夏目漱石、岩波文庫。

「夢十夜」「文鳥」「永日小品」を収録。
岩波文庫はストイックでいいですなあ。基本的に仮名遣いと漢字をあらためただけで、送り仮名や難読語についてはルビで対処するという手法をとっているので、原文の雰囲気がかなり残っています。旧字旧仮名で書かれた文章を現代かな新字に直すと、どうも緊迫感のないぬるっとしたのっぺらぼうのようになってしまう……そんなこだわりを捨てられない人間におすすめ。
そうは言ってもやはり原文の美しさにはかないませんけれど。

「夢十夜」
はじめて読んだときに、第一夜のファンタジックな美しさと、第十夜の馬鹿馬鹿しさにしてやられました。第一夜の美しさは原文で読んだほうがより鮮やかですが、こうして手軽に読み返せる、入手も可能な媒体であることはとてもすばらしいですね。
十夜はそれはもうひどい話で、自分内夏目漱石のパブリックイメージぶち壊しでした。
庄太郎は「崖から飛び降りないと豚に舐められますよ」と美しい女に脅されるが、底が見えないほどの崖に飛び込んでは命が危ういと思い断る。女の言葉どおりに豚がやってくる。豚が嫌いな庄太郎は、持っていたステッキで豚の鼻面を殴る。豚はころりと崖下に落下する。一安心したところにまた豚がやってくる。豚を殴る。ふと気がつくと、向こうから雲霞のごとく豚が走ってくる。地平線が豚で黒い。庄太郎は七日六晩豚を殴るが、ついに力尽きて豚に舐められ、高熱を発して寝込んでしまう。
最初に読んだとき、本当に夏目漱石なのかと疑い、読んでから友人に話したところネタ扱いされて信じてもらえませんでした。中学国語の教科書に載っていたよとフォローしてくれた後輩ありがとう。わたしはその教科書使わなかったのでとても残念よ。
第五夜の「蹄の跡はいまだに岩の上に残っている。鶏の鳴く真似をしたものは天探女である。この蹄痕の岩に刻みつけられている間、天探女は自分の敵である」も簡潔ながら強烈で好きです。
「文鳥」
鈴木三重吉に「文鳥いいよー文鳥いいよー」とすすめられて、では文鳥を飼おう、君そろえてくれたまえ、と文鳥を飼い始めた夏目先生の話。
約束した割に三重吉はなかなか文鳥を買ってきてくれない。もう忘れてしまったという頃に、ようやく籠と文鳥を持ってやってくる。忘れていたといいながら、飼いはじめると文鳥の可愛らしさに目がくらむ先生。その割には世話のいくらかを家人に任せ、忙しさにかまけて死なせてしまう。そして「なんてひどいことを」と三重吉にはがきを送る先生。先生かわいいよ先生。
文鳥が昔知っていた美しい女に似ていると思い出すあたりを、何かの評論本で読んだのだけれど、思っていたのと全然違っていました。どうも永日小品の「心」の引用と混ざりに混ざっていた様子。評論などで他人の「漱石の思い出す女がどうこう」という意見を聞くより、先に自分で読んでそれから「この女はどこから湧いた着想なのか」と考えたほうが楽しい。読む順を誤った。
「永日小品」
「同じ作者の大作には見られない、独特の風味やこくを湛えた文章である。
 短編でも随筆でもない、小品という、閑雅な、ゆとりのある、今やいささか耳遠くなった呼び名が、すでに文章の性質をよくあらわしているかのようである」(解説より)
今日も一日寒かった、と冬の日を描いた「火鉢」を読むと、大作よりも小品の方が好きだなあとしみじみします。カバー折り返しの「漱石の最暗部」という言い方はぴんとこないけれど、先生の身近なできごとや心象を通じて、等身大の先生が感じられるような、そういった空気が小品集には漂っているのです。
ときどきはっとするような美文だし。
「息が切れたから、立ち留まって仰向くと、火の粉がもう頭の上を通る。霜を置く澄み切って深い空の中に、数を尽して飛んで来ては卒然と消えてしまう」
「火事」を見学に行った野次馬な男の話なのに、どうよこの美文。この臨場感。いいないいなと一人にやにやしています。

