い草ですね)
という冗談はさておき、昔読んでずっと気になっていた物語がE・L・ホワイト「こびとの呪い」であることが判明し、大変嬉しいです。わーいわーい、手がかりが一個増えたー。
『完訳ペロー童話集』新倉朗子訳、岩波文庫。
文庫のコーナーを何気なく見ていたら、中央東口絵が平積みにされていたので、知らないうちに何かノベライズになったのかと手にとって震撼しました。笠井潔ですね、講談社文庫ですね。
ちょ、ほんとに東口絵?と焦って中を見たら、確かに「装丁ニトロプラス」の文字が。角川でもスニーカーでもノベライズでも企画物でもないのにニトロプラス?
っていうか笠井潔、この前に出してるヴぁんぱいやーの方は、表紙が武内崇だったじゃないですかよ……。
TYPE-MOONはファウストできのこ繋がりとして、ニトロプラスは一体どういうことなのか。講談社なのにエロゲーメーカーが装丁ってどんな事態なのか。
……ハッ。講談社ノベルスって今どこまで侵食されてたっけ……?(侵食ってものすごい言い草ですね)
という冗談はさておき、昔読んでずっと気になっていた物語がE・L・ホワイト「こびとの呪い」であることが判明し、大変嬉しいです。わーいわーい、手がかりが一個増えたー。
三島由紀夫、新潮文庫。豊饒の海・第一巻。
父親が三島スキーという割と悪影響な環境で育ったのに読むのははじめて。実家の本棚には何故か二冊しかなかったんだ、豊饒の海。「ある筈だ」と言われたけれど、ないものはない。
先日映画が公開された『春の雪』、宣伝でちらりと見た映像は耽美主義の粋を凝らしたよーな美しさ(喀血した血の演出がちゃちかったけど)、三島の美文に負けずとも劣らず、期待できそうねと思いつつついに見ることはありませんでした。だってあの宣伝だと、ものすごい正統派ラブストーリーみたいなんですもの。
宣伝から捏造した「映画版春の雪妄想ストーリー」↓
主人公はいい家のおぼっちゃん。ヒロインもいいところのお嬢さん。二人は恋仲で好き合っていたが、ヒロインは宮家の王子に見初められて結婚することになる。いいところのぼっちゃんといえども所詮は臣下、しかも学生。宮家との婚姻に反対できるわけもなくヒロイン結婚。そして引越し。汽車に乗って海の近くの新居へゴー。しかし結婚後も二人はひそかに姦通するのであった!
姦通なんて大逆を犯しちゃった主人公はばれて父親に勘当され、ものすごい極貧苦労生活へまっさかさま。それでもヒロインと忍び逢う。冬の日、窮乏する生活によって健康を犯されていた主人公は、ヒロインに会いに行く途中で血を吐いてぶっ倒れるのでした。
物語は二人のその後まで足掛け5(以上10年未満)年を描く。大作。
合ってるんだか合ってないんだか……。
このような想像を一瞬にして組み立て、「なんだ世間一般向けの三島チョイスか、きっと『潮騒』みたいなありえないくらいのまっとうなやつを選んだんだねー(『潮騒』未読)、はいはい白三島白三島」とものすごい勘違いをしていました。なので清顕が鬱屈した性根の持ち主であることがわかったときには一安心しました。あー、普通に三島だなーと。
しかしこんな捻じ曲がった内省に過ぎる清顕を主人公に据えて、どうやって映像化したのか……逆に気になる映画版。
飯沼の退場が早くてびっくり。シャムの王子二人が端役かと思っていたら意外と構成上重要な立場で唸った。蓼科はいやなばーさんだなーと思っていたら、二人が密会するようになってからと言うものキャラ立ちが非常に強烈で、いいとこ持って行きますね。
これがたった一年の間に起こったできごとなのか……。
殺人犯の女が法廷で証言するエピソードなど、合間合間に印象の強い話が挿し込まれている。もーなんていうかとにかく上手い。
あと、一言一句オール耽美で、情景描写などぱっと目の前に光景が浮かび上がります。雪の降る朝や、午後の海辺、ちょっと振り返った妃殿下の横顔、清顕の夢日記など。
ぎゃーうつくしいと叫んでのたうちまわる。
大正初期の貴族社会を舞台に繰り広げられる悲恋物語なのですが、悲しいラブストーリーというよりは、この頃はまだ身分違いお家柄の問題だけで「禁忌の恋」ができたんだなあということのほうが感慨深かったです。勅許のちから、お上という言葉の重さ。源氏物語が思い出される時代背景ですね。位人臣を極めても所詮は臣下、上の勅にはけして逆らうことができない宮廷の恋。
今や恋愛に禁忌なんてない時代。身分違いや家同士のいさかいなんて滅多なことではお目にかかれず、婚約してるから結婚してるからという程度では「禁忌」など口幅ったいわー、という風紀の紊乱ぶり。同性同士なんて問題にもならない。不倫は文化らしいしな。近親相姦まで至ってようやく「禁忌」になる現代は、ドラマチックな悲恋に向いてない気がします。
その近親相姦ですら、兄弟姉妹程度ではそれほど重い禁忌でもない風潮ですし。現代に残された禁忌はあとどのくらいだろう。
読みにくいわけでもないのに、買ってから読み終わるまでなんだかとっても時間がかかりました。面白かったのに中断すること7度くらい?読書する力が衰えている……。
次巻以降も楽しみです。しかし解説が何を言っているのかさぱりわからなかった。
父親が三島スキーという割と悪影響な環境で育ったのに読むのははじめて。実家の本棚には何故か二冊しかなかったんだ、豊饒の海。「ある筈だ」と言われたけれど、ないものはない。
先日映画が公開された『春の雪』、宣伝でちらりと見た映像は耽美主義の粋を凝らしたよーな美しさ(喀血した血の演出がちゃちかったけど)、三島の美文に負けずとも劣らず、期待できそうねと思いつつついに見ることはありませんでした。だってあの宣伝だと、ものすごい正統派ラブストーリーみたいなんですもの。
宣伝から捏造した「映画版春の雪妄想ストーリー」↓
主人公はいい家のおぼっちゃん。ヒロインもいいところのお嬢さん。二人は恋仲で好き合っていたが、ヒロインは宮家の王子に見初められて結婚することになる。いいところのぼっちゃんといえども所詮は臣下、しかも学生。宮家との婚姻に反対できるわけもなくヒロイン結婚。そして引越し。汽車に乗って海の近くの新居へゴー。しかし結婚後も二人はひそかに姦通するのであった!