以下趣味がばれる連想。
牧野修の「夜明け、彼は妄想より来る」(『楽園の知恵 あるいはヒステリーの歴史』)を読んでいるときに、夢十夜の第七夜を思い出していた。
小品の「金」は京極夏彦の古本屋と鬱小説家を連想した。
同じく小品の「紀元節」は似たようなことをやらかした自分の過去を思い出して穴があったら入りたくなった。

ところどころわからない部分があるので、学校の授業でやるような詳細な読解のついたテキストがないものかとネットの海を探索開始。

すんごい進化

2006年1月23日 雑記
ちょっとそこにいる27歳男子がわたしを呼ぶので、面倒ながらも行って「なんなのさー」と尋ねたところ、
「瞳子のドリルがすごい進化を!」
「あーそうねーはいはい」
「だってほら、シールドになってるよ!」
「……シールド?」

28ページ5行目、

「ニッコリ笑うは、盾ロールの少女。」

うわほんとだ、ドリルだのカラドボルグだの言われていた髪が、ついに盾に進化しています!

以下会話略。
即座に書かなかったので、あちこちに出回って旬を逃すどころではない出遅れネタですが一応。
安野モヨコ、講談社文庫。

帯に「美容の道は女道」「最強のキレイとは」と書いてある、ファッション雑誌で連載していた安野モヨコのエッセイ文庫版。

美容の土台は健康よね、としみじみ頷きながら読みました。ファッション‐美容のカテゴリにある雑誌より、美容‐健康のラインを健康に踏み越えそうな雑誌に気をひかれるようになったお年頃の乙女には切実なエピソードたくさんです。
あとは相変わらず、否前回よりも過激に誤解されそうな「可愛いことこそが女子の本懐である」という主張が貫かれております。美しいことがもっとも大切で、仕事ができることより可愛いことのほうが重要。同性ウケよりも異性ウケに決まっている、彼氏あるいは旦那に守ってもらうファッションが正解……。
しかしこの主張の中には、男性に従属する、という成分はほとんど発見されないのでした。「悪いこととしてはいけないの関係」を思い出します。
なんだか別の意味で男が眼中にないような気がする本。

この本が主にターゲットとしている若い女性層のうちどのくらいが「赤線地帯が発生」というたとえを理解できるのか、平成16年という奥付を眺めながら考え込んでしまいましたとさ。
行ったことのない駅まで足を伸ばして、
『美人画報ハイパー』安野モヨコ
を買ってきました。
駅ビル内の本屋さんだったので期待していたのですが、いまひとつな印象。
電気街へ買い物に行く家主にちょこりとついて行き、どうせなのでオタクショップを巡ろうと足を踏み入れて挫折しました。
無理、すっごい無理。特にアニメイトのハードルの高さといたたまれなさが尋常ではないです。即時撤退回れ右。入りにくさではとらのあなに軍配があがりましたが、総合難易度ではぶっちぎりでアニメイトです。
実家にいた頃は駅近くにあったアニメイトに本を探しにちょくちょく足を運んでいたのですが、知らないうちにある意味天国ある意味人外魔境度が爆発的にあがっていたのですね。おそろしや。立地条件や店舗の傾向にもよるのでしょうけどー。
しかしあの商品の並びを見て、オールオアナッシング一度手を出したらすべてをつぎ込むしかないと言う気持ちもよくわかるのです。
『少女セクト』げっとー。いえーい、女の子いっぱい幸せいっぱい。
近所の本屋に置いていない雑誌がずらっと並んでいるのだけは無条件で心底うらやましいです。
あと、近くのバーが、店先に出すメニューが書いてあるちょっとした看板にジオン公国の長男が熱くプロパガンダする絵を貼っていました。店のガラス窓にはでっかい赤ザクが酒瓶持ってたたずんでいました。
「ギャラクシーエンジャル」というしょうもない誤字も発見しました。
脳がしびれて文章が文脈に関係なく前後し放題です。
なんで携帯を忘れていったのだろう。カメラがなくて大変悔しい思いをしました。