姦通なんて大逆を犯しちゃった主人公はばれて父親に勘当され、ものすごい極貧苦労生活へまっさかさま。それでもヒロインと忍び逢う。冬の日、窮乏する生活によって健康を犯されていた主人公は、ヒロインに会いに行く途中で血を吐いてぶっ倒れるのでした。
物語は二人のその後まで足掛け5(以上10年未満)年を描く。大作。
合ってるんだか合ってないんだか……。
このような想像を一瞬にして組み立て、「なんだ世間一般向けの三島チョイスか、きっと『潮騒』みたいなありえないくらいのまっとうなやつを選んだんだねー(『潮騒』未読)、はいはい白三島白三島」とものすごい勘違いをしていました。なので清顕が鬱屈した性根の持ち主であることがわかったときには一安心しました。あー、普通に三島だなーと。
しかしこんな捻じ曲がった内省に過ぎる清顕を主人公に据えて、どうやって映像化したのか……逆に気になる映画版。
飯沼の退場が早くてびっくり。シャムの王子二人が端役かと思っていたら意外と構成上重要な立場で唸った。蓼科はいやなばーさんだなーと思っていたら、二人が密会するようになってからと言うものキャラ立ちが非常に強烈で、いいとこ持って行きますね。
これがたった一年の間に起こったできごとなのか……。
殺人犯の女が法廷で証言するエピソードなど、合間合間に印象の強い話が挿し込まれている。もーなんていうかとにかく上手い。
あと、一言一句オール耽美で、情景描写などぱっと目の前に光景が浮かび上がります。雪の降る朝や、午後の海辺、ちょっと振り返った妃殿下の横顔、清顕の夢日記など。
ぎゃーうつくしいと叫んでのたうちまわる。
大正初期の貴族社会を舞台に繰り広げられる悲恋物語なのですが、悲しいラブストーリーというよりは、この頃はまだ身分違いお家柄の問題だけで「禁忌の恋」ができたんだなあということのほうが感慨深かったです。勅許のちから、お上という言葉の重さ。源氏物語が思い出される時代背景ですね。位人臣を極めても所詮は臣下、上の勅にはけして逆らうことができない宮廷の恋。
今や恋愛に禁忌なんてない時代。身分違いや家同士のいさかいなんて滅多なことではお目にかかれず、婚約してるから結婚してるからという程度では「禁忌」など口幅ったいわー、という風紀の紊乱ぶり。同性同士なんて問題にもならない。不倫は文化らしいしな。近親相姦まで至ってようやく「禁忌」になる現代は、ドラマチックな悲恋に向いてない気がします。
その近親相姦ですら、兄弟姉妹程度ではそれほど重い禁忌でもない風潮ですし。現代に残された禁忌はあとどのくらいだろう。
読みにくいわけでもないのに、買ってから読み終わるまでなんだかとっても時間がかかりました。面白かったのに中断すること7度くらい?読書する力が衰えている……。
次巻以降も楽しみです。しかし解説が何を言っているのかさぱりわからなかった。
受け取り期限が近いと言うのに、コンビニが閉まってて出直すはめになりかなり青ざめましたが無事げっとー。
『BLEACH』の21巻と、オフィシャルキャラクターブック。
後者は雑誌連載ならではの「本誌見てないと取りこぼすよー!」な細かいものまで拾ってくれて大変ありがたいできです。しかし書き下ろしのルキア側エピソードがアニメ本の方に収録だなんてそんなあ! アニメ興味ないルキア萌えに死ねと!
なんだかテンションがおかしいですね。
『BLEACH』の21巻と、オフィシャルキャラクターブック。
後者は雑誌連載ならではの「本誌見てないと取りこぼすよー!」な細かいものまで拾ってくれて大変ありがたいできです。しかし書き下ろしのルキア側エピソードがアニメ本の方に収録だなんてそんなあ! アニメ興味ないルキア萌えに死ねと!
なんだかテンションがおかしいですね。
怪談之怪(京極夏彦、木原浩勝、中山市朗、東雅夫)、メディアファクトリー。
怪談之怪メンバー四名が、雑誌『ダ・ヴィンチ』誌上にて怪談之怪コーナーで募集した投稿作品を元に、「怪談を書く」実践的手法を徹底レクチャーする一冊。
怖い話が大の苦手なので、読むのに大変苦労しました。怖くて夜読めない。昼間でも一人では読めない。でも怖い話が大好きなので読む。
怪談とは何か?
都市伝説とは違うのか?
心霊レポートとは違うのか?