喝入れ購入

2006年1月19日 購入日記
憩いと癒しと一喝と憧れを求めて本を買ってきました。だるさのきわみをなんとかしたい。

『夢十夜 他二篇』夏目漱石、岩波文庫。
『草迷宮』泉鏡花、岩波文庫。
『伝奇集』J・L・ボルヘス、鼓直訳、岩波文庫。
『貧しき人びと』ドストエフスキー、木村浩訳、新潮文庫。

岩波文庫を買うのははじめてです。どきどき。
あとコミック新刊『フルーツバスケット』19巻げっとー。
木村裕一作、あべ弘士絵、講談社。

あらしのよるに第7巻。

1〜6までを箱入りセットで買ったあと、特別編だけサイズが揃わないのは嫌だと見送っていたところに、サイズの揃った本編最終巻を発見。『しろい〜』は買ってないけど読む順番はこれでいいのかしらとどきどきしながら購入。

なかったことにしました。

2ちゃんねる風に言うなら、あまりの「厨テンプレ」にドン引き。
あるいはどこのへ(ryですかと小一時間。
あー、なんかほら、いい単語がある、こういう「なかったことにしたい」という気持ちを簡単にいいあらわす単語が。

自分的黒歴史。

……。
もう最近の自分のやる気のなさにどうしたものかと思う気力も根こそぎになるような感想ですね。
古橋秀之、ファミ通文庫。

近所の書店に売っていなかったのでネット通販したら、年明けになってしまいました。出遅れ感山積み。

ドリルが地下から出てきて「ドリドリドリッ!」と笑ったり威嚇したりしてもあんまり感銘を受けない自分に、感性が磨耗したのねーと思ったけれど、
「わが妹エリカの流法はネコミミ! ”野生の生命力”を暗示するッ!!」
で吹き出したので大丈夫だと安心しました。ちなみにここ「流法」に「モード」とルビ振ってあって、「ネコミミ」はゴシック太文字です。
「恋する妹はせつなくて、お兄ちゃんを想う時その肉体は鋼鉄と化す」(「鋼鉄」には「はがね」のルビあり)
など、近年この手の本はサブカル好きにしかわからないネタに特化してますけど、ネタ元がわからないとつまらないし、わかったらわかったで己の駄目人間ぶりを再認識して落ち込みますよね。
という感想で全体をまとめられるだろうかと目論見つつ読み進めていましたが、一番笑ったのは、
「兄者――ッ!!」
でした。198ページからページをめくるたびに呼吸困難になるほど笑いました。くそう、これなら元ネタを解する必要はない!おのれ古橋秀之!繰り返しは三度までというお約束をさりげなく守っているのもいいネ!
つられて喋り方も変わると言うものです。
せっせと『ラヴクラフト全集』を読んでいるおかげで、海冥寺の出番はおかしくてしょーがありません。異界の形容しがたきものの描写がすさまじく「らしい」。スカートの下から鎌といったらペトルーシュカよねー。
民萌書房や『定本ラブ(はあと)クラフト超全集』など、ちりばめられたネタに言及しているとキリがないのでここまでー。なんだかんだいっておそろしく巧いのに、なぜに「もうちょっと売れるといいね」の評価を不動のものにしているのかしらと不思議に思いつつ次の巻へ続く。ああ楽しみ。

『毛利元就』

2006年1月2日 読書
松永義弘、学陽書房人物文庫。

タイトルそのまま、毛利元就の75年の生涯ダイジェスト。文庫一冊でやろうとしたのがそもそもの敗因のような気がします。これで「文庫書き下ろし傑作長編」(背表紙より)って言われても。長編?傑作?
嘘はいかんなあ嘘は。