怪談の定義、怖さのツボ、ジャンルの境目、ありとあらゆる角度から「怪談」を極めつくし、では怖い話を書こうではないか諸君!という頭からしっぽまでみっちり怪談尽くしの本でした。
投稿作品を取り上げ、それを添削する形で「どうすれば怖いのか?」と怪談を書くコツをレクチャーしているのですが、投稿作品自体は素人のものなのでそれほど怖くありません。創作怪談だとわかっているのであらかじめ「創作だ創作だ」と言い聞かせれば更に怖くありません。
が、とっても怖いです。
頭の中では冷静に怪談を分析する一方で、背中が不安になってくるこの矛盾。うおー怖いよー背後が気になるよー。
これだけ怖がらない準備ができているのなお怖い。わたしがチキンな性根の持ち主であるせいもありますが、添削後の作品の洗練され具合が、創作だと言い訳を許さないほど怖い。特に三時間目担当の木原浩勝による添削が見事でした。どうしてこんなに短くなってしかも怖いのですか。
あと、読んでいる間中、今までに読んだり聞いたりした怖い話を記憶にある限り思い出し、先の展開を勝手につくりあげ、脳内ブラッシュアップに全力を尽くしてしまう自分の脳みそが嫌です。これがあるから怖いのだとわかっていてもやめられない。怪談の想起力、からだに影響を及ぼす力の強さおそるべし。
なんてことのない単語を挙げただけで、勝手におそろしい連想を働かせて怯える人間こそ、怪談を楽しむのに向いているのではないか知らん。怪談を集めたサイトを見に行くと、タイトルだけで怖くて回れ右するわたしのことですが。
前書きに当たる「開校の辞」から既に怖いです。京極夏彦が書いているのですが、あらためて芸達者だなあと感心しました。
本文のチープな紙質がまたおっかなくてすばらしいですね。
怪談之怪メンバー四名が、雑誌『ダ・ヴィンチ』誌上にて怪談之怪コーナーで募集した投稿作品を元に、「怪談を書く」実践的手法を徹底レクチャーする一冊。
怖い話が大の苦手なので、読むのに大変苦労しました。怖くて夜読めない。昼間でも一人では読めない。でも怖い話が大好きなので読む。
怪談とは何か?
都市伝説とは違うのか?
心霊レポートとは違うのか?
怪談の定義、怖さのツボ、ジャンルの境目、ありとあらゆる角度から「怪談」を極めつくし、では怖い話を書こうではないか諸君!という頭からしっぽまでみっちり怪談尽くしの本でした。
投稿作品を取り上げ、それを添削する形で「どうすれば怖いのか?」と怪談を書くコツをレクチャーしているのですが、投稿作品自体は素人のものなのでそれほど怖くありません。創作怪談だとわかっているのであらかじめ「創作だ創作だ」と言い聞かせれば更に怖くありません。
が、とっても怖いです。
頭の中では冷静に怪談を分析する一方で、背中が不安になってくるこの矛盾。うおー怖いよー背後が気になるよー。
これだけ怖がらない準備ができているのなお怖い。わたしがチキンな性根の持ち主であるせいもありますが、添削後の作品の洗練され具合が、創作だと言い訳を許さないほど怖い。特に三時間目担当の木原浩勝による添削が見事でした。どうしてこんなに短くなってしかも怖いのですか。
あと、読んでいる間中、今までに読んだり聞いたりした怖い話を記憶にある限り思い出し、先の展開を勝手につくりあげ、脳内ブラッシュアップに全力を尽くしてしまう自分の脳みそが嫌です。これがあるから怖いのだとわかっていてもやめられない。怪談の想起力、からだに影響を及ぼす力の強さおそるべし。
なんてことのない単語を挙げただけで、勝手におそろしい連想を働かせて怯える人間こそ、怪談を楽しむのに向いているのではないか知らん。怪談を集めたサイトを見に行くと、タイトルだけで怖くて回れ右するわたしのことですが。
前書きに当たる「開校の辞」から既に怖いです。京極夏彦が書いているのですが、あらためて芸達者だなあと感心しました。
本文のチープな紙質がまたおっかなくてすばらしいですね。
ろくごまるに、富士見ファンタジア文庫。封仙娘娘追宝録・奮闘編5巻。
・理禍イメージと微妙に違う。ギャグっぽい。
・大饗宴大饗宴。無限に召喚される=無限回召喚される=召喚者は無限に存在する。禁止条件をからめて並行世界って素敵。
・そんな条件でいいんだったら、氷の和穂の立場って(ネタバレ)。
これで既刊分はぜんぶー。帯に「長編も短編も完全復活か!?」と書かれています。その疑問符取ってあげようよ。
・理禍イメージと微妙に違う。ギャグっぽい。
・大饗宴大饗宴。無限に召喚される=無限回召喚される=召喚者は無限に存在する。禁止条件をからめて並行世界って素敵。
・そんな条件でいいんだったら、氷の和穂の立場って(ネタバレ)。
これで既刊分はぜんぶー。帯に「長編も短編も完全復活か!?」と書かれています。その疑問符取ってあげようよ。
『切れる女に手を出すな』『名誉を越えた闘い』『夢の涯』
2006年2月20日 読書ろくごまるに、富士見ファンタジア文庫。封仙娘娘追宝録・奮闘編2〜4巻。
『切れる女に手を出すな』
・深霜が駄目なら駄目なほど四十男の格好よさが際立つけれど、同時におっさんが格好いいほど深霜がかわいく見えてきてしまうので、男の器量って大事だなと思いました。
・瑞絡の必殺の構えがうまいこと想像できず、「命」とか侍な格ゲーの徳川な人などに変換されてしまって大変。
・サザエおいしそう。
『名誉を越えた闘い』
・擬戦盤欲しい、超楽しそう。
・サボりってすばらしいよねー。
・最強借金取りあらわる。
・碁に限らず、面白いものが理解できないと言う状況に直面するととても悔しい。
『夢の涯』
・先生が本編で軍師として採用されなかった理由が、もしこの性格のせいだったとするならと考えるとシリアス感ぶち壊し。
・平行世界から無限に召喚される(微妙に違う)主人公ペアってすごく美味しい。
・「刀鍛冶、真淵氏の勝利」というタイトルは卑怯すぎる。大絶賛。ぜんぜんタイトル通りにならないじゃないか→どうなってるのこの状況→犯人誰な(ネタバレにつき以下略)
・ヴァンダインの二十則ってなんですか?