毛利元就は出てくるのがもう少し遅ければ、という話を家主としていたのですが、この人とにかく早い。織田信長が出てくる頃には地元平定してぶいぶい言わせていた、その領地なんと「中国・九州・四国十三州」。
それにしても南のほうのひとたちは、せっせと京都まであがってきますね。北のほうは、武田がぎりぎり届かなかったくらいかな?伊達は出てきてないし(白頭巾の酒飲み坊主については例にならない気がするのでパス)。関が原のときなんて船仕立てて九州からのぼってくるくらいアクティブですよね。
で、戦国時代からの恨みをえんえんと400年持ち越して、いまだ明治維新だと立ち上がる中国四国九州のひとびと面白い。興味深い。元就が軽く朝廷に献金したら、400年後に尊王派が台頭する原因になったとか、因果と言うやつはどうめぐるかわからないものです。

元就が順調に勢力を増大していく様子が、新年早々に読むには丁度いいおめでたさでしたが、史実並べて間にキャラクター挟んで、史実並べてキャラ挟んで、と、まるで油分と水分が分離しきって層になったドレッシングのようでした。なじんでない。元就の造型もつかみにくく、各エピソードにつながりが見出しにくかったりするし。評価は微妙によろしくない。
『Twelve Y.O.』福井晴敏、講談社
『自由戀愛』岩井志麻子、中公文庫
『マリア様がみてる インライブラリー』今野緒雪、集英社コバルト文庫
『黄金色の祈り』西澤保彦、文芸春秋
『異邦人 fusion』西澤保彦、集英社
『聯愁殺』西澤保彦、原書房
『リドル・ロマンス』西澤保彦、集英社
『神のロジック人間のマジック』西澤保彦、文芸春秋
『笑う怪獣 ミステリ劇場』西澤保彦、新潮社
『鏡の中の鏡―迷宮―』ミヒャエル・エンデ著、丘沢静也訳、岩波書店
『白貌の伝道師』虚淵玄、Nitroplus
『頭のいい人、悪い人の話し方』樋口裕一、PHP新書
『文体練習』レーモン・クノー、朝比奈弘治訳、朝日出版社
『どすこい。』京極夏彦、集英社文庫
『悪霊』(上下巻)ドストエフスキー、江川卓訳、新潮文庫
『不実な美女か貞淑な醜女か』米原万里、新潮文庫
『鉱石倶楽部』長野まゆみ、文春文庫
『気まずい二人』三谷幸喜、角川書店
『三谷幸喜のありふれた生活2 怒涛の厄年』三谷幸喜、朝日出版社
『溶ける薔薇』皆川博子、青谷舎
『スカイ・クロラ』森博嗣、中央公論新社
『鬼哭街 鬼眼麗人』虚淵玄、角川スニーカー
『猫舌男爵』皆川博子、講談社
『鳥少年』皆川博子、徳間書店
『まひるの月を追いかけて』恩田陸、文芸春秋
『薔薇密室』皆川博子、講談社
『黒猫の三角』森博嗣、講談社ノベルス
『人形式モナリザ』森博嗣、講談社ノベルス
『月は幽咽のデバイス』森博嗣、講談社ノベルス
『M.G.H. 楽園の鏡像』三雲岳人、徳間書店
『死の泉』皆川博子、早川書房
『陰陽師 龍笛ノ巻』夢枕獏、文春文庫
『マリア様がみてる 妹オーディション』今野緒雪、集英社コバルト文庫
『ブラックロッド』古橋秀之、メディアワークス電撃文庫
『ブラッドジャケット』古橋秀之、メディアワークス電撃文庫
『ブライトライツ・ホーリーランド』古橋秀之、メディアワークス電撃文庫
『あらしのよるに』作:木村裕一、絵:あべ弘士、講談社
『あるはれたひに』作:木村裕一、絵:あべ弘士、講談社
『くものきれまに』作:木村裕一、絵:あべ弘士、講談社
『きりのなかで』作:木村裕一、絵:あべ弘士、講談社
『語り手の事情』酒見賢一、文春文庫
『どしゃぶりのひに』作:木村裕一、絵:あべ弘士、講談社
『ふぶきのあした』作:木村裕一、絵:あべ弘士、講談社
『ブギーポップ・バウンディング ロスト・メビウス』上遠野浩平、メディアワークス電撃文庫
『夏期休暇』長野まゆみ、河出文庫
『ハローワールド 青い記憶』涼風涼、角川スニーカー文庫
『ハローワールド BLAZE UP』涼風涼、角川スニーカー文庫
『水の都の王女』(上下巻)J・グレゴリイ・キイズ、岩原明子訳、ハヤカワ文庫
『聖戦ヴァンデ』(上下巻)藤本ひとみ、角川文庫
『今夜、すべてのバーで』中島らも、講談社文庫
『発情装置』上野千鶴子、筑摩書房
『東京のオカヤマ人』岩井志麻子、講談社文庫
『楽園 ラック・ヴィエン』岩井志麻子、角川ホラー文庫
『邪悪な花鳥風月』岩井志麻子、集英社文庫
『人びとのかたち』塩野七生、新潮文庫
『チャイ・コイ』岩井志麻子、中公文庫
『私の國語教室』福田恒存、文春文庫
『しゃばけ』畠中恵、新潮文庫
『「いき」の構造』九鬼周造著、全注釈藤田正勝、講談社学術文庫
『薔薇の名前』(上下巻)ウンベルト・エーコ著、河島英昭訳、東京創元社
『魔女の1ダース』米原万里著、新潮文庫
『スローグッドバイ』石田衣良著、集英社文庫
『秘密の花園』バーネット著、龍口直太郎訳、新潮文庫
『関ヶ原』(上中下巻)司馬遼太郎、新潮文庫
『図書室の海』恩田陸、新潮文庫
『長めのいい部屋』フジモトマサル、中公文庫
『項羽と劉邦』(上中下巻)司馬遼太郎、新潮文庫
『絵のない絵本』アンデルセン、矢崎源九郎訳、新潮文庫
『蝿の王』ウィリアム・ゴールディング、平井正穂訳、新潮文庫
『対談集 妖怪大談義』京極夏彦、角川書店
『マリア様がみてる 薔薇のミルフィーユ』今野緒雪、集英社コバルト文庫
『美人画報』安野モヨコ、講談社文庫
『十五少年漂流記』ヴェルヌ、波多野完治訳、新潮文庫
『ハムレット』シェイクスピア、福田恒存訳、新潮文庫
『黒焦げ美人』岩井志麻子、文春文庫
『双生児は囁く』横溝正史、角川文庫
『ラヴクラフト全集1』H・P・ラヴクラフト、大西尹明訳、創元推理文庫
『ラヴクラフト全集2』H・P・ラヴクラフト、宇野利泰訳、創元推理文庫
『天然理科少年』長野まゆみ、文春文庫
『ビートのディシプリンSIDE4』上遠野浩平、電撃文庫
『京極噺六儀集』京極夏彦、ぴあ
『家族狩り』天童荒太、新潮ミステリー倶楽部
『宝はマのつく土の中!』喬林知、角川ビーンズ文庫
『花龍神話』真堂樹、コバルト文庫
『悪魔の降誕祭』横溝正史、角川文庫
『合意情死』岩井志麻子、角川文庫
『LAST』石田衣良、講談社文庫
『これが現象学だ』谷徹、講談社現代新書
『池袋ウェストゲートパーク4 電子の星』石田衣良、文春文庫
『ラヴクラフト全集3〜5』H・P・ラヴクラフト、大瀧啓裕訳、創元推理文庫
『民明書房大全』宮下あきら、集英社ジャンプコミックスデラックス
『幕末新選組』池波正太郎、文春文庫
『ぎりぎり合格への論文マニュアル』山内志朗、平凡社新書
『エンジェルバレット』ライアーソフト、相島巻、角川スニーカー
『キノの旅9』時雨沢恵一、電撃文庫
『<子ども>のための哲学』永井均、講談社現代新書
『ある日、爆弾がおちてきて』古橋秀之、電撃文庫
『現代倫理学入門』加藤尚武、講談社学術文庫
『黒龍の柩』(上下巻)北方謙三、幻冬舎文庫
『天球儀文庫』長野まゆみ、河出文庫
『星の王子さま』サンテグジュペリ、池澤夏樹訳、集英社文庫
『賭博者』ドストエフスキー、原卓也訳、新潮文庫
『ラピスラズリ』山尾悠子、国書刊行会
『フーコーの振り子』(上巻)ウンベルト・エーコ、藤村昌昭訳、文春文庫
『新リア王』(上巻)高村薫、新潮社
『悪魔のわたしと天使の自分』金盛浦子、日本文芸社
『アダルト・チルドレンと家族』斎藤学、学陽書房
『蜘蛛の糸・杜子春』芥川龍之介、新潮文庫
『マリア様がみてる 未来の白地図』今野緒雪、集英社コバルト文庫
『花片戯曲』真堂樹、集英社コバルト文庫