順調にはまっている。
『切れる女に手を出すな』
・深霜が駄目なら駄目なほど四十男の格好よさが際立つけれど、同時におっさんが格好いいほど深霜がかわいく見えてきてしまうので、男の器量って大事だなと思いました。
・瑞絡の必殺の構えがうまいこと想像できず、「命」とか侍な格ゲーの徳川な人などに変換されてしまって大変。
・サザエおいしそう。
『名誉を越えた闘い』
・擬戦盤欲しい、超楽しそう。
・サボりってすばらしいよねー。
・最強借金取りあらわる。
・碁に限らず、面白いものが理解できないと言う状況に直面するととても悔しい。
『夢の涯』
・先生が本編で軍師として採用されなかった理由が、もしこの性格のせいだったとするならと考えるとシリアス感ぶち壊し。
・平行世界から無限に召喚される(微妙に違う)主人公ペアってすごく美味しい。
・「刀鍛冶、真淵氏の勝利」というタイトルは卑怯すぎる。大絶賛。ぜんぜんタイトル通りにならないじゃないか→どうなってるのこの状況→犯人誰な(ネタバレにつき以下略)
・ヴァンダインの二十則ってなんですか?
順調にはまっている。
『闇をあざむく龍の影』『刃を砕く復讐者』(上下)『くちづけよりも熱い拳』
2006年2月19日 読書ろくごまるに、富士見ファンタジア文庫。封仙娘娘追宝録7〜9巻、奮闘編1巻。
『闇をあざむく龍の影』
・鍋及び茶漬けを前に苦悩する刀。
・恵潤かわいいよ恵潤。
・順番の入れ替え及び、散らばった関係のある複数人をさばくのが堂に入ってうまいなあ。
・晴嵐かわいいよ晴嵐。
・和穂ずっと戦ってない気がする。
『刃を砕く復讐者』(上下)
・目次が「序章・終局へ至る為の幾つかの序曲」のみという斬新さ。
・結舞かわいいよ超ときめく。
・上巻発売から下巻発売までの間に5年間の空白があるそうです。5年って。
・導果先生はすごくアレな人で、素敵を通り越してうっかり好きなんて言えない壊れ方ですね。
・もっかい言おう、結舞かわいいよ結舞。
・止まったのが上巻と下巻の間でよかったねと思ってしまうほどのラスト。
・あんまり白くない。
『くちづけよりも熱い拳』
・じょうろを狐と似ていると感じる感性
・レンゲ16倍体
・踏みとどまる限りは尊敬に値する
・レンゲ王かわいいよレンゲ王
・鱗帝竿の欠点
が笑いポイントでした。レンゲばっかりだ。
『闇をあざむく龍の影』
・鍋及び茶漬けを前に苦悩する刀。
・恵潤かわいいよ恵潤。
・順番の入れ替え及び、散らばった関係のある複数人をさばくのが堂に入ってうまいなあ。
・晴嵐かわいいよ晴嵐。
・和穂ずっと戦ってない気がする。
『刃を砕く復讐者』(上下)
・目次が「序章・終局へ至る為の幾つかの序曲」のみという斬新さ。
・結舞かわいいよ超ときめく。
・上巻発売から下巻発売までの間に5年間の空白があるそうです。5年って。
・導果先生はすごくアレな人で、素敵を通り越してうっかり好きなんて言えない壊れ方ですね。
・もっかい言おう、結舞かわいいよ結舞。
・止まったのが上巻と下巻の間でよかったねと思ってしまうほどのラスト。
・あんまり白くない。
『くちづけよりも熱い拳』
・じょうろを狐と似ていると感じる感性
・レンゲ16倍体
・踏みとどまる限りは尊敬に値する
・レンゲ王かわいいよレンゲ王
・鱗帝竿の欠点
が笑いポイントでした。レンゲばっかりだ。
『憎みきれない好敵手』
2006年2月18日 読書ろくごまるに、富士見ファンタジア文庫。封仙娘娘追宝録6
・好敵手って誰だ。勇吾と恵潤?
・恵潤かわいいよ恵潤。
・戦力が増えません。
・おじさんズ情けない。
・ばらけた複数人を捌くほうが得意なのか。こっちのほうが面白い。
・なんか組織が出てきたよ。
・好敵手って誰だ。勇吾と恵潤?
・恵潤かわいいよ恵潤。
・戦力が増えません。
・おじさんズ情けない。
・ばらけた複数人を捌くほうが得意なのか。こっちのほうが面白い。
・なんか組織が出てきたよ。
『泥を操るいくじなし』『夢を惑わす頑固者』『黒い炎の挑戦者』
2006年2月17日 読書ろくごまるに、富士見ファンタジア文庫。封仙娘娘追宝録3〜5巻をざくっと読みました。
前回から続く投げやりな箇条書き感想。
『泥を操るいくじなし』
この辺りからタイトルの身も蓋もない一歩手前の的確さにおののく。
・一冊が「序章」「一章」「二章」「終章」しかないってすごくない?
・カウントダウンはわかっていても盛り上がりますね。
・やっぱり心理面の展開が唐突。
・丁寧にインフレを防ごうとする手口が洗練されてきた。
『夢を惑わす頑固者』
・硬骨なジジイってときめくよね。
・ザ・ワールド時間よ止まれ!(爆笑した)
・時間軸とかときどきSFっぽい説明が……。
・中華ファンタジーにあるまじき用語はやめて欲しい。
・心理面での(以下略)
『黒い炎の挑戦者』
・ひどい人格を描写させたら素晴らしい切れ味ですね!