漫画本は省きました。おおむね読んだ順です。こうやって並べてみると実に恥ずかしい。
『振り子』と『新リア』の下巻は来年に持ち越し。
今年は「海外作品にも手をつける」「金田一コンプ」「ラヴクラフト全集」という目標を一応達成できました。
来年は「SFも行ってみよう」「ヤプー」あたりを目標としたいと思います。
詩?……もっと先の話になりそうです。
『マリア様が見てる 未来の白地図』
今野緒雪、集英社コバルト文庫。
ちゃんと話が進んでいてすばらしいなあ。この調子ですすめてくれればいいのになあ。
ドリルが「先に私なんかをお家に上げるなんてどうかしてます」と言い出したときのドリルの内心を想像してもだえました。「なに考えているんだろうこの人は!」と罵倒するドリル一人称希望。
相変わらず田中有馬はクールで素敵ィー。なんだろう、この素直で直球であさって向いたクールさは。今までにないタイプで分類に困る。

『花片戯曲』
真堂樹、集英社コバルト文庫。
買いのがしていた番外編を回収。シリーズが長くなると、作者みずから大切な何かを壊し始めるのってどうしてなんでしょう?
ロミオとジュリエット・ハッピーエンド版かしら、と考えてから、はたと気づいた。このパターン一度本編で見てるぞ。あれは果実の特殊ペイントだったけど。

……なんだろう今日の日記。

惰弱読書日記

2005年12月27日 未分類
『LOVELESS』限定版6巻
『マリア様がみてる 未来の白地図』
『花片戯曲』
買ってきました。ほんとうは古橋新刊を買いに行ったはずなのに。
芥川龍之介、新潮文庫。

本棚導入の際に発掘されたので再読。
それはそれは活字に飢えていた子どもの頃、父親の本棚に入っていたのを無断で拝借したのが出会いでした。で、小学生だから漢字は読めない、むつかしい物語になると意味がわからない、と苦労しつつ中学生くらいまでずっと読んでいました。今読み返すと、なんて耽美なのかとときめき打ち震えますな。これを気に入っていた子どもなら、そりゃ耽美主義にも育つと言うものです。

「蜘蛛の糸」
「犬と笛」
「蜜柑」
「魔術」
「杜子春」
「アグニの神」
「トロッコ」
「仙人」
「猿蟹合戦」
「白」
解説二本と年譜つき。

子どもの頃好きだったポイント。
・蓮池の描写
・髪長彦の与えられた大将の装い
・蜜柑の色
・喋る札の王
・杜子春の贅沢
・電燈の明かりがさした村
・猿蟹合戦の容赦のない結末と繰り返し
こう書き出してみると、我ながら恐ろしい気持ちになります。どんな趣味だ小学生。そしてその小学生とひとつも変わらない好みの現在。
特に好きだったのは「魔術」と「アグニの神」。時雨の険しい坂を上り下りして、ようやくたどり着く竹薮に囲まれた小さな洋館。上海の敷石に染みるような不思議な香の匂い。
うつくしい。
違う世界からの空気が漂ってくるようです。一行目から、目の前に違う世界が広がって、これからそこに踏み入るような気分にさせてくれる書き手は貴重です。
しかしこう読み返すと、軽快でいながら無駄も隙もない完璧な文章にため息が出ます。「魔術」の場面転換の手際にはもはや言葉もなし。
「白」はわかりやすくて繰り返し読んだものの、道徳的な面が前面に押し出されていたのであまり好きになれなかった昔と、感想がほとんど同じでした。成長がない。
「猿蟹合戦」は太宰のかちかち山と合わせて読むとよりいっそう楽しめると思います。ああひどい。
H・P・ラヴクラフト、大瀧啓裕訳、創元推理文庫。

「神殿」
「ナイアルラトホテップ」
「魔犬」
「魔宴」
「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」
「レッド・フックの恐怖」
「魔女の家の夢」
「ダニッチの怪」
以上8編に加えて、資料『ネクロノミコン』の歴史を収録。

いえっさー!隊長、ついに「ダンウィッチ」との再会であります!この訳では「ダニッチ」となっているけど気にしない。原文では「Dunwich」ですし。再会を喜びながら以下感想。

「神殿」
海底の神殿に一人たどり着いてしまったUボート艦長の手記が、瓶に詰められた状態でユカタン半島沿岸で発見される。
一人称の語り手が、遭遇した恐怖と怪異とを手記にして残すいつものあれ。イルカが素敵に不気味なほかは、この展開に慣れてしまったので特に感想なし。
「ナイアルラトホテップ」
作者ラヴクラフトが夢で見たできごとをほぼそのまま綴ったもの。夢ならではの不条理さとそれでいて辻褄の合った世界の美しさがとてもよい。夢なので中身についてどうこういうのは野暮っぽい。
「魔犬」
奇矯な趣味が極まって、ついには墓場荒らしまで始めた二人。墓地に納められた魔除けを持ち帰ったことから、得体の知れない恐怖におびやかされることになる。
ストーリーはありがちなんですけど、個人的にこの地味さが好み。アブドゥル・アルハザードもそうだけれど、見えない何者かに物理的に食い殺されるというエピソードに心ひかれる。
「魔宴」
地下に広大な空間があって、そこにはどろりとぬめる黒い川が流れ、得体の知れない炎が燃える。この世のものとは思えぬ生き物がいるそこで、邪教の崇拝者たちが儀式を繰り広げるというのはお約束らしいです。「レッドフック」も大体同じだったので、なんだかなーと思いました。冬の夜に丘を越えたところで一望できる雪化粧の古い街並みや、古風な一族の家とそこで出迎える老人など、前半の雰囲気は最高なんだけれど、惜しい。
「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」
ウェストが喋るたびに、頭が緑で白衣着てエレキギターをかき鳴らすやかましい科学者が思い出されてしまい、読むのに苦労しました。何度も「目はブルーで金髪、小柄で細いからだつき、いたって穏やか」という描写が繰り返されなかったら、最後まであの人で脳内上演がおこなわれていたこと間違いなし。
章ごとの冒頭であらすじが繰り返されるのは、発表が雑誌の連載で行われたからだということですが、これは連載じゃなくて一度に一本書き下ろして欲しかった。面白いけどそこがとっても惜しい。
「レッド・フックの恐怖」
省略。
「魔女の家の夢」
もう少しタイトにまとまっていれば……とは思いますが、傾斜した部屋の壁や、夢にあらわれる老婆と鼠と黒い男、現実とリンクする夢、屋根裏の白骨と心ときめく素敵ディテールが詰まっています。
夜具の下に何かいると思ったらすぐにはがそうよ友人。
「ダニッチの怪」
犬に嫌われるウィルバーが図書館侵入で犬にかみ殺され、死体は毛深いどころか触手が生えてたよー!
という前半までは記憶にあるのですが、何故か教授たちが見えない怪物を退治する後半がまったく記憶にありません。おぼろげな記憶によると、どうも後半は別の巻に収録され、ひとつの物語が2冊にまたがっていたようです。後半を読まなかった理由は、とても怖いと脅されたか、見つけられなかったかのいずれかのはず。点描でラヴィニアの顔がアップになる挿絵がついていたのですが、一体何で読んだのかまだ不明。
十数年を経ての再会に満足して終わり。

感想がやる気のなさに溢れているのは、ここにきて更なる訳のまずさに辟易したからです。ほとんど逐語訳じゃないのかと疑いたくなる日本語に、古式床しい大仰な単語をセンスなく散りばめられたら、よほど気合の入った読書家でもない限りげんなりするのは当たり前だと思うのですがー……。残り2冊が想像しただけでもだるい。