・「我は七つの夜を燃え盛ろうよ」超かっこいい。
・ああー器物の擬人化超ときめく。
・なんだかんだ言いつつせっせと読んでいる。
前回から続く投げやりな箇条書き感想。
『泥を操るいくじなし』
この辺りからタイトルの身も蓋もない一歩手前の的確さにおののく。
・一冊が「序章」「一章」「二章」「終章」しかないってすごくない?
・カウントダウンはわかっていても盛り上がりますね。
・やっぱり心理面の展開が唐突。
・丁寧にインフレを防ごうとする手口が洗練されてきた。
『夢を惑わす頑固者』
・硬骨なジジイってときめくよね。
・ザ・ワールド時間よ止まれ!(爆笑した)
・時間軸とかときどきSFっぽい説明が……。
・中華ファンタジーにあるまじき用語はやめて欲しい。
・心理面での(以下略)
『黒い炎の挑戦者』
・ひどい人格を描写させたら素晴らしい切れ味ですね!
・「我は七つの夜を燃え盛ろうよ」超かっこいい。
・ああー器物の擬人化超ときめく。
・なんだかんだ言いつつせっせと読んでいる。
『天を騒がす落とし物』『嵐を招く道士たち』
2006年2月15日 読書ろくごまるに、富士見ファンタジア文庫。「封仙娘娘追宝録」シリーズ1・2巻。
5年ぶりに新刊が出たということで、借りて読みました。持ち主から聞く前評判。
「殷雷刀かわいいよ殷雷刀」
そうか、刀で擬人化すると男の殷雷が可愛いと申すか持ち主(27歳男)よ。
度し難い業の深さよのう。
ざくっと読みました。以下感想。
『天を騒がす落とし物』
下半分が白いよ!下半分どころか改行が多くてページの半分くらいが白い気がするよ!
ヒロイン仙人がうっかりして宝具を人間界にぶちまける。人間に戻って拾いにいく。護衛に刀の宝具をつけてもらう。刀は人型に化けるし意思もあるし喋りますよーというところからはじまる一人と一本の珍道中。
・前評判どおり刀は結構可愛い。
・後半の展開はやすぎ。
・非常にベタだけど、器物がその本性によって能力を発揮し/制限されながら戦うのってときめくよね。
『嵐を招く道士たち』
・回収が進むほどインフレする敵味方の戦力を調整するために気をつけている作者の手の内が露骨過ぎてちょっと困る。
・ときどき登場人物の心理展開がはやすぎる。
・シリアスとギャグの絶妙な配分、というか境界線をぎりぎり綱渡りタイトロ−プダンサーな空気がおもしろくてよいですね。
ここでやめてやるー!ということはなく、むしろさー次巻行ってみようー!という楽しさ。
5年ぶりに新刊が出たということで、借りて読みました。持ち主から聞く前評判。
「殷雷刀かわいいよ殷雷刀」
そうか、刀で擬人化すると男の殷雷が可愛いと申すか持ち主(27歳男)よ。
度し難い業の深さよのう。
ざくっと読みました。以下感想。
『天を騒がす落とし物』
下半分が白いよ!下半分どころか改行が多くてページの半分くらいが白い気がするよ!
ヒロイン仙人がうっかりして宝具を人間界にぶちまける。人間に戻って拾いにいく。護衛に刀の宝具をつけてもらう。刀は人型に化けるし意思もあるし喋りますよーというところからはじまる一人と一本の珍道中。
・前評判どおり刀は結構可愛い。
・後半の展開はやすぎ。
・非常にベタだけど、器物がその本性によって能力を発揮し/制限されながら戦うのってときめくよね。
『嵐を招く道士たち』
・回収が進むほどインフレする敵味方の戦力を調整するために気をつけている作者の手の内が露骨過ぎてちょっと困る。
・ときどき登場人物の心理展開がはやすぎる。
・シリアスとギャグの絶妙な配分、というか境界線をぎりぎり綱渡りタイトロ−プダンサーな空気がおもしろくてよいですね。
ここでやめてやるー!ということはなく、むしろさー次巻行ってみようー!という楽しさ。
J.L.ボルヘス作、鼓直訳、岩波文庫。短編集。
八岐の園
トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス
アル・ムターシムを求めて
『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール
円環の廃墟
バビロニアのくじ
ハーバート・クエインの作品の検討
バベルの図書館
八岐の園
工匠集
記憶の人、フネス
刀の形
裏切り者と英雄のテーマ
死とコンパス
隠れた奇跡
ユダについての三つの解釈
結末
フェニックス宗
南部
物語と言うよりは、観念と記号と数学と世界の構造大解体再構築な印象の強い短編集。凝縮されすぎて説明するのがとっても大変な短編がこれでもかと詰め込まれています。実在しない書物に、実在しない書物の引用・注釈を散りばめ、実在しない誰かが実在しない世界を語る、だけでなく虚構と現実をあっさりまたぎこして実在も架空も区別なく平等に扱われていたりするので、一体どこからどこまでが本当で嘘なのかめくるめくメタフィクションへダイブしたい人にはとてもおすすめ。このメタ加減はエーコといい勝負です。というか「バベルの図書館」は間違いなく『薔薇の名前』を直撃していますよね。図書館の主の名前はホルヘだったし。
時間の並行と「ありとあらゆる可能性が同時に存在する」本/迷宮について語られる「八岐の園」を読んでいると、選択肢によって物語が分岐してゆくPCゲームソフトを思い出します。ノベル形式でループものだったりすると倍率ドン。ありとあらゆる可能性を繰り返し、並列させ、選び取り、やり直す。あるいは現在の選択によってさかのぼって過去がつくられる。「時間」と物語の関係を愛する人間には、他の「時間」ヴァリエーション短編は心臓直撃のときめきです。誰か「アル・ムターシム」と「ハーバート・クエイン」に登場する本の内容をコンセプトに物語を書いてはくれないものかしら。
「バビロニアのくじ」の数学大増殖な雰囲気はどこかで見たことがあります。が思い出せない。「バベルの図書館」はやっと出会えたねひゃっほー!とわたし大喜び。「記憶の人」「刀」はふつうにストーリーがあってとっつきやすいのでどうぞ。「死とコンパス」はなにこの殺し愛、とうっかり萌えました。
時間を扱ったノベル形式な18禁PCゲームソフト(複数)については、タイトルをあげると検索で無駄足を踏む人が大量発生してしまいそうなのでご想像におまかせします。ていうかメジャーすぎて名前挙げるのが恥ずかしいようわーん。
八岐の園
トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス
アル・ムターシムを求めて
『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール
円環の廃墟
バビロニアのくじ
ハーバート・クエインの作品の検討
バベルの図書館
八岐の園
工匠集
記憶の人、フネス
刀の形
裏切り者と英雄のテーマ
死とコンパス
隠れた奇跡
ユダについての三つの解釈
結末
フェニックス宗
南部
物語と言うよりは、観念と記号と数学と世界の構造大解体再構築な印象の強い短編集。凝縮されすぎて説明するのがとっても大変な短編がこれでもかと詰め込まれています。実在しない書物に、実在しない書物の引用・注釈を散りばめ、実在しない誰かが実在しない世界を語る、だけでなく虚構と現実をあっさりまたぎこして実在も架空も区別なく平等に扱われていたりするので、一体どこからどこまでが本当で嘘なのかめくるめくメタフィクションへダイブしたい人にはとてもおすすめ。このメタ加減はエーコといい勝負です。というか「バベルの図書館」は間違いなく『薔薇の名前』を直撃していますよね。図書館の主の名前はホルヘだったし。
時間の並行と「ありとあらゆる可能性が同時に存在する」本/迷宮について語られる「八岐の園」を読んでいると、選択肢によって物語が分岐してゆくPCゲームソフトを思い出します。ノベル形式でループものだったりすると倍率ドン。ありとあらゆる可能性を繰り返し、並列させ、選び取り、やり直す。あるいは現在の選択によってさかのぼって過去がつくられる。「時間」と物語の関係を愛する人間には、他の「時間」ヴァリエーション短編は心臓直撃のときめきです。誰か「アル・ムターシム」と「ハーバート・クエイン」に登場する本の内容をコンセプトに物語を書いてはくれないものかしら。
「バビロニアのくじ」の数学大増殖な雰囲気はどこかで見たことがあります。が思い出せない。「バベルの図書館」はやっと出会えたねひゃっほー!とわたし大喜び。「記憶の人」「刀」はふつうにストーリーがあってとっつきやすいのでどうぞ。「死とコンパス」はなにこの殺し愛、とうっかり萌えました。
時間を扱ったノベル形式な18禁PCゲームソフト(複数)については、タイトルをあげると検索で無駄足を踏む人が大量発生してしまいそうなのでご想像におまかせします。ていうかメジャーすぎて名前挙げるのが恥ずかしいようわーん。
高村薫、新潮社。
長いこと読みさしで放置していた下巻、ようやく読み終わりました。相変わらず盛り上がってからはノンストップなのですが、盛り上がるまでが重いこと重いこと。格闘いたしました。
そしていったいどう感想を書いたらいいのか途方に暮れます。『照り柿』以降毎回途方に暮れている気がする……。
とりあえず言えることは、理解不能であった現在の日本の政治が、なぜにああもう曖昧に不明瞭で理解を拒むのか理解できました。民衆の要求と体制の鈍重さを政治家がすり合わせ、さし当たっての決断だけで進むその日々が、このような毎日を繰り返し積み上げたのが政治だというなら、この混迷も時代遅れもさもありなん。理解不能な現代日本の政治経済についてのとっかかりとしては十分でありました。
人間が濃い。執拗な描写が一人一人をリアルにぶ厚くしている。主人公の青森の代議士福澤榮は、作者の作り出した架空の政治家であるのですが、作者は別に政治家でもなければ男性でもない、ただの小説家であるというこの驚異。公開されている資料だけで書いて、新聞社やらなにやらの専門筋から「どこから情報を仕入れたのですか」と質問されるその綿密な下調べと精確な想像力!作家恐るべし。今この人にかなう力量の小説家ってどのくらいいるのでしょう。
そして読み手がもの知らずにも程がある政治無関心層ゆえに、日本語として理解できてもどういう意味なのかわからない部分が多すぎです。たとえば「二百海里」が成立した、という一文が言わんするところは、海産物や海底資源に関する利権と縄張りの線引きのし合い、どころか自分に有利なように大国が線を引いてしまった、ということなのですが、こういう風にちゃんと理解できた部分のほうが多分少ないです。おそらく半分くらいなんのこっちゃです。
かなり最初から「息子の優が参議院から知事に転身した」と何度も繰り返されているのに、下巻の半ば、寺の本堂で集まって話を始めた辺りを読んで「これはいったい何がどうなのか」とちっとも仕掛けがわからずに考え込んだわたしはアホです。重森についても既に結果がわかっているのに、どうなるんだろうと思って読んでいました。これは記憶力がないのではなく、書いてあることをそのまま読んだだけでどういうことか理解していなかったよい証拠だと思います。
彰之の語りが中途半端に終わってしまったような気がしていますが、初江さんひどい女だな!ひどいっていうか駄目な女ですね。いや、ひどい上に駄目な女か。しかし男にとって強く気を引かれる女だということはよくわかった。しかし腹立つ。さらに腹が立つのは秋道だけれども、ラストの赤犬の仔を彼の暗喩として考えると、ものすごく暗澹たる将来が待っているのではないかと憂鬱になります。彰之の悟りっていうか明日はどっちだ……。
下巻が残り三分の一ほどになったところで、終わるのかと心配になりましたが、どこで終わっても同じ、あるいは終わりなどないというような気にもなりました。金庫番の自殺の話に焦点が合い、それがきちんと回収されたところで終わっていますが、語り続けようと思えばあと5冊くらいは続いたのではないかと思われます。
次があるとしても優はない。むしろ睦子さんが見たい。次男は次男でしかない器の小ささで、次世代は父親は廃業しても政治家はやめないとのたまった榮に比べるとみな粒が小さくて誰か物語の主人公になれるのかしら。
感想の書きようがないので、読んでいる最中に思ったことのうち思い出せることだけをだらだら書いてみました。感想やレビューを求めてネットを探してみたけれど、参考になる感想は見つけられませんでした。みんなこの本のどこを読んでいるんだ、どこから読んだらいいんだ、ヒントプリィィーズ!