買ってきた。

2005年12月18日 未分類
『ラヴクラフト全集5〜7』H・P・ラヴクラフト、大瀧啓裕訳。

「ダンウィッチの怪」とは、十数年を経ての再会ですよー。楽しみ楽しみ。
斎藤学、学陽書房。

発掘したの読む。「心の中の子どもを癒す」
この手の本に必ずサブタイトルがついている理由が知りたい。
さっきの『悪魔の〜』よりはずっと真面目でかたい内容の本。心の問題について論じている文章で「効率的に癒す」という表現は逆に新鮮でよかった。変にべたべたした語りのものよりずっといい。
共依存怖いよ共依存。最近冗談ではすまない怖さを感じます。
といってもやっぱり今の自分とはあまり関係のない話ばかりで、わたしが求める本は今回の発掘では発見されませんでした。
金盛浦子、日本文芸社。

サブタイトルが「幸せになる自分探しのナビゲーター」。本棚を導入して片づけしていたら出てきました。内容はアダルトチルドレンが流行ったけどあれは結構大事なキーワードなのよ+サブタイトル通り。わたしにとってはさんざん既出の内容で、感想は一言で「だからどうしたそれで解決したら苦労はしない現実の悩みはエンドレスリピート」終わり。
中島らも『今夜、すべてのバーで』の主人公が、アル中の文献を読み漁った「アル中について博識な」アル中で、文献を漁っておそろしい体験談をいくつも読み、男性として文化的耐性をつけてそれでもなおアル中になった、と語っていたことを思い出しました。
心理学・病気の文献を読み漁り、知識を溜め込み、医者がうっかり洩らした専門用語に普通に相槌を打ち、自分を分析しつくして、それでもやっぱりメンヘラー。
エンドレスリピートでまわりつくすと何も言うことがなくなるので、沈黙が増えました。
平野耕太の『進め!!聖学電脳研究部』を買いました。
ネタが濃いのはわかるんですが、濃すぎてわけわかりません。
相変わらずとち狂っていてサイコー(信者)。
『BLEACH』の新刊をコンビニでゲットー。もう20巻なのか。
ルキアかわいいよルキア。
あと狛村も。
崩玉が萌玉に見えた上に、トラペゾヘドロンかと思った。
高村薫、新潮社。

出版社 / 著者からの内容紹介
保守王国の崩壊を予見した壮大な政治小説、3年の歳月をかけてここに誕生!
父と子。その間に立ちはだかる壁はかくも高く険しいものなのか――。近代日本の「終わりの始まり」が露見した永田町と、周回遅れで核がらみの地域振興に手を出した青森。政治一家・福澤王国の内部で起こった造反劇は、雪降りしきる最果ての庵で、父から息子へと静かに、しかし決然と語り出される。『晴子情歌』に続く大作長編小説。

上巻読了しました。今のところ、代議士の父親と禅家の息子が、雪の降り積もる北の寺でひたすら向かい合って昔語りをするだけの話。『晴子情歌』のときも悩みましたが、こんなむやみな本、いったいどう感想を書いたらいいのか見当もつきません。なにしろわたしは現代と政治経済と生きている人間の名前と事実の羅列にまったくロマンを感じられないたちで、ひたすらにそういったものを回避した結果として典型的な「政治に無関心な若者」になってしまった人間です。父親の代議士としての語りには、まるで政治家から政治家の人生を丸々口移しで聞いてきたようなリアルを感じても、それ以前にわたしは政治家のリアルなど想像もつかないのでした。息子の出家としての話も同じです。しょうがないのでひたすら登場人物たちの、ぶあつさを楽しみました(『晴子情歌』は結局、晴子さんの語る少女期からの人生のいきいきとした姿だけを楽しんだので、今回も同じ読みかたをしている進歩のなさ)。
小和田和尚を看取る上巻ラスト付近から加速してきました。いつものようにジェットコースターな内容の下巻が待っていると思うととても楽しみです。

家にある『小説吉田学校』や『大宰相』は読んだほうがいいのかしらん。

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