長いこと読みさしで放置していた下巻、ようやく読み終わりました。相変わらず盛り上がってからはノンストップなのですが、盛り上がるまでが重いこと重いこと。格闘いたしました。
そしていったいどう感想を書いたらいいのか途方に暮れます。『照り柿』以降毎回途方に暮れている気がする……。
とりあえず言えることは、理解不能であった現在の日本の政治が、なぜにああもう曖昧に不明瞭で理解を拒むのか理解できました。民衆の要求と体制の鈍重さを政治家がすり合わせ、さし当たっての決断だけで進むその日々が、このような毎日を繰り返し積み上げたのが政治だというなら、この混迷も時代遅れもさもありなん。理解不能な現代日本の政治経済についてのとっかかりとしては十分でありました。
人間が濃い。執拗な描写が一人一人をリアルにぶ厚くしている。主人公の青森の代議士福澤榮は、作者の作り出した架空の政治家であるのですが、作者は別に政治家でもなければ男性でもない、ただの小説家であるというこの驚異。公開されている資料だけで書いて、新聞社やらなにやらの専門筋から「どこから情報を仕入れたのですか」と質問されるその綿密な下調べと精確な想像力!作家恐るべし。今この人にかなう力量の小説家ってどのくらいいるのでしょう。
そして読み手がもの知らずにも程がある政治無関心層ゆえに、日本語として理解できてもどういう意味なのかわからない部分が多すぎです。たとえば「二百海里」が成立した、という一文が言わんするところは、海産物や海底資源に関する利権と縄張りの線引きのし合い、どころか自分に有利なように大国が線を引いてしまった、ということなのですが、こういう風にちゃんと理解できた部分のほうが多分少ないです。おそらく半分くらいなんのこっちゃです。
かなり最初から「息子の優が参議院から知事に転身した」と何度も繰り返されているのに、下巻の半ば、寺の本堂で集まって話を始めた辺りを読んで「これはいったい何がどうなのか」とちっとも仕掛けがわからずに考え込んだわたしはアホです。重森についても既に結果がわかっているのに、どうなるんだろうと思って読んでいました。これは記憶力がないのではなく、書いてあることをそのまま読んだだけでどういうことか理解していなかったよい証拠だと思います。
彰之の語りが中途半端に終わってしまったような気がしていますが、初江さんひどい女だな!ひどいっていうか駄目な女ですね。いや、ひどい上に駄目な女か。しかし男にとって強く気を引かれる女だということはよくわかった。しかし腹立つ。さらに腹が立つのは秋道だけれども、ラストの赤犬の仔を彼の暗喩として考えると、ものすごく暗澹たる将来が待っているのではないかと憂鬱になります。彰之の悟りっていうか明日はどっちだ……。
下巻が残り三分の一ほどになったところで、終わるのかと心配になりましたが、どこで終わっても同じ、あるいは終わりなどないというような気にもなりました。金庫番の自殺の話に焦点が合い、それがきちんと回収されたところで終わっていますが、語り続けようと思えばあと5冊くらいは続いたのではないかと思われます。
次があるとしても優はない。むしろ睦子さんが見たい。次男は次男でしかない器の小ささで、次世代は父親は廃業しても政治家はやめないとのたまった榮に比べるとみな粒が小さくて誰か物語の主人公になれるのかしら。
感想の書きようがないので、読んでいる最中に思ったことのうち思い出せることだけをだらだら書いてみました。感想やレビューを求めてネットを探してみたけれど、参考になる感想は見つけられませんでした。みんなこの本のどこを読んでいるんだ、どこから読んだらいいんだ、ヒントプリィィーズ!
『メルクリウスプリティ 錬金術師の憂鬱』
2006年2月4日 読書苑崎透、電撃文庫。同名ゲームのノベライズ。
昔むかあし、この本の持ち主に「ここが面白いよ!」と見せてもらった部分がとてもつまらなかったので、全編そういう雰囲気だったらたまらんわと勘違いして敬遠しておりました。予想とだいぶ違っておりました。食わず嫌いはよくないことを実感しました。
しかし開いてびっくりしたのが、ルビの多さ。なんかもう真っ黒じゃないですか。この真っ黒さには見覚えがあるぞと思いつつ読んでいたら、始まってしばらく「古橋秀行っぽい文章で神坂一のネタを書いてみる」というハイブリッドに複雑骨折な文章が続いて生ぬるい笑みが浮かびました。奥付は1997年4月発行。カバー折り返しの内容紹介も、ああいかにも1997年という時代を感じさせてこっ恥ずかしいですね!恥ずかしいのは自分の若かりしころであってこの本のことではありませんけどね!
うっかりエキサイトしてしまいまいた。そんな前半を通過して、悪魔主義者の友人が登場するあたりからは、借り物ではない作者の文章が流暢に盛り上がっていい感じ。
「なんでもなあ、プラトンの『笑いについて』と交換だったらしいぜ」
(中略)
かつてその数少ない写本の存在が、アレクサンドリアさえかすむ世界最大の図書館を焼失させる原因にさえなった。だが、改革派が盛んな現在、その異端性になんの意味があるのか。
オタクって自分が好きなもののためなら、ジャンルという目に見えない垣根を飛び越えていくどころか、サブカルも純文学も文化論も宗教論も歴史もおかまいなしに自分の趣味の名の下に統合してしまうおそろしい生き物ですよね。うむ、だがそれがいい。それでなくてはオタク読書の楽しみなどない。
わがまま放題振り回し型ヒロインと、巻き込まれ主人公が好きな人は楽しめるのではないかと思われます。ああ面白かった。
イラストの人はなにゆえに「美形」と指摘のある狂信者をあんな顔に書いたのだろうか。美形?
昔むかあし、この本の持ち主に「ここが面白いよ!」と見せてもらった部分がとてもつまらなかったので、全編そういう雰囲気だったらたまらんわと勘違いして敬遠しておりました。予想とだいぶ違っておりました。食わず嫌いはよくないことを実感しました。
しかし開いてびっくりしたのが、ルビの多さ。なんかもう真っ黒じゃないですか。この真っ黒さには見覚えがあるぞと思いつつ読んでいたら、始まってしばらく「古橋秀行っぽい文章で神坂一のネタを書いてみる」というハイブリッドに複雑骨折な文章が続いて生ぬるい笑みが浮かびました。奥付は1997年4月発行。カバー折り返しの内容紹介も、ああいかにも1997年という時代を感じさせてこっ恥ずかしいですね!恥ずかしいのは自分の若かりしころであってこの本のことではありませんけどね!
うっかりエキサイトしてしまいまいた。そんな前半を通過して、悪魔主義者の友人が登場するあたりからは、借り物ではない作者の文章が流暢に盛り上がっていい感じ。
「なんでもなあ、プラトンの『笑いについて』と交換だったらしいぜ」
(中略)
かつてその数少ない写本の存在が、アレクサンドリアさえかすむ世界最大の図書館を焼失させる原因にさえなった。だが、改革派が盛んな現在、その異端性になんの意味があるのか。
オタクって自分が好きなもののためなら、ジャンルという目に見えない垣根を飛び越えていくどころか、サブカルも純文学も文化論も宗教論も歴史もおかまいなしに自分の趣味の名の下に統合してしまうおそろしい生き物ですよね。うむ、だがそれがいい。それでなくてはオタク読書の楽しみなどない。
わがまま放題振り回し型ヒロインと、巻き込まれ主人公が好きな人は楽しめるのではないかと思われます。ああ面白かった。
イラストの人はなにゆえに「美形」と指摘のある狂信者をあんな顔に書いたのだろうか。美形?
『もてない男 ――恋愛論を超えて』
2006年2月3日 読書小谷野敦、ちくま新書。
童貞であること、もてない苦しみ、恋愛弱者の定義、近代の恋愛教の洗脳、などを「もてない男」の視点から論じた本。まじめな手続きで論証しながら作者が愉快に語る内容は、爆笑必至なり。
再読。
この手の本は一般向けに妙にセンセーショナルな売り方をすることがあります。この本も、表紙にある引用文や各回のタイトルを見ていると、巷にあふれる恋愛の本と勘違いしそうになります。が、よく見ると全く違い、比較文学から文化論、セクシュアリティおよびフェミニズムについてと、幅広くアカデミックな内容なのです。
そこら辺を見落として読んだ初回は、売り方から期待されるイメージと一致しない内容に「タイトルと全然違う本だねー、微妙」で済ませてしまったのですが、今回はちゃんと読みました。読めました。
妾の機能、定義に関する考察が面白かったです。そういえば家族法を専攻した「家族」大好きな知り合いの本棚には、家族や夫婦について制度や文化から論じた本はたくさんあったけれど、妾について論じている本は見なかったわー。日本には長い長い妾の歴史があるのだから、研究本を読むのも楽しげです。
「もてない男だから、もてない男について書く、女については女が書いてくれ」と(言う割にはときどきぽろりと迂闊な発言をしていたりしますが)、もてない男の視点に徹して書いているのが良心的に感じられていいですな。
さくっと読める厚さで、とても読みやすい。おすすめ。
ノートパソコンの画面があまりに見づらくて、自分が何を書いているのかいまいち掴めません。すごい文章になっていても見逃してください。
童貞であること、もてない苦しみ、恋愛弱者の定義、近代の恋愛教の洗脳、などを「もてない男」の視点から論じた本。まじめな手続きで論証しながら作者が愉快に語る内容は、爆笑必至なり。
再読。
この手の本は一般向けに妙にセンセーショナルな売り方をすることがあります。この本も、表紙にある引用文や各回のタイトルを見ていると、巷にあふれる恋愛の本と勘違いしそうになります。が、よく見ると全く違い、比較文学から文化論、セクシュアリティおよびフェミニズムについてと、幅広くアカデミックな内容なのです。
そこら辺を見落として読んだ初回は、売り方から期待されるイメージと一致しない内容に「タイトルと全然違う本だねー、微妙」で済ませてしまったのですが、今回はちゃんと読みました。読めました。
妾の機能、定義に関する考察が面白かったです。そういえば家族法を専攻した「家族」大好きな知り合いの本棚には、家族や夫婦について制度や文化から論じた本はたくさんあったけれど、妾について論じている本は見なかったわー。日本には長い長い妾の歴史があるのだから、研究本を読むのも楽しげです。
「もてない男だから、もてない男について書く、女については女が書いてくれ」と(言う割にはときどきぽろりと迂闊な発言をしていたりしますが)、もてない男の視点に徹して書いているのが良心的に感じられていいですな。
さくっと読める厚さで、とても読みやすい。おすすめ。
ノートパソコンの画面があまりに見づらくて、自分が何を書いているのかいまいち掴めません。すごい文章になっていても見逃してください。